またまた蘇る、百恵ちゃんのスターレジェンド!
時代を超えて1億人の胸に輝き続けるスーパー・ヒロイン——山口百恵。ナツメロ番組や名曲番組などでは必ず取り上げられますし、若く新しいファンも増えているといいますから、1980年のアポカリプス通り、あの伝説はまさに神話の域にまで達したことを実感しますね。
現役7年半の間に百恵ちゃんが残した楽曲たちは、脈々と続く数珠玉のように聴き継がれるとともに、ろうそくの火を絶やすことなく歌い継がれ、現在もなおみずみずしい輝きを放ち続けています。今さら言うまでもなくホントに名曲、名唱ぞろいですもんね、百恵ちゃんって。
フェニックス伝説の約束通り、商品とともに心の中に蘇り続ける永遠の百恵ちゃんですが、デビュー35周年にあたる今年、また新たな企画が登場しました。
引退して28年にもなるのに、毎年のように新商品が発売されるなんて、百恵ちゃんファンはホントに恵まれているなあと瞳が碧色になるほどウラヤマシイ限りなのですが、それだけ着実に売れるのですから 。百恵ちゃんの新商品が出るたび、まるで呪文のように「誰かの新商品を願うならまずは発売中の旧譜をキチンと買わなきゃね、百恵ちゃんみたく数字が動くよう頑張らなきゃね」などと三度つぶやくワタシでした。
で、今回登場となるのは、通販6枚組の「 コンプリート百恵伝説 」。そう、言わずと知れた引退記念のLPボックス「百恵伝説」および99年に出たCDボックス「百惠伝説Ⅱ」のリニューアル完全版です。
やっぱり思い出深いのは、60曲入りアナログ盤の「百恵伝説」。80年7月、さよなら公演・地方巡業たけなわの頃にリリースされたものでした。
当時の心境をちょっとプレイバックしてみますと…百恵ちゃんのファンではあったものの、引退を惜しむというより、友和さんとの結婚を心から祝福していた気がする12才のワタシ。それはミヨちゃん、めぐみタン、シンシアと、好きだった人がことごとく引退し、キャンディーズは普通の女の子に戻り、PLも落ち目を迎えた頃、70年代の終焉とともに一時代が終わったように思っていたせいかもしれません。
80年代の訪れは何だかナウい感じがしていましたし、古いものは去り、新しいものが訪れているような雰囲気でした。まあそれは、その年に中学生になって人にめざめるとしごろへと成長してたということも大きかったと思いますが。
そんなワタシでしたが、地元で行われた「山口百恵さよなら公演」には鼻息を荒くして出かけました。ところが、想像していたさよならコンサートとは全く違った構成で、昔の曲をほとんどやらなかったのにいたくガッカリしたことをハッキリ覚えています。しかし、その反動からか、クラス中が色めき立った百恵フィーバーのせいか、このLPボックスをためらうことなく買う決心をしてしまうのです。
当時の小中学生にとって1万1千円のレコードなんて、夢のまた夢。幼少期には幾多のレコードを買ってもらってたワタシですが、もうこの頃はお小遣いの中でやりくりしなければならなかったし、いろんな物欲が盛んになってたし、結局はお年玉の前借りなんていうマンガみたいな行動に出ちゃったりして…。
で、手にしたボックスは豪華で、夢・花・炎・愁・愛というテーマごとに構成した楽曲(セレクトは酒井さん?)と、それに合わせた色目のジャケット(もちろん篠山紀信さん撮影のショット)の素晴らしかったこと。
初期ものがシングル曲しか入ってないのが残念でしたが、特典も含め永久保存しようと誓ったものでした。今も実家の納戸で眠っているはずですが、ステッカーは学生カバンの裏に貼っちゃったし、ポスターは貼った後捨てちゃったし、きっと箱はボロボロになっていると思う…。
一方、CDの「百惠伝説Ⅱ」は、筒美ボックスが先鞭を付け、キャンディーズから始まったソニーのLPサイズのCD-BOXシリーズ第2弾でした。19年も経っていながら、アナログより千円安いのに40曲も多い100曲入りというサービスぶり。先のLPボックスが引退前の発売でしたので、そちらに収録されなかったラストシングルなどもしっかり入っておりましたよね。
迷った挙げ句、結局買わなかったんですけど、買った人のをつぶさに拝見したところ、ゆかりの各人のコメントも面白かったし、アンソロジーという点では時系列で並べた曲順もよかったし、初期も一通り入っているし、件の問題で「謝肉祭」が入ってなかったことを除けば、とてもまっとうな内容だったと思います。なんでこの曲を入れたの?という個人的嗜好でのギモンはありましたが…。
