オススメ復刻盤「河合奈保子/NAOKO PREMIUM」

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  ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#245

河合奈保子/NAOKO PREMIUM

(2007.12.19発売、COCP-34705、¥39,800)

カナリー・ガールの豪華なアルバムBOX!

 ついにというか、やはりというか、カナリー・ガール、河合奈保子のアルバムコレクションBOX「 河合奈保子 オリジナルアルバムBOX「NAOKO PREMIUM」(DVD付) 」がリリースされますね。

 80年組では松田聖子は別格だとして、岩崎良美や柏原よしえ(芳恵)も全盛期の全オリジナルアルバムが再発、完全復刻されましたから、いくらBOXが出たとしても河合奈保子が出ないことをお嘆きのファンも多かったことでしょう。
 当時の実績や人気を鑑みても、80年組ナンバー2に間違いありませんからね。

 アルバム曲は既発のCD-BOXで一部が聴けてはいたものの、全部通してちゃんと聴きたい、コレクションしたいという人は大勢いたはずだし。ブートっぽいCD-Rのあ~る盤では満足できないという声も大きかったでしょう。

 ワタシの場合は、当時からアルバムもひと通り聴いてまいりましたが、それはファン層の中心世代であったため常に聴くチャンスに恵まれていたので一応…という感じでありました。
 それゆえ詳しく語る、なんてことはできないし、奈保子さんにはずっと思うところがあってどうしようかと悩んでたのですが、「奈保子ちゃんをスルーしないで」というリクエストもいただきましたので、ご紹介させていただくことにしました。またまたまとまらないような気もするけど…。

 今回のBOX、まずタイトルに驚きましたが、それはともかく充実度がスゴイ。
 80年のファースト「LOVE」から93年の「engagement」までのオリジナルアルバム18枚に、特典として4枚のCDと1枚のDVDを加えた、なんと23枚組。
 しかも紙ジャケ仕様に加え、予約購入者には「シングルA面カラオケコレクション」なるCD2枚などがもらえるというサービスぶりなのです。コンプリートが後発になったがゆえの充実感がありますねえ。

 なお、特典CDは、ミニアルバム「It's a Beautiful Day」や、カセットのみのリリースだったナレーション入りアルバム「愛・奈保子の若草色の旅~Dream of Journey~」&別ユニットの楽曲に、それぞれボーナストラックをプラスして構成した2枚。
 これに、黄金のシングルヒットを集めた2枚組「コンプリート・シングルA面コレクション」が加わった計4枚なのだとか。

 DVDの方は、ビデオ未発売の83年ライブ「NAOKO 20'sカーニバル」を収録したレアもの。
 さらにブックレットにはLPのピクチャーレーベルや、発売当時の貴重なパンフレットやチラシ、未公開フォト、ファンクラブ会報などが掲載されるなど、資料的価値も大変高いボックスとなっています。

 それと、メーカー直結のコロムビアファミリークラブ で購入すれば、アイドルグッズなどさらなる特典もらえるという力の入れよう。特設ページでは壁紙もダウンロードできるようになっていて、これまたビックリです。

 さて、ヒデキの妹であった奈保子さんの軌跡を振り返れば、聖子をはじめヨシリンなどアイドルポップスがどんどん高度化してゆく中、初期の楽曲は、頑ななまでに70年代を引きずっていて、とても鈍くさい印象が強かったのは事実です。
 あの初期の流れは狙いだったのかもしれないけど、それはそれで、最初の頃の天然っぽいキャラクターとか、生真面目で丁寧な歌唱とかにとてもマッチしていたような気がします。だからこそ、あのナハハ的魅力と相まって人気が出たんだと思いますしね。
 個人的にもファーストの「LOVE」なんてよく聴いて、今でもたまにタイトル曲のサビを知らぬ間に口ずさむことがあるぐらい。

 同時期のアイドル全般が職業作家の手を離れた時代ですし、結局はシフトチェンジしてくんですが、その脱皮が行きつ戻りつしながらも、すごく明確だったのがとても面白かった印象があります。
 やはり82年のシングル「けんかをやめて」「invitation」の竹内まりや作品が転機だったと思いますが、これを受けた翌年のアルバム「あるばむ」にはまりや&来生姉弟作品を収録、ほのかなアーティスト色がつきました。
 フツー、「夏のヒロイン」みたいな曲を歌ってた人がそういう方面へ転換すると、ヘンな違和感がありそうなんですが、彼女の場合、とても自然だった。やはり、素直で柔和な人柄と音楽的素養の賜物だと言わざるを得ません。

 そして、その流れは、より洗練されたアイドルポップスの追求と、自然体アーティストっぽい流れの両輪操業へとたどり着き、筒美京平と石川優子を半分ずつ収録したアルバム「SKY PARK」として結実。

