待望の新作は、新解釈カバー中心の21世紀の歌謡曲!
童謡歌手・安田章子から歌謡曲歌手・由紀さおりになって、40年。近年は女優としての評価がことさら高まっていますし、音楽活動の方も相変わらず安田シスターズが目立ってしまっていますが、ワタシは歌謡曲を歌う由紀さんが大好きなので、ちょっと残念な思いでいました。
ソロ名義でも時たまシングルが出ていましたが、いずれも企画盤ばかりでしたし。由紀さんの黄金時代を知る東芝が撤退しEMIミュージック・ジャパンとなったた今、由紀さんのソロアルバムやBOXは難しいのかな、などと半ば諦めていたのですね。
それがなんとこのたび、今に生きるオトナのための新しい歌謡曲をめざしたニューアルバム「 いきる 」のリリースが決定したとのこと! コレは是が非でも応援しなくっちゃ!という気分になっておりますので、旧譜ではございませんが早速紹介させてただくことにしました。
由紀さんの場合、ベスト盤は毎年のように出ていますし、昨秋にはEMI名盤プレミアム・シリーズの1枚として「 夜明けのスキャット(紙ジャケット仕様) 」も充実のボートラ付きで紙ジャケ復刻されましたが、ソロ新録アルバムは、NHKの朝ドラ出演の流れで出た「 ファイト 由紀さおり~絹子の愛唱歌~ 」以来、なんと3年半ぶり。しかも、オリジナルとしては25年ぶりぐらいのニューアルバムになるんじゃないでしょうか?
そんなファン待望、というか、中には待ちすぎて旅立たれた方も結構いらっしゃるのではないかと思いますが、待った甲斐のある力作に仕上がっている様子です。
新作のテーマは、ズバリ“21世紀の歌謡曲”。カバーポップスの時代を経て洋楽と融合しながら形作られた由紀さんの時代の昭和歌謡の原点に立ち返り、メロディーをスタンダードやクラシック、洋楽ポップスから厳選し、斬新な詞をあてはめて制作。それが由紀さんによる、懐かしくて新しい21世紀の歌謡曲なのだそうです。
作詞には、かの井上光晴のご令嬢にして直木賞作家の井上荒野さんや、映画化もされた「人のセックスを笑うな」でおなじみ、芥川賞候補の常連・山崎ナオコーラ、脚本家や放送作家など多方面で活躍なさっている早瀬詠一郎さんらを起用。いずれも鬼才や奇才と呼ばれる方々ですので、興味津々ですよね。
ということですから、カバー曲といっても、近年のブームとは趣を異にする新解釈のものばかりと言えそう。さらには、異臭を放つ個性的な楽曲で知られる中村中の書き下ろしなどオリジナル作品も収録されているとのこと。
「しあわせ」「いそしぎ」「ビールの海」「あきらめるのが好き」「ひみつの恋」「かくれんぼ」「回転木馬」「夜の果てまで」「真綿のように」といった収録予定ナンバーのタイトルだけを見ても、いかにも現代的で、アクの強い個性的な世界になりそうですが、そこは希代のボーカリスト、いや歌謡曲歌手・由紀さおりのこと。これまで同様、下世話なナンバーもサラリと上質で唯一無二の歌謡曲にしてしまうことでしょう。
否が応でも期待が高まるニューアルバム。35周年が3種のベストだったので(「 35周年記念スペシャルミレニアムコレクション 」は必聴ですぞ!)、40周年こそは大がかりなBOXをと期待してる方も多数いらっしゃるでしょうが、彼女はあくまでも希有な現役。ですから、まずはこの新作を買うことから始めませんか。だって、それこそが旧譜復刻につながる大きな足がかりになるかもしれませんから。
(2009.1.22)