うたの効果で心は無重力、いざ宇宙の彼方へ!
今はどうかは知りませんが、70年代前半、男の子のいる家庭には必ずあった気がする天体望遠鏡。例にもれずわが家にもありましたが、ワタシのモノではなかったし、基本的に触らせてもらえなかったので、月のクレーターをのぞいたことぐらいしかなかったりして。
それでもロマンを抱いていたことはあって、日テレ「木曜スペシャル」のトリコだった子どもらしくベントラーベントラーと呪文を唱えUFOを呼んでみたり、しあわせの一番星を見つけっこをしたり、流れ星を探したり、いつかミルキーウェイをわたるギャラクシーエクスプレスに乗ることを夢みたものでした。
そんな思い出のある天体望遠鏡ですが、2009年はガリレオ・ガリレイが初めて空に向けてから400年という“世界天文年”なのだとか。で、これを背景に、宇宙をキーワードにしたコンピ盤「 歌謡曲宇宙一周 」が企画されております。なるほど、世界各地をテーマにした歌ばかりでとっても素晴らしかった「 歌謡曲世界一周 」の姉妹編にあたりますね。
宇宙は人間にとって永遠のテーマですし、歌にもしやすい気がしますので、“宇宙”“天体”“地球”“銀河系”などのキーワードをちりばめた楽曲はめちゃくちゃ多いと思いますが、今回ピックアップされたのは60年代から90年代までの歌謡曲。一世を風靡した大ヒットから知る人ぞ知る隠れ名曲まで、GS、アイドル、フォーク・ニューミュージック、シティポップスとジャンルを超えてコンパイルされています。
ゴダイゴが歌った映画版主題歌「銀河鉄道999」をオープニングに、山口百恵の人気作「乙女座 宮」、ピンク・レディーのレコ大受賞曲「UFO」、梓みちよも歌ったキャンディーズの「銀河系まで飛んで行け!」など、幕開けは78〜9年の王道系。同じく79年の八神純子の北極星「ポーラースター」も併せ、あらためてアーティストや楽曲の力強い個性に釘付けです。
そして80年は、これまたレコ大受賞曲の光GENJI「パラダイス銀河」、もともとはアルバムの1曲だった中山美穂の角松ソング「You're My Only Shinin' Star」、宮川泰先生が書いた岩崎宏美の宇宙戦艦ヤマト「銀河伝説」、沢口靖子の目尻にほうき星を描きたくなるハイ・ファイ・セット「星化粧ハレー」、月は何でも知っているレベッカ「MOON 」などなど、きらめく星くずの様相。
これに、ザ・タイガース「銀河のロマンス」、GAROの「地球はメリーゴーランド」、赤い鳥「美しい星」というソフトロックの名曲がはさまれると、何だか時空を超えたような感覚も。
個人的にイチ押ししたいのが、名曲アルバムでもご紹介しました須藤薫の「THE BLACKHOLE」。ユーミンがはかなくも美しい恋愛を宇宙観で描いた詞も、永遠のポップス少年・杉サマのメロディーも、マンタさんの映画を見るようにドラマチックな「心のまま」のアレンジも、そして薫ちゃんのボーカルも、とにかく素晴らしい。シングルが全く売れなかったというのが不思議な、心ときめく極上ポップスですので、ぜひこの機会に聴いていただければと思います。
こういう流れで聴けば、オーラスに収録された松田聖子「瑠璃色の地球」もさらに感動的。ホント、うたって、一瞬のうちにどこでも行けるスイッチになりますよね。そんなことをあらためて実感できる1枚です。
(2008.12.3)