大阪万博年に出た、オシャレなアメリカ録音盤!
ここに来てとても活発になったEMIの紙ジャケ復刻。アイドル、そして歌謡曲ときた後はフォークのラインアップがどっさりと続きます。フォーク系は東芝時代からコンスタントに復刻されておりますが、隠れた名盤もチラホラのぞくのでワタシのイチオシをご紹介しましょう。
それが山室(現・白鳥)さんと芥川さんのデュオ、トワ・エ・モワ。和モノのソフトロックや、70年代初頭の喫茶ロックファンには再評価されていますし、素晴らしいボックス「 トワ・エ・モワ noble songs 」では全てCD化されておりますので音源的には珍しくはありませんが、今回は2タイトルがリリースされます。
で、ホントは単独CD化としては初となるNHK「あなたのメロディー」の曲を集めた「 あなたのメロディー(紙ジャケット仕様) 」がレアなのでしょうが、ワタシが聴いていただきたいのは「 トワ・エ・モワ・イン・U.S.A.(紙ジャケット仕様) 」なんです。オリジナルは70年12月発売、2001年に7曲ものボーナストラック付きでインディーズ復刻されましたが、純正盤としては初の復刻となります。
文字通り、大ヒットのご褒美としてアメリカで録音(実はアナログ盤のB面だけらしい)されたもので、
A面には当時の最新曲「誰もいない海/青春のあやまち」をはじめ、英語でセルフカバーした「或る日突然」「空よ」「初恋の人に似ている」、ヒデロザと岸洋子のカバー「愛は傷つきやすく」「希望」を収録。お二人ともナベプロできっちりレッスンを積んだせいもあって、同時代の同好会的なカレッジフォーク陣とは一線を画していますよね。
と言いつつ、A面はスルーしてもいいほどでして、必聴なのが全部英語で歌うB面なんです。ハリウッドはリバティー・スタジオで、東海林修先生がコンダクトを執り、一発録りでレコーディングしたらしいのですが、即席というよりプロフェッショナル度が満ちたスリリングな仕上がりとなっています。むろん洋楽曲ばかりでして、バカラックの「恋よさようなら」をはじめ、S&Gの「コンドルは飛んで行く」、同じレーベルのレターメンと競作になったという海外ドラマ主題歌「ワールズ」、「アクロス・ザ・ユニバース」「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」といったビートルズナンバーなどを、素晴らしいフィーリングで歌っています。
中でもブラスが効いたアレンジがイカすショッキング・ブルーの「ヴィーナス」には脱帽。あと個人的には、幼児の頃、よく聴いて大好きだったクリスティーの「イエロー・リバー」。CBS・ソニーから出たオリジナル盤のレコード、わが家にあったんですよね。近年めざましテレビで流れるまではあんまし聴く機会がなかったので、レコードがどこかにいっちゃってからは、このトワ・エ・モワ盤をよく聴いてジーンとしたものです。
というトワ・エ・モワの隠れた名盤。ボーカルはとても優等生的ではありますが、サウンドは今聴いてもオシャレです。お得なインディーズ盤はもはや入手困難ですので、この機会にぜひお聴きください。
(2008.8.19)