ワーナー時代の紙ジャケ復刻、オリアル第2弾！

　香港でのデビュー50周年、日本でのデビュー50周年目に突入するタイミングで始まった、アグネス・チャンのワーナー・パイオニア時代のアルバム復刻。
 
　今回のシリーズはブリッジからの紙ジャケ復刻ということで、まず5月にライブアルバム３タイトル（ こちらで紹介）、続いて6月にはオリジナルアルバム３タイトル（ こちらで紹介）がリリース。
　その後もオリアルは毎月発売されるとのことでしたが、第2弾3タイトルの続報が途絶えていたので心配していましたら、7月のリリースは延期となっていた模様。このほど、ようやく正式にアナウンスされ、ホッとしております。
 
　今回、オリアル第2弾として8月にリリースされるのは、74年から75年にかけての3タイトル「 アグネスの小さな日記 (+7)」「 あなたとわたしのコンサート (+9)」「 小さな恋のおはなし (+7)」。
　それまでのシングル曲とカバーの寄せ集め的なアルバムから、コンセプトに基づく正真正銘のオリジナルアルバム制作へとシフトしたアグネス。特に頭の2枚は、より丁寧に作られた名作となっています。
　ちなみに、3タイトルとも既にCD化済みで、うち2枚は3度目の復刻。それゆえレア度は低いですが、既発盤はスリムケースやBOX内のジュエルケースでしたから、ファン心理としては、統一された紙ジャケでコレクションしておきたいところです。
 
　まずは、74年３月リリースの「 アグネスの小さな日記 (+7)」。当時、月刊「明星」で連載されていた「アグネス・チャンの小さな日記」をモチーフにした、私小説的なアルバムです。チャーミングなイラストのみならず、歌詞カードもアグネスが頑張って手書きしていて、ホント日記のような構成なんですよね。
　最新シングル「星に願いを」も入ってはいますが、愛鳥のことを歌った「トゥインキー」や、日本に来て初めて雪を見て感動した思いが込められた「雪」、慣れてきた日本語で初めて自作した「さよならの唄」など、アグネスの日常や思いを歌にした曲がならび、フォークのシンガー･ソングライターさながらのアルバムといった印象です。
　作家陣は、アグネスのデビューからシングルを書いてきた山上路夫＋森田公一、安井かずみ＋平尾昌晃、松山猛＋加藤和彦というコンビが中心ですが、注目は歌謡界に進出したばかりの松本隆さんの参加。
　演奏はワーナー・ポップス・オーケストラがメインではありますが、4曲のバッキングは松本さんゆかりの細野晴臣、林立夫、松任谷正隆、鈴木茂というキャラメル・ママが担当。サウンドもヘッドアレンジのスタイルを導入し、アイドル歌謡曲のジャンルでは革新的で記念碑的なアルバムとして珍重され、今日に至るまで再評価が続いているのはご存じの通りです。
　その象徴となっているのが、次のシングルとしてリアレンジの上カットされる「ポケットいっぱいの秘密」。松本さんお得意の秘密というかギミックも挿入され、一部には松本さんが魂を売ったと評されたことでも知られるナンバーですが、牧歌的なカントリーのイメージは当時のアグネスにぴったりで、アグネスの志向であったお友だち（ファン）に向け音楽仲間たちと楽しく創り上げたアルバムという点においても代表曲といえるでしょう。
　松本さんの作詞では、ほかに、コンサートでもムーンライダーズとともにバッキングを担当した鈴木あきこ（矢野顕子）のピアノが聴ける「想い出の散歩道」なども収録されており、各ミュージシャンのファンをはじめ多方面のコレクター蒐集対象のアルバムとなっています。
　ちなみにアッコちゃんは後年に「想い出の散歩道」をピアノ弾き語りでレコーディングしていますし、ソロデビュー後にはシングルB面で「妖精の詩」もカバー。そういえば、あの名曲「ひとつだけ」もアグネスへの提供曲なんですよね。
 
