9年分ライブでたどる歌姫の軌跡、奇跡の歌声!
ご存じオリジナル・アルバム紙ジャケット・コレクション(第1期、第2期、第3期)が大成功を収めたヒロリン。
その賜物といえるファン待望の企画がついに実現します。そう、映像を含むライブ盤完全復刻の17枚組ボックス、その名も「 岩崎宏美 ROYAL BOX~スーパー・ライヴ・コレクション~ 」。
ここまでやってくれれば、またまた言うことなし。CD15枚にDVD2枚という壮大なスケールの17枚組となっています。もちろん先の復刻盤と統一感のある紙ジャケ仕様。
詳細は最終決定ではありませんが、多くのリクエストをいただきましたし、首を長くしておられる皆さんも多いでしょう。それと、買おうかどうか迷っている人にとっては、できるだけ早く決めて年末に向けての積み立てをスタートした方が賢明でしょうから、ザーッとご紹介してみることにします。
なお、ワタシなりの、期待の意味も込めた紹介文となりますことをあらかじめご了承くださいませませ。
70年代半ば、ライブ盤というより実況録音盤、コンサートというよりリサイタルというコトバが幅をきかせていた時代。歌手にとってステージは腕の見せ所でありましたし、かくいうヒロリンはテレビの2分でも驚かせましたが、やはりライブで本領を発揮するタイプでしたから、まさにライブ盤こそ必聴です!
ヒロリンはデビューした75年10月に東京・芝の郵便貯金ホールで初のワンマンコンサートを行って以来、毎年10月にコンサートを恒例化。83年まではライブ盤のリリースもお約束の出来事でした。今回のボックスはその商品化された全アルバムを復刻、さらに未DVD化の映像も復刻という悲願の企画になっています。
まずは、初々しい75年の「ロマンティック コンサート」。第2弾「ロマンス」、第3弾「センチメンタル」とシングルが連続ナンバー1に輝き、その手応えを観客の声援にもしっかり感じてたであろうヒロリン。持ち歌が少ない新人ならでは、ほとんどがカバー曲で構成されていますが、自らの歌のルーツとともに後の方向性を形作った象徴的なライブとなっています。
ロバータ・フラックなど黒っぽさをのぞかせるソウル、育ちの良さを思わせる童謡ナンバー、当時はナウかったフォークヒットまで、緊張による堅さを自ら解き放ち、物おじすることなく伸びやかに進行してゆく様は、当時も今も聴く度に大きな感動を覚えます。はちきれんばかりの若さと、歌に懸けるひたむきな情熱はもちろん、その天賦の美声とうたの力を存分に堪能できる好盤です。世に出るきっかけとなったスタ誕出場曲「あなた」もいいですね。
リリース時、LPとカセットでは曲目が大きく違っていましたが、今回はそのへんがきちんとまとめられると文句は出ないでしょうね。確か4ch盤だったように思いますが、そのへん4.1chハイブリッド盤で…なんていうのはいくら何でも強欲すぎますね。
続く76年の「ロマンティック コンサートII ちいさな愛の1ページ」は堂々たる2枚組。
経験を重ね、声量もぐんと増したヒロリン。2年目も順調にヒットを飛ばし、押しも押されぬトップスターの仲間入りを果たしたせいか、とてもパワフルで余裕の感じられる仕上がりです。ディスコタッチのアレンジをはじめリズムに乗ろうと懸命に頑張っている感じがする洋楽カバーが秀逸。バカラックナンバーはもとより、ダイアナ・ロスやスタイリスティックス、このへんの黒っぽさを出せるティーンエイジャーなんて、あの頃の日本には誰一人いなかったように思います。
後にライブの終盤の定番となる「月見草」「私たち」の流れも素晴らしいですね。ファンの盛り上がりに、ヒロリンは確かにアイドル歌手だったことを再確認。
なお「いちご讃歌」は、のちにスタジオ録音され「あざやかな場面」のカップリングにもなりました。
そして77年の「ラブ・コンサート パート1 新しい愛の出発」も2枚組。
洋楽のカバーの1部、童謡や愛唱歌を中心にした2部という構成ですが、当時は「思秋期」で大きな転換を図った頃。高校を卒業してしっとりと大人になっていったヒロリン、圧巻のポップスメドレーにしても、パワーでグイグイ押し切っていた頃とはどこか違う変化が…。
アルバムからのオリジナルも披露し、大人のシンガーとしての着実な歩みが記されたライブ盤と言えますね。ワタシは、数多のアーティストに愛された「歌の贈り物」が大好きですが、ヒロリン・バージョンも大のお気に入りでした。
