絹の道から欧州へ、環太平洋アジアン夕子の3部作完結編!
先月めでたく復刻、その途端オークションに出品され高騰したという河合夕子のオーダーメイドファクトリー商品「 フジヤマ・パラダイス 」。
ウチでも昨年末に紹介しましたが、結構知らなかった人が多かったらしく(皆さん、お友だちにも教えてあげてくださいネ)驚異的な速さでアンコールプレスが受付開始されるなど、再評価の高まる夕子ちゃん。
トーゼンの流れで、サードアルバムにして最後のソロアルバム「 不眠症候群 」が候補に挙がりました。
1983年6月22日に出たこのアルバム、ワタシにとっては太田裕美の復帰後初のシングル「ロンリィ・ピーポーII」と同日発売だったことが大きい。学校帰りに一緒に買ったことがとっても印象に残っています。なんだか余談のようですが、ワタシにとってはコレが深い意味を持ってたりして。
と言うのも、このアルバムにちょっと愕然としてしまったからなのです。
夕子ちゃんの新作は、きっと先行シングル「赤色(レッズ)エアロビクス」みたいな、従来の路線を踏襲したエキゾチックでキッチュなキンラメポップス。そう思っていたのに、針を落としたらなんだかデカダンの香り漂う渋い仕上がり。
この印象は、きつい思い込みに加え、ジャケットが大中や文化屋の雑貨みたいなチープなチャイニーズ系だったことと、太田さんのシングルが予想に反し突き抜けてポップだったことが相乗作用したと思うのですが…。あと、その日(正確に言えば入荷日の6月21日)はどよーんとした曇天だったのも大きく関係していたのかもしれない。
もちろん、特有のエキゾチックなムードは健在なんですが、その舞台はこれまでのアジア環太平洋ワールドから中近東、ヨーロッパへと移動。哀愁ヨーロピアン、ブリティッシュロック系のミディアムバラードがメインになってしまっていたのです。なんだか、それまでの夕子ちゃんらしさが失われたようで、ちょっと冷や汗が出たことをハッキリと覚えています。
ライブでの「羊が一匹…」なんていうタイトル曲の印象も含め、ちょっとヤバイかな、と思いましたね。結局その予感は的中してしまい、気がつけば夕子ちゃんはフェイドアウト、ホリプロには残ったもののタレントなのか、作曲家なのか、よくわかんなくなり、やがて裏方さんに回っていくのです…。
こう書くと、このアルバムが良くないような感じですが、いいえ、そんなことはありません。シングル「摩天楼サーカス/スノー・ビーチ」をはじめ、唯一明るさ全開、オールライトな「ペパーミント・デイズ」、倒錯シルクロード的な「千年カスバ」や「ペルシャン・ルージュ」など、1曲1曲の完成度はヒジョーに高く、メロディアス。
当初は戸惑っていたワタシも、聴くうちにトリコとなっていました。バラードも得意としていた夕子ちゃんの本領発揮、「避暑地の雨」「去年の夏、エーゲで」など胸が苦しくなるようなヨーロピアンムードも秀逸です。また、25年後の地球はホントに不眠シンドロームになっているようで、そのへんのメッセージを深読みするのも一興です。
夕子ちゃんがEPICに残した3枚は、ファースト「リトル・トウキョウ」が陽、セカンドが折衷、そしてこのサードが陰、という3部作としてとらえることも可能だと思います。
そういう意味でも、初CD化となるこのアルバムはぜひとも復刻させたいもの。しかもオーダーメイドならではのボーナストラックとして、小林克也&マーシーのおしゃべりが入ったカセット企画「オールナイトHong Kong」からダイジェストが収録されるとか!
もう是が非でも聴きたいですよね。今回も皆さんのご協力、どうぞよろしくお願いいたします!
(2008.4.16)