　続く「 あなたとわたしのコンサート (+9)」は74年８月リリース。件の「ポケットいっぱいの秘密」のシングルバージョンを収録、わずかデビュー2年目で、天地真理に取って代わるように国民的アイドルへと羽ばたいた魅力が満載のアルバムです。
　前作に続きキャラメル・ママから改称したティン・パン・アレーを中心に、高橋幸宏や矢野誠＆鈴木あきこらが参加していますが、アグネスのハイトーンもここが最高到達点ではかったかと思えるほど。
　個人的には今回の3枚で最もオススメで、オーケストラの調音から始まる松山猛＋加藤和彦作品「二人だけのコンサート」の名曲ぶりといったらどうでしょう。　
　次のシングルとしてリカットされる「美しい朝がきます」は、シングルとは異なるミディアムテンポで優しい雰囲気のオリジナルバージョンですが、そのB面にも入った「わたしのペンフレンド」が秀逸。穂口雄右さんのメロディーもカワユイですが、 鬼才・東海林修さんのアレンジが最高です。
　他に、ナベプロの後輩・石川ひとみもカバーした「海より青い瞳」、松本さんの少女趣味が早くも極まったといいますか、アイドル・アグネスのパブリックイメージであろう声質と歌い方を最大限に生かした「アップル・パイのラブレター」、同じく松本さんのお家芸である心象風景の描写が光る人気曲「雨模様」などなど、少女漫画的な風味も加わり、よりポップでバラエティーに富んだ仕上がりとなっています。
 
　ちなみに、これら2枚は95年にCD選書として復刻。入手困難になってからはダウンロード配信されていたにもかかわらず、OMFのBOX「アグネス・チャン プレミアム」（ こちらで紹介）で再CD化されるまではビックリするほどのプレミアが付いていましたっけ。さすが、ティンパン関連のアルバムですよね。
 
　そして今回のラストを飾るのは75年４月発売、「愛の迷い子／まごころ」「恋人たちの午後／ほほえみ」という2枚のヒットシングルをフィーチャーした「 小さな恋のおはなし (+7)」。
　ベストセラーを記録した同名のイラスト詩集や、同時期の東宝チャンピオンまつり（メインは「メカゴジラの逆襲」でした）で上映された短編映画「アグネスからの贈りもの」とメディアミックス。自作の詩の朗読がちりばめられた企画盤となっています。
　であるからして、前2枚に比べると内容は一歩後退した感じで、シングル曲以外は松本隆＋森田公一による書き下ろしフォルクローレ風歌謡「愛の十字路」が収録されているものの、ほとんどがカバー。井上陽水「心もよう」、トワ・エ・モワ「初恋の人に似ている」、ＮＳＰの「夕暮れ時はさびしそう」、高木麻早「ひとりぼっちの部屋」、中村雅俊「ふれあい」、荒木一郎「空に星があるように」と新旧のフォークを歌っています。　
　とはいえフォークはアグネス本来の志向でもありますし、フォークブームのピークに合わせた、トレンディーなアルバムという評価もできましょう。
 
　というオリアル第２弾の3タイトル。アグネス自身の素材の良さはもとより、後に日本の音楽を変える若手ミュージシャンのサポートもあった奇跡的なアルバム群ですが、それを支えたのは木崎賢治プロデューサーや細井虎雄ディレクターら、やっぱり才能あるスタッフであることに疑いの余地はありません。いかにアグネスが恵まれていたかを実感できるアルバムと言えるでしょう。
 
　なお、このシリーズは当時の封入物がミニチュアで復刻されているほか、音源も2021年の最新リマスタリングで、たくさんのボートラ付きという充実ぶり。
　今回のボートラは、ガイドメロディー入りやオリジナルのカラオケのほか、アルバム未収録のシングル曲や、歌詞やアレンジの異なる未発表バージョン（といっても、2012年のBOX「Always Agnes ～アグネス・チャン・ワーナー・イヤーズ・コレクション 1972-1978～」＝ こちらで紹介＝で初CD化済み）も収録されるそうです。
  
　こうも続いてきますと次の3タイトルにも期待が募りますが、アグネス本人のブログ情報によりますと、なんとこの復刻シリーズは、SMS時代のアルバムにも及ぶとのこと！
 
　SMS時代は、アグネスmeetsゴダイゴの「不思議の国のアグネス AGNES IN WONDERLAND」（ こちらで紹介）やシングルコンプリート「アグネス・チャン／ゴールデン☆ベスト～SMSイヤーズ・コンプリート・ABシングルス」（ こちらで紹介）のほかは、ベスト盤やBOXでアルバム曲の一部がCD化されていただけなので、ファンにとってはワーナー時代より喜ばしいものになりそう。
　アグネスmeetsゴダイゴの子ども向け企画盤や、ハーフベストのおまけソノシート音源なども網羅され、ナベプロ時代コンプリートになることを祈っております！