大切な思いだからこそ、うたにのせて伝えたい。
大好きで、大切なあの人にこの思いを伝えたいとき…。口に出して言うのは照れくさくても、うたに託してならきっと伝えられる。
昔よく、そんな思いのもと、心境を表したうたや好きな曲を集めてカセットテープを作りましたっけ。皆さんもそういう経験があるんじゃないでしょうか?
でも、かつては音源をかき集めるのが難しかったり、ダビングするのが面倒だったり、または得てして独りよがりの選曲になりがちだったり、歌詩カードが付けられないがゆえに言いたい事がちゃんと伝わらなかったり…。また、手作りの場合、軽いノリならいいんだけど、真剣に思いをこめると重く受け止められてしまう…なんてことも多々あったような気がします。
その点、今は便利な時代になったものです。テーマが貫かれ、メーカーやレーベルを超えて編集されたコンピ盤がいくつも存在し、さりげなくその役割を果たしてくれるのだから。むろん中にはまったくスルーしてしまうものもありますけど、時にはドキッとするほどいいなあと思う内容のものに出くわしたりします。
特に自分でコンピCDを焼いたりするとついマニアックな方へマニアックな方へ進んでしまうワタシにとっては、コンセプトのしっかりした良いコンピ盤は、思いを冷静に伝える贈り物に最適。主観的に好きな曲が入っているものを選んだとしても、ほかの収録曲が客観的なバランスをとってくれるので、プレゼントにはとても重宝するんですよね。
と、また前置きばかり長くなってしまいましたが、それは、あのマイセレクトによるカセットテープを作った時の気持ちを想起させるようなコンピ盤が登場したから。“大切な人に、今伝えたいことがあります”というテーマ通り、新旧の感動作16曲を集めた「 おかえり 」です。
70年代からつい最近までという、年代的には幅広い選曲となっていますが、タイトルではピンとこなくてもテレビやカラオケで聴いたりしてきっと耳なじみのあるだろう曲や、多くの人々の涙を誘いスタンダード化したうたも豊富。歌唱力のあるメジャーなアーティストが中心なので、誰もが安心して聴けるのもいい感じです。
このサイト的にマッチするのは、百恵ちゃんの「秋桜」ぐらいではありますが、小田和正の「君住む街へ」やマッキーの「遠く遠く」、BEGINの「涙そうそう」 、プリプリの「パパ」といった定番の名曲群がズラリ。ほかにも、さだ繁理さんの笑顔をつい思い出してしまうさだまさし「案山子」、今はなき筑紫さんの「ニュース23」のエンディングテーマだった玉置浩二「メロディー」、キヨシローの全快をお祈りする「パパの歌」、一青窈の愛の劇場「ただいま」、思わずグッとくる民生の「息子」などなどなど、家族や友だちら、かけがえのない人を思いやる愛にあふれた16のナンバーがそろっています。
また、個人的に大好きな曲もしっかり入っていまして、それが、NHKみんなのうたでも流れた山本潤子さんの「童神〜天の子守唄〜」。深い愛情とていだ(太陽)の光がいっぱいの古謝美佐子さんのオリジナルや、若く凛とした夏川りみちゃんのウチナーグチバージョンも好きですが、クールでありながら崇高さを感じる潤子さん版が胸に迫るんですよね。
数年前、古謝さんと潤子さんのジョイントライブでナマで聴いたことがありますが、あれはマジで涙してしまったほど素晴らしかったです。潤子さんのマキシシングルはすぐ廃盤になってしまったみたいなので、コンピ盤への収録という形であれ市場で生き続けるのもウレシイですね。
そして、これまた崇拝しております矢野顕子さんの「PRAYER」。アッコちゃんのうたにはすべて愛が満ち満ちていますけど、その中でも無償の愛を感じる1曲がコレ。ピアノが愛した女ならではの一発勝負、至高のパフォーマンスが楽しめる録音です。
かつてアッコちゃんの追っかけみたいなこともやったことがあるワタシ。ライブで拝聴したこともありますが、マリア様と観音様を合わせたようなアッコちゃんの歌声に、なんだか金色の光に包まれるような感覚を覚えたものです。
というこのコンピ、あたたかく懐かしいふるさとへの郷愁が募るような、ほのぼのとしたジャケットも味わい深いですし、聴いてたら胸の奥の方がツンとして、人生の中のさまざまなシーンやいろんな人の面影が次々に浮かんできそうです。
そしてあの頃、途方に暮れ道に迷っていた自分自身や、よみがえった恥ずかしい思い出たちにもやっと「おかえり」が言えそう。
またチョー個人的な思いが交錯して参りましたが、そんな愛と感謝、そしてうたの力を感じるこの1枚。自分ひとりで聴くのももちろんいいけれど、この思いを伝えるために…ありがとうの言葉を添えて、大好きなあの人へ贈りましょうか。
(2008.12.17)