オススメ復刻盤「桜田淳子 オリジナルLP 紙ジャケット・コレクション<後編>」

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  ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#224

桜田淳子 オリジナルLP 紙ジャケット・コレクション<後編>

■第1期:2007.8.22発売…そよ風の天使+9(VICL-62511)、わたしの青い鳥+8(VICL-62512)淳子と花物語+10(VICL-62513)、三色すみれ+10(VICL-62514)、16才の感情+9(VICL-62515)、スプーン一杯の幸せ+6(VICL-62516)、わたしの素顔+9(VICL-62517)
■第2期:2007.9.21発売…青春前期+7(VICL-62518)、熱い心の招待状+5(VICL-62519)、LOVE 淳子が禁断の木の実を食べた+7(VICL-62520)、しあわせ芝居+2(VICL-62521)、ステンドグラス+8(VICL-62522)、20才になれば+3(VICL-62523)
■第3期:2007.11.14発売…愛のロマンス+6(VICL-62524)、一枚の絵+8(VICL-62525)、パーティー・イズ・オーバー+5(VICL-62526)、あなたかもしれない+8(VICL-62527)、My Dear+7(VICL-62528)、ナチュラリー+4(VICL-62529)

*各¥2,500  ※第3期の発売が10.24→10.31→11.14へと延期

ボートラ&ライナー充実、淳子の復刻後編!

 どもこんにちは、前編に続き淳子の復刻後編れす。

 全19タイトル、3ヵ月連続の紙ジャケ復刻ですが、各タイトル、アルバム未収録のシングルをはじめ、ベストや企画盤のみに収録だった曲、92年に突然出たリミックス盤まで、ボーナストラックも予想通り充実。
 そして、まさかの淳子セルフ・ライナーノーツに、10枚以上買うともれなく淳子のナレーション入りスペシャルCDがもらえるというお楽しみつきでございます。

 3期にわたる復刻ですが、ウチでは再発分、初CD化分と2回に分けてご紹介しておりますので、今回の後編からが待望の初CD化となります。

 まずはスタッフを一新、大きく路線を変更した1977年後半。
 ある意味とても微妙なターニングポイントでしたが、大成功を収めたことで、シンガー・桜田淳子としての方向性が定まっていったように思います。

 それが、十九と二十才じゃ大違いなアルバム「 しあわせ芝居(11th)+α(紙ジャケット仕様) 」。中島みゆきを起用しロングヒットとなったタイトル曲を含みますが、みゆき提供曲はそれだけで、ニューミュージックの世界とまではいっていないのが淳子的に悲しいところ。それなりの色は出ているんですけど。作家陣にはユキヒロ&信幸の高橋ブラザーズも見られますが、やはり歌謡曲系の作家が目立ちますしね。
 でも、阿久悠の呪縛から解かれたニュー淳子の面影がのぞきますし、それだけでも大きな成果が出てるアルバムはないでしょうか。

 そして、アンニュイにますますアダルトチックになってゆく「 ステンドグラス(12th)+α(紙ジャケット仕様) 」。
 ワタシ、淳子の声変わりは78年で完成したように思いますし、それがみんな淳子離れしてしまった最大の要因だと考えておりますが、実はあの何とも言えないぬるくけだるくなった声こそ、淳子の真骨頂なのですよね。演技的実力のアップとともに、次第にシャンソンめいてゆくあの声こそが。
 シングルではみゆき2作が続いた後、松本+筒美の傑作「リップスティック」を出しましたが、この路線を極めたLPがあってもよかったように思います。ってか、当時から聴きたかった…。

 で、結局はまたみゆきに戻すんですけど、そのシングルをタイトルにしたのが「 20才になれば(13th)+α(紙ジャケット仕様) 」(ここまでが第2期リリースです)。研ナオコに対抗したのかもしれないけど、“桜田淳子、中島みゆきを歌う”です。
 当時からみゆきファンからの評価は恐ろしいほど攻撃的で低かったけど、ワタシはこのアルバムの凄さにマジで鳥肌が立ったことを覚えています。
 昔書いたこともありますが、「おまえの家」なんて、軽いタッチのアレンジだから聞き流せそうなのに、鉛を飲み込んだようにズッシリと重い。努力によるものなのか天性のものなのか、あの間の取り具合や声の出し方といったらどうでしょう。情景はもちろん、淳子の視線の行方や心までもが見えてしまいそうになるのです。
 それはさておき、淳子のLPなんてと思う人でも、この1枚は手に取りやすいのでは。せめてコレぐらいは買ってくほしい。ってか、みゆきファンを中心に売れそうだし、今回の再発でダントツのセールスになるかもしれませんね。

 企画盤はもう1作ありまして、岩崎宏美の和の童謡と対をなす、洋の愛唱歌集「 愛のロマンス+6(紙ジャケット仕様) 」(ここからが第3期)。
 シャンソンをはじめアメリカン・トラディショナルソング、クラシックまで、淳子のクセのある歌唱がクセになりそな名盤です。
 こうして聴くと、淳子の歌の上手さ(技巧じゃなく)って、オリジナルでは分からないのかもしれない。淳子独自の解釈というか、歌いこなしている様は、数多の人が歌い、誰もが知ってる曲によって初めて理解できるのではないかと思います。

