時代を超える切ない名曲たち、歌姫シリーズ第2弾!
いい曲はいつ聴いても、何度聴いても胸を打ちます。三分劇のひとり芝居のごとく、情景が浮かび、ストーリーが見えてくるならなおさら。そんな女性ヴォーカリストたちの時代を超えた名曲を集めた“歌姫”シリーズ第2弾「 歌姫〜センチメンタル女性ヴォーカリスト〜 」の発売が決定しました。
これは昨今のカバーブームでよく取り上げられるナンバーをチョイスしヒットした「 歌姫〜オリジナル女性ヴォーカリスト〜 」(こちらで紹介)の続編ですが、今回はタイトル通り、ちょっぴりと哀愁が漂うおセンチな名曲20曲がテンコ盛り。
松田聖子「赤いスイートピー」、山口百恵「夢先案内人」という歌姫たちのメロウナンバー、阿久+都倉のお家芸バラードであるペドロ&カプリシャスの「五番街のマリーへ」、我らがシンシア・南沙織の「色づく街」、永遠の名曲と呼ばれる太田裕美「木綿のハンカチーフ」など、大ヒットを記録したものばかり。今でも誰もが知ってるメガヒットから、静かに聴き継がれてきたスタンダードまで、時代を超えるナンバーがゴッソリです。
ブームを担ってきた流行歌らしく、自作自演のフォーク・ニューミュージック系を中心に、職業作家さんたちの手腕が光る歌謡曲寄りの楽曲などもバランスよく入っています。
年代で見ると73年から83年というディケイドで構成されていますが、注目したいのは6曲もチョイスされた78年。ピンク・レディー人気が絶頂に達し、TBSザ・ベストテンの放送が開始され、テレビがヒット曲の舵を取るのが決定的になったと言われる年です。個人的には、全世代がいろんな方向から楽しめる度量を持っていた昭和の歌謡界が、絶妙なバランスを保っていた最後の年だったような感触を抱いています。
女性ニューミュージックブームもスゴくて、自ら作詩作曲しつつテレビに出たり、歌謡曲とフォーク&NMの中道を行くアーティスト(むろん太田裕美の踏襲です)がこぞって成功を集めた年でもありました。キャリアを重ねた人が初めてのヒットをつかんだり、個性豊かな新人が大ヒットを飛ばしたり、イロイロありましたが、やっぱり78年の自作自演系の代表格といえば渡辺真知子と八神純子。ここでは代表作「かもめが翔んだ日」と「みずいろの雨」が収録されています。
また、いい歌なら自作にこだわらないボーカリスト系としては、庄野真代、大橋純子、中原理恵の3人。ここに収録された「飛んでイスタンブール」「たそがれマイ・ラブ」「東京ららばい」は、いずれも筒美京平先生の手によるものです。
これらの歌からも分かりますが、ディスコが大流行したこの年はエキゾチック歌謡というのも大切なキーワードでして、筒美先生は翌年、その系統の集大成と呼べるナンバーを書き大ヒットさせます。それがジュディ・オングの「魅せられて」ですが、このCDにはその曲も入っているというスゴさ。なんだか当時の歴史のお勉強もできてしまうような選曲となっております。
というように、一つの時代の大きな分かれ目になったような78年ですが、残る1曲は研ナオコの「かもめはかもめ」。あの事件後のカムバック作でありました。
そのほか、丸山圭子の歌謡ボッサ「どうぞこのまま」や薬師丸ひろ子の音壁サウンド「探偵物語」など、ハッキリした個性を持った名曲もありますし、前回同様、徳永英明や中森明菜、岩崎ヒロリンたちカバーをお得意とする面々が好んで取り上げている作品も多数見受けられます。ですので、それぞれのカバーを聴いてオリジナルに興味を持たれた皆さんにもぜひオススメしますね。
特に明菜ファンの皆さん、このCDには彼女が最新アルバム「 フォーク・ソング〜歌姫 抒情歌〜(初回盤A)(DVD付) 」で取り上げたナンバーが3曲(りりィの「私は泣いています」、小坂恭子の「想い出まくら」、イルカの「雨の物語」)も入っていますぞ。
そういえばカバーという観点から見ても面白い選曲がありまして、まずは、あえてオリジナル版が収録された「ダンスはうまく踊れない」。ヒットさせたのは高樹澪でも、本来は陽水が石川セリへの求愛ソングとして作ったものですからね。
逆に「私はピアノ」は、この曲をサザンの名前すら知らない人にまで広めた功績を感じる高田みづえバージョンが入っています。
また、オリジナルは外国曲ですが日本人の情緒にぴったりフィットして大ヒットしたハイ・ファイ・セット「フィーリング」がチョイスされていたり、ユーミン、みゆきに桑田さん、大瀧さんら大御所たちの手がけた作品が一堂に入っていたり、当時の楽曲制作やヒットの傾向という側面からも楽しめるのではないでしょうか。
という名曲コンピ。名曲の名曲たる所以といいますか、名曲へと変化を遂げた背景といいますか、楽曲とアーティスト、そして時代の相関関係みたいなものも浮かび上がってくるようですね。
時代を背負ったヒット曲のオリジナルって、底知れぬパワーが詰まっていますから、近年のカバーでは薄まってしまった、いい意味でのアクみたいなものがきっと感じられると思います。
(2008.12.3)