黄金の酒井政利70'sヒットを、お洒落なインストで!
CBS・ソニーと言えば酒井政利さん。
確かにそういう時代がありましたし、「市ヶ谷のビルは酒井御殿」という例えや、大賀典雄ソニー元名誉会長の「ソニー・ミュージックエンタテインメント最大の功労者」という賛辞の通り、素晴らしい実績を残されたプロデューサーでいらっしゃったことに異論を唱える人はいないでしょう。
ワタシは幼児期から酒井さんが生み出したレコードに育てられたと言っても過言ではありませんし、ナウなヤングポップスの名レーベルだったCBS・ソニー邦楽部門とともに青春時代を過ごした方々も相当数に上るはずです。
そんな酒井さんも昨年、コロムビア時代から数えて45周年を迎え、文化庁長官表彰をお受けになったのは記憶に新しいところ。
来年には70歳におなりになるそうで、ちょっと感慨深いものがあります。
そこに今回のトリビュート企画「 Golden Years S1970~酒井政利プロデュース作品集 」のリリース。
と言ってもヒット曲のオムニバスやカバー集ではありません。スウェーデンのピアニスト、カール・オルジェが、70年代に酒井さんが手がけた名曲を、ジャズ、クラシックの精鋭たちとセッションしたというインストアルバムなのです。
当然、ストックホルム録音。ということで復刻盤ではありませんが、ご紹介します。ワタシ、筒美先生のトリビュート盤「 the popular music ~筒美京平トリビュート~ 」はなんとなくスルーしてしまったのですが、コレは即買いしなきゃ。
チョイスされました曲は、酒井さんいわく長女・南沙織の「17才」「色づく街」、長男・郷ひろみの「よろしく哀愁」「2億4千万の瞳」、次女・百恵ちゃん「ひと夏の経験」「いい日旅立ち」、酒井クリーニング店の代表作「雨がやんだら」「魅せられて」、タヒチでヒントを得たという永ちゃん「時間よ止まれ」、解散秒読みのキャンディーズを任された「微笑がえし」、寺山修司、上村一夫といった鬼才との出会いから生まれたカルメン・マキ「時には母のない子のように」や大信田礼子「同棲時代」、ワタシ的にはひろみのADだった金子さんの印象がある久保田早紀の「異邦人」、桃井さんと来生さんの異色デュエット「ねじれたハートで」までの14曲。
これらの名曲が、ストリングスの効いた美しいアレンジによる新解釈で聴けるというのですから、期待は高まる一方ですよね。
大衆の心理を掌握しながらも、本物、一流志向で品位を大切にしてらしたはずだし、ワタシはそういう酒井さんが好きだったのに、近年ではワイドショーでのコメントが低俗な論争に発展してしまったり、話題性のみのプロデュースをされたり、悪名高きゴシップ誌でいつの間にか連載を持たれたり、近況やいろんな裏話を伺うにつけ、個人的には残念な思いでいました。
はなはだ僭越ではございますが、これ機に音楽プロデュースの方でも、酒井さん特有の感覚を生かして、もうひと花もふた花も咲かせていただきたいものです。
何だかんだ言いましたけど、素晴らしいレコードを届けていただいたことへのご恩は、CBS・ソニーへの感謝とともに、一生忘れることはありませんから。
あ、ワタシが望むのは、新しいアーティストの発掘ではなく、やはり篠山さんちの奥さまの新作です。
(2007.6.20)