78年の「ラブ・コンサート パート2 ふたりのための愛の詩集」は1枚物なので、ちとピックアップに無理があるようなのは気のせいでしょうか?(これもカセットは多いようです)
最新ヒット「さよならの挽歌」をはじめシングル3曲以外は、洋邦のカバー。「飛んでイスタンブール」「この空を飛べたら」「Mr.サマータイム」という当時のニューヒットが時代を感じさせますね。時代と言えばディスコブームもピークの頃、バリー・マニロウやドナ・サマー、ビージーズといったダイナミックなサウンドにのせて、デビュー以来続いてきたヒロミ・イン・ディスコはフィナーレに向かいます。
ところで、この年は桑名正博とロック・ミュージカル「ハムレット」に挑戦していますが、その収録曲もボーナスとして入れてほしいという声もありそう。30周年ボックス「 岩崎宏美 30TH ANNIVERSARY BOX 」にも収録されましたが、抜けもあったようですしね。
お次は79年、ドナ・サマーも驚くタイトルの「ライブ&モア」。ご本家同様、ライブとスタジオ録音の2枚組でした。ダイアナ・ロスのナンバーも堂に入っていますね。聴きどころは、伊東ゆかりでおなじみの「あなたしか見えない」や、久々に収録されたゆかりの名曲「あなた」でしょうか。
スタジオ録音(レコードでは2枚目の片面)の方は、オリジナル・アルバム復刻のボーナストラックとして収録済みなので、今回は見送られる模様。よって、このタイトルのCD化は2枚組ではなく1枚となるようです。
でも、アルバムコンセプトやタイトルを考えると、完全復刻してほしいという声も多そう。ところで内容とは全く関係ありませんが、ワタシ「万華鏡」のアッパッパのような衣装がキライだった。ヒロリンがすごく太ったオバさんになったようで…。であるからして、このアルバムのジャケットもキライでした。
続く80年の「シンフォニー」は趣が異なっていまして、恒例のリサイタル収録ではなく、日本フィルハーモニー交響楽団と共演したシンフォニック・コンサートの模様を収めたもの。収録もレギュラーとは違う中野サンプラザで、発売も春でした。チェコ・フィルハーモニー管弦楽団がバックを務めた最新作「 PRAHA<Deluxe Edition>(DVD付) 」のルーツとも言える好企画盤です。
全編を服部克久さんがアレンジ、ヒット曲のメロディーをまとめた「序曲」も美しいし、「万華鏡」の英語版をはじめとするシングル曲や洋楽カバーなど、クラシカルなバックに負けず美声を響かすヒロリンが素敵。未聴ですが、カセット版はLPより収録曲が多かったように記憶してます。果たして今回どうなるのかが気になるところ。
同じく80年にはレギュラーのライブ盤「岩崎宏美リサイタル 宏美 22才の愛」も出ていまして、こちらは2枚組。これぞ往年のヒロリンのコンサートという雰囲気で、スタンダードな映画主題歌をはじめジャニス・イアン、バリー・マニロウらのポピュラーミュージックとともに、「想い出の樹の下で」などちょっと懐かしいシングル曲、オーラスの「私たち」まで、王道のライブが楽しめます。円熟と言いますか、メイクとともに(?)かなり濃くなってきたヒロリンのボーカルが圧巻ですね。
81年、シングルでは「すみれ色の涙」が久々の大ヒットとなったヒロリン。その和風な味わいを生かしたのか、2枚組「岩崎宏美リサイタル'81」は、なんと「舞鶴」をイメージしたというモノ・ミュージカルに挑戦。1枚目は全曲コンサートのためのオリジナルで構成されています。
2枚目はいつものノリでカバー曲にヒット曲がてんこ盛り。バーブラ・ストライサンドの「追憶」やダイアナ・ロスの「エンドレス・ラブ」など、大人のシンガーとして不動の地位に立ったヒロリンがしのばれます。
そして、「聖母たちのララバイ」の超特大ヒットにより歌謡界の頂点に立った82年の「岩崎宏美リサイタル」。「愛はかげろうのように」「素直になれなくて」といった当時の最新ヒットも披露。
30周年記念ライブでも好評だった ナタリー・コールの「ミスター・メロディー」はいつ聴いても鳥肌が立ちますし、押したり引いたり、自由自在の声のパフォーマンスには初期とは違う意味で圧倒されることでしょう。これぞヒロリン・イン・ショービズ!
