天使が正義を世に問う?! 売り上げ順のベスト24!
近年いろんな場面で寄稿を続け、昨年には著書「 アイスルジュンバン 」を発表するなど、にわかに復帰が囁かれる淳子。
取り巻く問題はいまだ解決に至ってはいないし、本人の意志にかかわらずその影響が大きなことを認識していますけど、ワタシは淳子の恐るべき才能と芸に懸ける飽くなきプロ根性をずっと支持しておりますんで、小さな期待に胸を膨らませておりました。
そこに、このベスト「 桜田淳子 GOLDEN☆BEST 」の登場です!
G☆Bシリーズではありますが、内容同じで型番価格だけが違うお決まりの悲しき再発ではない、久々の新発売に、淳子復活を予感してしまったのは言うまでもありません。
しかしながら、どーもそういうことではございませんで、このベストは、うすいのさんが手がけたビクター初のG☆Bの「 岩崎宏美 - GOLDEN☆BEST 」に続く、オリコンシングルセールスベスト24集でした…。
淳子の場合、昔からベスト盤の種類(廉価盤「桜田淳子」、2枚組「COLEZO!TWIN 桜田淳子」など)は少なく、BOXを除けばシングル完全収録のベストは出ていないし、今となっては名作の多い後期のシングル曲は入手困難なので、薄いファンのためにもそっちが出る方が先かと思うのですが、この企画の面白さはヒロリンでも実証済み。コアなファンも新鮮な思いで聴くことができましょう。
あ、コアなファンの皆さんは淳子モノがリリースされるだけでもきっと大喜びですよね。昔本編に書いたせいか、ウチには昔から大勢の淳子ファンの皆さんが来てくださっておりますし、よくメールも頂戴しますので、盛り上がっている様子が目に浮かぶようです。
さて、収録予定曲は売り上げベスト24ですけど、改めて見てみるととても面白い曲順です。
ザーッと紹介しますと、唯一のナンバー1ヒット「はじめての出来事」をはじめ、阿久さん解釈の“17才”だった「十七の夏」、NMにシフトし百恵ちゃんをリードした中島みゆき作品「しあわせ芝居」、思わず膝を打って指を指しちゃう「夏にご用心」、筒美先生の傑作「ひとり歩き」、大野克夫さんの森田さん的ナンバー「ねえ!気がついてよ」、久々天使シリーズの「天使のくちびる」、個人的にはイチバン苦手なシングル「ゆれてる私」、演劇少女ならではの詩の朗読がスゴイ「花物語」、疾走感にハッとする「泣かないわ」、阿久さんのマリリン・モンロー「気まぐれヴィーナス」、初の失恋シングルにクラスの女子も涙した「もう一度だけふり向いて」、筒美ディスコの最高峰「リップスティック」、最も素晴らしかったロリ声に萌える「三色すみれ」、淳子の魅力が初めて全開したポップだけどその後の運命を決定づけてしまった「黄色いリボン」、みゆき第2弾にして息つぎできぬ「追いかけてヨコハマ」、今でも代名詞の第3弾「わたしの青い鳥」、名曲なのに地味な扱いを受けている「あなたのすべて」、TVジョッキーでのカッコよさ(カラオケのため)ビックリした筒美作品「もう戻れない」、臨発盤のため淳子もシングルを持っていないと言ってた、朝ドラのセーラー服と大竹しのぶが懐かしい「白い風よ」、ナショナルのCMソングで知名度の高い「サンタモニカの風」、明星募集歌にしてセリフが怖い「花占い」、世紀の大型新人の登場にみんなが大注目したデビュー曲「天使も夢みる」、みゆきの書き下ろし第3弾「20才になれば」となっています。
皆さんはどれもおなじみでしょうが、一般的にはこれを見てその順位を意外に感じる人や、タイトルだけではピンとこない人も多いかも。
思うに、阿久さんのお家芸、タイトルやフレーズにインパクトがあるものはセールスに関係なく人々の記憶に残っているようですが、そうでないものはかなり忘れられているんですよね。