そして今回、通信販売チャネルで発売となりますのは、パッケージやジャケットはLPボックスを再現し、内容はCDボックスの時系列収録をベースにしたような、ボリュームたっぷり、イイトコドリのミックス版。
気になる内容は、2つの伝説の収録曲にプラスして、グンと増えた全123曲。むろん封印が解けた「謝肉祭」をはじめ全シングル曲も入っておりますし、百恵ちゃんの多面体の魅力がしっかり理解できるナイスなボックスですね。
さらに、オリジナルのライナーをもとに編集された別冊ブックレットは130ページにも及び、労作のバイオグラフィーも掲載されているということですから百恵ヒストリーのお勉強もできちゃうという充実度。コレはかなりお得な上、物欲を刺激するシロモノと言えそうですね。
出るもの全部欲しいという信者さん以外、すでに全音源を持っている人にとってはグッズ感覚でとらえる必要があるでしょうし、今目覚めた子供のようにグズってしまう散財気分も理解できますが、内容を鑑みると通販商品ということも相まって単なるコアなファン向けではない雰囲気。
当時の百恵フィーバーを肌で感じたことはあってもレコードをちゃんと聴いてなかったお父さん層や、百恵ちゃんを知らない世代だけどカラオケで歌ったりして興味がありそうな後輩にプレゼントしたらとっても喜ばれそうな感じがします。百恵ちゃんファンを公言していても、CDをそろえてない人は意外と多そうですしね。
とここまで書いて、コレは全盛の高額BOXブームとは異なるベクトルの商品だということに気づきました。
百恵ちゃんの場合、正直、プレミアムとか紙ジャケ復刻はコアなファン向けだと思うし、我々のようなマニアはともかくフツーの人はCDに3万も4万も出せないですよね。一般のファンは「ベストでは物足りないけど、コンプリートするほどじゃない、でもシングル以外もちゃんと聴いてみたいんだよね」っていう気持ちでしょうから、実はこういうものこそ望まれる企画ではないかと思います。
余談ですが、ワタシとしては、フツーの人に音楽をもっと聴いてほしい、あの頃好きだったうたを思い出して、復刻CDを買ってほしい。そうすれば、いろんな意味で現代ニッポンの悲しき状況が良くなるはずだと信じているのです。オーバーに聞こえるかもしれないのは重々承知ですけどね。
という見地からも、今回はそういう層の人たちに手にとってほしいなあ…。皆さまもぜひお知り合いの方々へ告知してくださいませね。
また、別の側面から見ても、通販チャネルってことは、かの「山口百惠全曲集」みたく干支が一回りしてもカタログに生き続け、ロングセラーとなる可能性が高い商品じゃないですか。ボックスに限らず、限定と銘打たずともその後は流通せず、すべてが初回限定売り切りみたくなってしまったかのような旧譜CD市場にとって、こういう商品が出るってのはメーカーの良心の表れであり、消費者にとっては何よりウレシイことではないかと思います。
と、そんなふうにイロイロ考えてたら、やっぱり百恵ちゃんファンって百の恵みを受けていますよね。数多あるベスト盤はもちろんのこと、今からでもひと思いに全部そろえたい人は全曲収録のプレミアム完全版「 Complete MOMOE PREMIUM 」またはハイブリッド盤紙ジャケ全タイトルの「 山口百恵 22 Original Albums Collection 」、好きなアルバムだけ聴きたい人はまだ在庫があるらしい紙ジャケもしくは通常盤(があること自体がスゴイ!)のバラ売り、そしてオイシイとこ取りしたい人には今回のボックスと、お気に召すまま、自由自在の聴き方買い方ができるんだもん。心の貧しいワタシなんぞは、ジェラシーストームな限りです。
ともあれ引退から28年、こんなに選択肢があるアーティストは世界広しと言えども百恵ちゃんだけのような気がします。一般向けと言いましたが、熱心なファンの皆さんにとっては、そういう、他の歌手のファンには決して味わえない幸せをかみしめられるボックスだと思いますね。買う、買わないはディス・イズ・ユア・トライアルということで…。
なお、百恵ちゃんと同じくデビュー35周年のキャンディーズも94年の通販BOX「キャンディーズ バイブル」をリニューアルしたような「 キャンディーズ伝説 」が同時発売されるとか。パーフェクトな紙ジャケボックス「 キャンディーズ・タイムカプセル 」が出たばかりなのに…という人も多いとは思いますが、コレらはあくまでも通販商品という別のチャネルですのでね。
そして、悩み多い41才のワタシは次に届けられるであろうニュースに、ささやかな欲望を抱いております。
(2008.12.6)