とどめは、「'83岩崎宏美リサイタル」。
オリジナルは最新ヒットの「家路」と「エアポートまで」の2曲だけで、後は洋楽ヒットやスタンダード、シャンソンまで、さまざまなうたで綴る大人のライブという趣。映画から社会現象にまでなって多数のカバーが存在するオープニングの「フラッシュダンス」や、同じく映画主題歌として話題を呼んだスティーヴィー・ワンダーの「ステイ・ゴールド」など、聴きどころ満載です。
ジャジーな雰囲気のヒロリンも味わえ、脂の乗り切った艶とコクのある歌声は、往年のファンが最も愛してやまない声かも。ワタシは近年の、いい意味で枯れてきた声も大好きなのですが。
この翌年に事務所移籍となり、ライブ盤のリリースも途絶えてしまうのが残念です。
ということで、ここまでの10タイトルが既発ライブ盤。今回のCD化で15枚、となるはずが、あれ?!、「ライブ&モア」が1枚となると14枚じゃん…。
ということなのかどうか、よく分かりませんが、なんと86年のエジプトでのライブを収録した映像作品「ピラミッド」の音源をCD化したものがプラスされるみたいです。コレ、レコードでもCDでもでてませんよね?ビックリというか、ちょっと唖然…。
気を取り直して、DVD2枚の方へと進みましょう。
映像作品「岩崎宏美リサイタル」「岩崎宏美リサイタルVOL.2」のDVD化です。VHDで頑張ってたビクターが82年と83年にリリースしたヒロリンのライブVHDですが、再発を切望していた人はかなりの数に上っていたと思いますし、今回のボックスでファンが一番喜ぶアイテムではないでしょうか。
「ピラミッド」は一足早く30周年BOXでDVD化されていますので、この2枚で商品化されていたビデオソフトはすべて復刻と相成るんですよね。
と、駆け足で紹介して参りましたが、なんともスゴイ、まさにロイヤルなボックス。日本を代表するショウビズ・シンガー(というと反感を買いそうだけど、今日の日本にはそう呼べるほどの人気と実力を、彼女ほど兼ね備えた人はどこにもいないので最大の賛辞と受け取っていただければ幸いです)、岩崎宏美。うたの神様に見いだされ、ずっと愛され続ける奇跡の歌声の軌跡を、じっくりご堪能ください。
むろん内容は変更となる場合もありますので、各自ご確認の上ご予約を。30周年のBOXと同額と高額ではありますが、今年の上半期、大枚をはたいたファンを思いやってか、暮れのボーナス期のリリースという配慮も十二分になされております。トーゼン完全生産限定盤ですので、とりいそぎ予約するもよし、まずは金策に走るもよし。お早めにアクションを起こし、ぜひご入手ください。
(2007.9.28)
*内容の詳細、収録曲は正式決定のものをご確認ください。
*発売日が12.19→12.27に変更となりました。カセットテープ収録曲も網羅したCD14枚、DVD2枚の計16枚組の構成に変更となっています。
*お問い合わせをいただきましたので、ヒロリンのライブ盤をフルコンプされたい方への補足として…このボックス収録のもの以降に商品化されたライブ盤としては、岩崎復活後初のコンサートツアーを収めた96年発売の「
LIVE’96“フル・サークル”
」、30周年記念コンサートを収めた2005年発売の「
30th Anniversary Live Special Happiness
」があり、いずれもDVD化(「
FULL CIRCLE [DVD]
」「
30th Anniversary Live Special Happiness [DVD]
」)されています。特に30周年のDVDは太鼓判を押します!
なお、96年のものはCD、DVDともに入手困難になっていますのでご注意ください。(2007年現在)
*BOXは即完売し、長らく入手困難になっていましたが、ライブCDに関しては2010年にMEG-CD(CD-R)化され「
岩崎 宏美 ロマンティック・コンサート (MEG-CD)
」など、それぞれ単品販売されるようになりました。