 ヒットと脱皮を狙い、筒美先生がハードに変身させた同発シングル「エスカレーション」はスコーンと抜けるように大ヒット、大きな成果を収めます。
 「エスカレーション」路線の主体的な女性像がくっきりとなって、84年という大きな転機を迎えるのです。多くの皆さんは83年から変わったような印象をお持ちかもしれませんが、ワタシは奈保子さんの音楽は84年から劇的な進化を遂げたと思っています。83年まではまだお気楽なテーマも目立っていたけれど、やっぱり20才という年齢的なこともあったんでしょう。

 84年になると天真爛漫さはすっかりなりを潜め、アダルトで高度なシティ・ポップスを基本としてゆくんですよね。
 その84年は、きっと本人が目指したかった路線であろう八神純子の曲が半分を占める「サマー・デリカシー」、初のLA録音にしてD.フォスターなどが総力を結集した新境地「DAYDREAM COAST」(内容がいいのはモチロンですが、ジャケも店貼りポスターも広告もカッコよかった)、そして筒美京平渾身の名盤「さよなら物語」と、アルバムだけでもちょっと驚くほどの充実ぶり。
 85年には同じく筒美先生が全曲を手がけた「スターダスト・ガーデン~千・年・庭・園~」もリリースしています。

 このへんのスリリングな感じの楽曲は、歌唱とあわせとても優れたものが多いのですが、果たしてメイン作詞家となった売野雅勇さんが合っていたかはギモンだったりして。かなり修飾過多というか、歌を聴いて内容や心情がつかみにくいものも多く、詩世界表現という部分ではワタシの心は響かなかったのです。当時の売野さんのレトリックが好みではなかったのもありますが…。
 奈保子さんって、コトバをかみしめて表現する力が優れていたように思いますしね。

 あと、素養のせいで何でもソツなくこなせるように聴こえるけど、やっぱり演技派ではなくナチュラルな素地を生かした表現力に長けた人なんですよね、奈保子さんは。まあ、当時はそういう音楽が先端だったし、時代性と言えばそれまでですが…。
 ケアレスな「北駅のソリチュード」なんかも大好きだけど、ヨーロピアンより、はつらつポップな筒美系奈保子さんを聴いてみたかったな。

 結局は、ジャケに驚く86年の「Scarlet」以降、持ち前の素養を生かし、自作曲による本格派アーティストへとキャリアアップしていくのですが、ワタシ的には興味が失せてしまった。
 ですので、とやかく言うことはできません。優れた音楽を追求し、努力を重ねて伸び伸びと自己解放していったのはとても素晴らしいことだと思いますが、前述の通り、ワタシが河合奈保子に求めていたものとは決定的に違っていったのですね。

 と、なぜか奈保子さんのことを思い出すとネガティブになってしまいスミマセンが、あれほど人気のあった人だもの。いろんな聴き方、楽しみ方をされる人も多いでしょう。
 このボックスで典型的アイドル時代の元気な魅力を堪能するもよし、独自のポップスにチャレンジしていく姿を追うもよし、自らの音楽を築き上げていく過程を味わうもよし、音楽的変遷を遂げてきた河合奈保子ならではの多面的世界が満喫できることと思います。

 最後に余談ですが、なぜワタシが奈保子さんについて思うところがあるのか。それは、ある時期から、素の部分というか本心みたいなものを意図的に隠すようになったと思えて仕方なかったからなのです。

 カゴの中にいたとしても歌うことが何よりも楽しいと感じてたカナリヤが、いろんな意味で目覚めて外へ出た。そしたらば身の危険を感じて構えてみたり、戸惑ったり、悩んだり。それは当然のことなんでしょうが、なんだかあの弾むような楽しさを忘れてしまったような気がして…。
 それでも既存の歌ならば、もがく様すら感銘を受けたのかもしれませんが。このへん、よく言われるような奈保子さん自身のアーティスト志向とか音楽的才能への否定ではありません、念のため。

 具体的に言うならば、全盛期に大ファンの友人から合歓の郷での合宿時に撮ったと思われる奈保子さんのスナップ写真をもらったんですね。それはテレビや雑誌では見たことのない表情だった。
 笑顔じゃないけど、ひたむきでいきいきとして…音楽に真摯に取り組む姿勢がとても魅力的だった。後になるに連れ、そういう志向こそが本来の奈保子さんの意志であり、今後の方向性である、なんて深くうなずいていたワケなんです。自作の道へとシフトするのもさもありなんと。しかし、年を追うごとにテレビなどで見かける顔は、だんだんかげりが色濃くなっていった…。曲調がとかいう問題ではなく。

 そして最後の方には、苦悩の色すら浮かばせていたような…。それが新しい奈保子さんの魅力だとは思えなかったんですね。
 もちろん、ご本人が目指した姿ならばいいのだけど、そうは思えなかった。聴かなくなった後でも、そういうことがずっと気がかりだったのは確かです。

 そのギモンがこのボックスで明らかになるかどうかは分かりませんし、再開した音楽活動が本人の望む道ならばツベコベ言うつもりはホントにないんですけど…。
 ワタシはただ、このボックスを紐解いて、そのあたりことを確かめてみたい。そんな気持ちになっています。

(2007.10.23)


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