 そして、ジャケットの美しさに思わず息を飲む、久々のオリジナル「 一枚の絵+8(紙ジャケット仕様) 」。
 百恵ちゃんのそれとは趣を異にする、まことに正統なフォトジェニックさに魅了されたワタシは、買うつもりなどなかったのについレジまでフラフラと行ってしまいました…。
 でもジャケットに裏切られることなく、内容はアダルトチックに充実。同時期にハイ・ファイ・セット盤も出た「夕なぎ」をはじめ、アンニュイで上品な淳子が詰まっています。そのため、シングル「MISS KISS/女は自由」が異質で浮いている感もありますね。

 続く「 パーティー・イズ・オーバー+5(紙ジャケット仕様) 」は、前作からわずか3ヵ月後の発売で、これまた好盤。
 79年の淳子は精力的で、企画盤はあるもののスタジオ録音のLPを3枚も出しているんですね。個人的には、シングル盤で一番好きなタイトル曲と、淳子のオリジナルで一番好きな「おもいで達」が収録されていて、とても思い入れのあるアルバムです。
 シングル「パーティー・イズ・オーバー」は当時はまったく一般受けしなくってとても残念な気がしましたけど、あれって曲が長いせいか、歌番組でヘンな構成になってたのにも一因があるのではないでしょーか。淳子の美しさも絶頂だし。そう思うと、なんか近年のこの曲に対する再評価が、逆に残念な気がしてなりません。
 なお、本作には山下達郎作品が2曲収録されていて、昔から達郎ファンにはCD化を熱望されてました。しかし、達郎サイドが自主制作した通販CD「山下達郎作品集Vol.1/THE WORKS OF TATSURO YAMASHITA Vol.1」で既にリリースが実現してますので、今回達郎ファンによる売り上げ増は見込めないでしょーね…。

 その後、淳子は女優的な活動へと徐々にシフトしてゆき、さまざまな舞台に挑戦。板の上では努力がハッキリとした形となって表れるためでしょうか、それとも生来の一本気な性格のためでしょうか、高い評価を受けるほどにエンターテインメントにのめり込んでいったように思います。
 ワタシは「ひとり歩き」の頃、カンコー学生服主催のリサイタルで生のステージを観て以来、歌手としての淳子も、板の上でこそ一番光り輝くと実感していましたが。

 そのあたり、ビクターならではの頻発したライブ盤でも確認できるはずです(ぜひ次はライブ復刻、「私小説」だけでもCD化してほしい。これ、淳子のお願い!)。

 そんな淳子のエンターテインメントが、アルバムとして花開いたのが81年3月の「 あなたかもしれない+8(紙ジャケット仕様) 」。オリジナルとしては1年半のブランクがありましたが、そこには生きる道をようやく見出し、吹っ切れて軽やかになった淳子がいました。
 解放された気持ちは、歌声にもきっちりと反映されていて、時には明るく溌剌ポップに、時には芝居じみた華麗さをにじませたり、ペーソスに満ちた小さなミュージカルを観ているよう。詩や曲に頼らず、聴く者に映像を浮かばせる表現力。これぞ淳子の真髄です。
 逆に言えば、もっともっと楽曲が素晴らしければ、きっと最高のアルバムになっていた気もするのだけど…。あ、誤解のないように補足しときますが、このアルバムは当時、淳子の後輩である松田聖子に書いた一連の楽曲で一躍ヒットメーカーになった小田裕一郎さんが中心になっていて、いい曲が多いです。

 そしてそして、ワタシが淳子のアルバムで最高の出来栄えと思っているのが、81年11月の「 My Dear+7(紙ジャケット仕様) 」。
 A面に針を落とした途端始まる、淳子のモノローグ「私は臆病者」。コレにはヤられました。ワタシがアッコちゃんファンってのも大きいのかもしれないけど。しかしですね、あの魔の矢野顕子ワールドをアッコちゃんに侵食されずに歌っているというのは、相当な実力と才能がないとできないこと。A面全曲がアッコちゃんでして、YMOワールドツアーを連想してしまう上海チックなテクノバラード「刹那Tic」も素晴らしい仕上がりです。
 一方、B面は全曲小田裕一郎さんで、紫のレオタードでノリにノッてたテクノ歌謡「ミスティー」や、先行シングルにして西田敏行との素敵なダンスを思い出す三分音楽劇「This Is a "Boogie"」といったおなじみの名曲に加え、久々の自作詩も収録。
 忘れてはならないのが、大村雅朗さんのアレンジ。個性的な両面にトータル性を持たせたその手腕には、今さらながら脱帽。そして、もういらっしゃらないことをつくづく残念に思います。

 結局、歌の方は聖子に譲るとか何とかで、女優メインになってしまった淳子。またまたブランクが空き、83年9月に出された「 ナチュラリー+4(紙ジャケット仕様) 」がラストとなりました。
 もうラストにすることは決めていたんでしょうか、デビューと同じくフィナーレにも阿久さんを起用。ワタシは小椋佳作品ではなく、阿久さんの手がけた方をシングルとして切った方が良かったのでは、なんて今でも思っています。

 その後、たゆまぬ努力(淳子にとっては当たり前のことだけど)を重ね、大女優への階段を上り、酷評してた人も詫びるほどの演技を見せていったのはご存じの通り。そして、表舞台から姿が消されてしまったことも。

 淳子のことを振り返るだに、いろんな思いが渦巻きますが、ワタシはコレを機に、日本が誇るエンターティナー・桜田淳子の実力と才能がきちんと正当に評価されることを願っております。

 とゆーか、ホントは、今の淳子が歌う「うた」を聴きたい。もう十二分にさまざまな悲哀を味わったであろう、あの魂が奏でるシャンソンを。そしてその、真のうたごころを。

(2007.7.25)


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