ヒロリン復刻、とどめは益田時代の3部作!
昨年の紙ジャケット・コレクション、ライブボックスに続き、ヒロリン復刻も仕上げに突入。
“益田宏美”時代の企画アルバム3部作がセットで登場、「 「誕生」「家族」「きょうだい」BOX 」としてリリースされることになりました。
当初は中身とのギャップにちょっと笑っちゃう仮タイトル(ファミリー・サンキューBOX)が付いていましたが、このBOXに入る3枚は、クラシカルバージョンが話題を呼んだ「聖母たちのララバイ」や、後に戦争アニメ映画の主題歌となった「夜空で星が生まれるように」が入った第1作「誕生〜Birth〜」、第1子が生まれて制作された育児日記のような第2弾「家族〜Family〜」、テレビアニメ主題歌の先行シングル「愛を+ワン/この愛を未来へ」を含む完結編「きょうだい」。
胎教&子育てアルバムとしておなじみの3部作ですが、発表はヒロリンが88年の結婚以降、2人の男の子を生み育ててらした頃。引退も休業もしていないけれど、名前を変え、家庭を優先させていたあの時代です。
よって完全な企画盤でして、3作ともレミゼでも縁のあった岩谷時子先生が詩(構成も)を手がけ、天才・ピコこと樋口康雄さんが音楽を担当。クラシックの名曲をモチーフにしたものも多数あり、従来の作品とは一線を画した上質で清楚な世界が繰り広げられております。
ピコつながりで、一部ヤング101の面々も参加してる曲もありますので、ステージ101ファンの皆さんにもオススメですね。
まず耳が感激するのは、ヒロリンの声。ワタシ、お腹に赤ちゃんを宿した女性の歌声は、例えどんな声を持つ人でも、まろやかで慈愛に満ちた母性がにじみ出るものだと思っておりますが(ウソだと思う人は、矢野顕子「ごはんができたよ」、松田聖子「SUPREME」などを聴いてチョーダイ)、ヒロリンの声はことさら気高く美しく響きます。もちろん彼女はもともと清々しく美しい声の持ち主ですけど、80年代半ばのコッテリと自信に満ちた歌声とは比較にならないほど素敵です。
むろんテーマは、パパとママの関係、生まれてきた元気なお子さんや、愛という名の坊ちゃんなど、お家のことをそれぞれの目線で綴った世界がほとんど。
妄想癖のワタシは当時、婦人画報などで拝見するご家族の肖像が素敵だったせいか、ヒロリンご一家の日常と重ねた聴き方をしてしまい、歌の本質に迫ることはありませんでした。一世を風靡したおおた慶文さんのジャケットも個人的に好みではなかったせいもあったりして…。CDを買ったのも、ずっと買い続けているヒロリンのアルバムだから、という部分が強かった。
そういうワケで、子育てアルバムという意味においては正直ピンと来なかったのですが、それだけで終わらないのがこの3部作の凄さ。それはむろん、人生とは何かを知る岩谷先生のお力によるもの。ピコとともに作った、孤高な名曲が散りばめられているのです。
一般にはベストや30周年BOXにも収録された「真珠貝の歌」が人気のようですが、ワタシは「ラブレター」をその最高峰に挙げたい。幸せなヒロリンが歌う、哀しい思慕に満ちたシャンソン。その根底にあるのは、自らの命よりも大切なものが生まれ、無償の愛と慈しみを知った者だから表現できる、狂おしいまでの喪失感です。
この録音では、無意識だったと思われますが、それが十二分に感じられるのは、さすがうたの神様に愛され続けるヒロリンです。今のヒロリンが歌ったら、きっともっと凄みと深みが増した絶唱になることでしょう。
昨年暮れのライブBOXといい、ユーザーのこともきちんと考えてくれたボーナス期の復刻には素敵な配慮が感じられますが、もっと素敵なのはやこのリーズナブルなサンキュー(産休?)プライス。一部の人からは復刻ものは紙ジャケで統一を、なんていう声も聞かれそうですが、今回はもともとがLPリリースのない作品だし、オリジナル復刻では名義の問題もありそうですし、何より1枚当たり1330円というお安さですからね。オリジナルのCDを持っているワタシだって、この安さだと即買い、という感じです。
なお余談ですが、「あおぞら」から「Me too」までの一連の紙ジャケも、PLや淳子らと同じくアンコールプレスが決まった模様。
近年の業界の傾向ではCDはまるで売り切り商品になったかのようで、よほどのことがない限り追加プレスされないのが当たり前、逆に初回限定と銘打っているのが親切に思えるご時世。ですから、限定盤が再プレスされ(ヒロリンは幾度となくという感じがスゴい)、カタログに生き残り続けるのはホントに喜ばしいことですよね。
しかも今回の大規模アンコールプレスによって、ビクターオリジナル名盤紙ジャケットコレクション・VINTAGEシリーズとしてのちゃんとした展開も期待できそう。
皆さん、今後も積極的な復刻を願うなら、ここが応援のしどころですぞ! ヒロリンのみならず、めぐみタンや淳子、PL、MAKOちゃん、キョンキョン、飯島まりん、アンやちあきさんたち、ビクター所属だったアーティストのファンの方々、どうぞよろしくお願いしますネ!
(2008.4.27)