あのカバーの元歌を、聴きたくなったらこのコンピ!
どこまで続くか、カバーブーム。CD不況のご時世にあってトリプルミリオン達成という徳永さんのVOCALISTシリーズ(全部まとめたBOXがユニバーサルらしく3タイプ発売されていますが、ワタシはDVD 付きのBタイプ「 HIDEAKI TOKUNAGA VOCALIST BOX(B)(限定盤)(DVD付) 」をオススメ)や、第4弾の制作が進んでいる岩崎ヒロリンのDear Friendsシリーズなど実力派を筆頭に、その成功を深〜く意識し再浮上を狙うアーティストたちから、今さら何でのブーム便乗系までこぞってリリースを続けています。
玉石混淆あったとしても、時を超える名曲たちをそれぞれの解釈で焼き直すカバーやトリビュート盤は、それだけで興味をそそられますし、何より聴きやすいものが多くて気が付けばCDをかけている、なんてことがよくあります。大好きなアルバムもたくさんありますしね。ただ、日の目を見なかった隠れた名曲ならともかく、基本的にはどれも世相とリンクした流行歌ですから、そういう意味ではオリジナルを超えられるワケはないなとも思ったりするのであります。
そういうワタシですから、カバーアルバムをBGMとして流している時なんか、無性にオリジナル曲が聴きたくなって、途中でストップボタンを押して、ゴソゴソとオリジナルアーティストのCDに入れ替えることもしばしば。カバーなら聞き流すことができるけど、オリジナルはいろんなことを思い出してついつい聴き入っちゃうんですよね。なので、部屋のどっかにあるはずのオリジナル盤が全然見つからない時は、意固地になって探しまくる…なんてこともあるんです。
と、またまた前置きが長くなりましたが、そういう時(ワタシの場合だけかと思うけど)にも便利なコンピ盤が登場しました。それが「 歌姫〜オリジナル女性ヴォーカリスト〜 」。
最近のカバーアルバムでよく取り上げられる歌のオリジナル、それも女性アーティストによる18曲を集めたものとなっています。70年代から80年代を中心に、今も歌い継がれるヒット曲、誰もが知ってる名曲がテンコ盛り。個人的な思い出が詰まっているのはプリプリの「M」なんですが、それはおいといて収録予定曲を紹介しましょう。
大きく分けてシンガーソングライター勢の自作自演系と、歌謡曲のニューミュージックの融合系と言うことができますが、コレが何とも70年代後半から80年代の感じなんですよね。職業作家さん離れという悲しい側面もあるけど。前者は小林明子の「恋におちて-Fall in love-」、渡辺真知子「迷い道」、イルカ「なごり雪」、久保田早紀「異邦人」、みゆきの「わかれうた」、後者は百恵ちゃんの「秋桜」「いい日旅立ち」、明菜の「セカンド・ラブ」、杏里「オリビアを聴きながら」、薬師丸ひろ子「元気を出して」なんですが、やはり特筆すべきはハイ・ファイ・セットの「卒業写真」、石川ひっちゃんの「まちぶせ」、聖子ちゃんの「瞳はダイアモンド」という3曲も入ったユーミン作品です。
70年代には自意識過剰な少女性によって中産階級の向上心を大いに刺激し、80年代にはブランド化しニッポンの物質的な繁栄の象徴であったユーミンソングは、ある意味時代を先取りしつつ、拮抗し合い、ともに変貌を遂げていったような気がします。マーケティングの妙というとらえ方もされるユーミンですが、ワタシはそういう部分と、人間の本質ともいうべき普遍性とのバランスを保っていたことがユーミンの才能の証のように思っています。
で、この中では「まちぶせ」だけがオリジナルアーティスト(三木聖子)ではないんですが、カバーとはいえ、「まちぶせ」こそが81年に巻き起こったリバイバルブームに先鞭を付け、レトロ&廃盤ブームを牽引した立役者であり、日本における日本の歌のカバーという概念やジャンルを形作ったと言っても過言ではありませんから、今回のコンセプトが凝縮されたチョイスではないかと納得しています。
というこのコンピ、誰もが知ってるナンバーばかりだし、R35なんかを買っちゃう一般の人向けで、コレを読んでくださってる方はスルーしがちだとは思いますが、自分じゃこういう寄せ集めは決してつくらないでしょうから、意外に新鮮かも。かくいうワタシでさえ、曲順をまねて聴いたところ、懐かしさにしみじみしたり、心になじんだメロディーに心地よさを覚えたり、過去からの手紙を読むように照れつつも聴き入ったり、まったく飽きることなくじっくり楽しめましたので。
(2008.7.18)