「ひとり歩き」「天使のくちびる」「泣かないわ」「あなたのすべて」あたりなど、メロを聴けば覚えている人も多いんですが、データだけで読み解けば、曲の良さで売れたワケではなく、やはりアーティストパワーによるセールスという結論にいたりつくという感じなのでしょうかね。
今回のベストの趣旨はとても面白い切り口だから明確で何の疑問も持たないのですが、通常のベストの選曲ってどうも納得行かないのが多くって、なんかいろんなことを考えちゃいます。
例えば淳子で言えば1枚もののベストCDでスルーされてきた「ひとり歩き」。田舎の子どもだったワタシが肌で感じた限りでは、ファン層のみでクローズドされてた印象はなく、むしろその名曲さは中学生女子から共感をかなり得ていたように思いますし「スプーン一杯の幸せ」の人気も手伝って、みんなが知ってる曲だと思っていたりしましたけど…。
ワタシは過去をデータだけで判断してしまうマーケティングにはちょっと懐疑的だし、70年代のオリコンをさほど信頼していないのでそういう見方をしてしまうのかもしれませんが、淳子に限らずイージーなベスト盤を聴くにつけ、対象を追い続けていた中心層にとっては、鮮明に記憶しているという部分ではマーケティングのサンプルに入らないのかなあ、なんて。買う人はそういう層だと思うのだけど。
最近はコアな人たちを満たすモノばかり出るし、イージーベストも単に選者の好みだけの問題だったりするので、そんなことを言う必要はないのかもしれないけど…。
なんだか、話が今回のベストとは無縁の方向に飛びましたが、それも淳子らしくていい感じ(?)。
まあ、曲とセールスの違和感に関しましては、その理由は多々あるでしょうし、それぞれが絡み合いもつれ合っておりますけど、この機会にワタシがずーっと思ってきたことをちょこっと買いときます。
まずはやっぱり、メイン作家になった森田公一さんの問題。
デビュー以来、阿久悠+中村泰士コンビは乙女チックで内省的な淳子を描いてきましたけど、淳子天性のポップさは前面に出ていなかった。そんな時に出た「黄色いリボン」は、とってもグッドタイミングで、ワタシを含めあの頃の子どもたちも待ち望んだ曲調でした。
この後、泰士さんに戻した「花占い」が今一つパッとしなかったせいか、森田さんとともに直系天地真理路線を突き進むのですね。これが淳子の運の尽きとゆーか、単調なバリエーションによる金太郎ならぬ淳子飴路線になっちゃって、名曲が少ないとされる原因ではないかと思ってます(中村さんならOKだったとも思っておりませんし、阿久さんの責任の方が重かったりしますが)。
淳子自身も「(淳子声をイメージして読んでネ)私の歌は似たような曲が多いんです。ある時、コンサートでイントロを勘違いして別の曲を歌い始めてしまったんですけども、途中まで全然気がづかなかったんですね。あっ!と思ったけど、そのまま歌い続けたら、最後はちゃんとぴったり終わっちゃったんです」みたいなことを言ってましたっけ。
「ゆれてる私」前後とか、当時から残念に思っていたことは確かで、このへん、確かに全盛期だし、オリジナルLPが何枚もVIVIDから復刻されましたけど(ワタシは後期のアルバムとライブ「私小説」の復刻を熱望してます…)、けして淳子本来の魅力ではないと断言させていただきたいですね。
あとは、百恵ちゃんとの比較にしても、通り一遍以外の見方もあるんですけど、淳子留年のたわごとみたいになるんでやめときましょう。
そんな風に淳子への思いが尽きないのは、今この時だからこそ、なのかも。
現在の、政治にしろ何にしろ茶番でしかなくっている世の中には、やっぱり淳子的正義が必要だべさ、なんて痛感するのです。
語弊はありますけれど、このベストであの淳子的精神を思い出し、その意義をちょこっとでも再認識してくれる人がいるといいなあ、などと思います。ええ、マジに。
(2007.5.31)