ナツメロ喫茶店/オススメ復刻盤445

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  ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#445

アグネス・チャン プレミアム

(2011.11.25発売、DQCL-281、¥20,000)  *オーダーメイドファクトリーで条件をクリア、商品化が決定しました!

OMFに、アグネス初期の名盤アルバムBOXが登場!

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 これはもう我熱烈歓迎ですネ! ついに企画されたアグネスのアルバムBOX「 アグネス・チャン プレミアム icon 」。
 ナベプロ枠とでも言うべきでしょうか、このたびなんとオーダーメイドファクトリーの候補に挙がったのデス。きっと大喜びしてしまう方は多いに違いありません。

 平尾昌晃さんに見出され、“香港から来た真珠”という何ともスゴイキャッチフレーズを引っさげて、アグネス・チャンがデビューしたのは1972年11月25日。
 ナベプロ出資のレコード会社、ワーナー・パイオニアから出たデビュー曲「ひなげしの花」は、たちまち大ヒットを記録。パンダブームとも相まって、その妖精のような歌声と容姿で子どもからオトナまでをトリコにし、瞬く間にトップアイドルの座を射止めたことは今さら言うまでもありませんよネ。

 香港ではジョニ・ミッチェルのカバー「サークル・ゲーム」を歌って人気者になったアグネスですから、本人の志向はフォーク。渡辺音楽出版の木崎賢治ディレクターをはじめとするスタッフにも恵まれ、シングルはもちろん良質なアルバム作りを続けていきました。
 76年の衝撃的な引退劇を経ても、契約消化でコンスタントに新作をレコーディングし続けていましたし、78年の正式カムバック後はもちろん、近年に演歌へと転向してからも、たくさんのアルバムを発表していますが、今回のボックスでは、ファーストアルバムから順番に、8タイトル全10枚のアルバム(すべて日本盤)が復刻されるそうです。

 アグネスのBOXはシングルAB面が完全収録された通販ボックスが2002年に出ていましたけど、真骨頂はやっぱりアルバム。
 昨年はアグネスmeetsゴダイゴの「不思議の国のアグネス」(こちらで紹介)がCD化され狂喜乱舞しただけに、この企画もぜひとも成功していただきたいと思っているワタシです。
 誕生日も同じだし、デビュー以来のファンであり、音楽的影響を最も受けたアイドルでもありますので、やっぱり順を追って簡単にご紹介しましょう。

 まずは、97年の紙ジャケに続き今回で2度目のCD化となるデビューアルバムの「ひなげしの花」。
 シングル「ひなげしの花/初恋」以外はすべてカバー曲で、いきなりの人気にあやかった即席盤(リリースはデビューから2カ月後の73年1月)のイメージもありますが、とにかくフレッシュな魅力がいっぱいです。
 最初は日本語がまったくできず、木崎さんがローマ字で書いた歌詞をそのまま発音していたというアグネス。日本語カバーではフォークがメインで、森山良子の「遠い遠いあの野原」「この広い野原いっぱい」やナベプロの先輩であるトワ・エ・モワ「或る日突然」「誰もいない海」などを歌っていますが、「遠い遠いあの野原」なんて、逆に意味の分からない異国の言葉で歌っているからこその歌心や、故郷を思う郷愁が痛いほど伝わってきます。
 注目したいのは、同じナベプロで、元々はフォーク志向だった天地真理の「水色の恋 」。アグネスは、この真理ちゃんの後をぴったりと追い、1年も経たないうちに国民的人気のトップアイドルへと上り詰めていきます。それも、真理ちゃんに取って代わるように…。そういう意図はなかったにせよ、後の運命を考えれば興味深い選曲と言えましょう。
 得意の英語曲もグー。香港でのデビュー曲「サークル・ゲーム」の再録をはじめ、カーペンターズの「スーパースター」など、日本でもおなじみの洋楽をチョイスしていますが、この中ではリン・アンダーソンの「ローズ・ガーデン」を取り上げたことで南沙織を意識しているようにも思えて、それも一興です。アメリカンスクール、上智大と、学年は違えどシンシアとも交流が深くなるアグネスだけに。

 次はトノバン作曲の第2弾シングルにして超名曲「妖精の詩/いじわる雨の日曜日」をメインにした73年5月のセカンド「花のように星のように」。安直にシングルをそのまま使わなかったタイトルも味わい深いですし、メイクの濃いジャケットにも注目ですね。
 A面が「ひなげしの花/初恋」の再収録を含むオリジナルと、日本のフォークを中心にしたカバーですが、全曲日本語という点も見逃せません。
 タイガースの「花の首飾り」にちょい違和感があるものの、ベッツィ&クリス「白い色は恋人の色」、シモンズ「恋人もいないのに」、チェリッシュ「ひまわりの小径」など、とっても爽やかな名唱が楽しめます。出色は、香港時代から歌っていたという「思い出のグリーン・グラス 」でしょうか。
 ところで、アグネスの初期のアルバム曲のアレンジャーって、森岡賢一郎さんや竜崎孝路さんらナベプロ系と呼べる歌謡曲寄りの先生がメインなのですが、皆さん、ルミ子や真理ちゃんの時とは違って、とってもオシャレでポップ。カバー曲でもオリジナルなアレンジがとても素敵です。
 個人的には東海林修さんの起用が素晴らしいなと思っていますが、そういう部分もアグネスのアルバムが当時の他のアイドルと比べ傑出していた要因ではないかと思っています。

 そして、73年8月のサードアルバム「草原の輝き」。非の打ち所のないタイトル曲は、みんなマネして十字を切った初期の代表作です。
 ビザの書き換えや芸能活動のため、しょっちゅう帰国していたせいでレコーディングの時間がとれなかったのか、当時のアイドルのLPという概念を鑑みても再収録の多いアグネス。
 ここでも、シングル「草原の輝き/山鳩」はおいといても、先のシングル「ひなげしの花」「妖精の詩」「遠い遠いあの野原」「白い色は恋人の色」「サークル・ゲーム」が再収録となり、ハーフベストと言ってもいい内容です。
 でも、ジャケットも含めトータル的にとても聴きやすい構成だと思いますし、なんと自作曲「You’re 21, I am 16」も入っています。
 前に書いたこともありますがカーリー・サイモンのカバー「うつろな愛」はイチオシですし、竜崎孝路さんによる「トップ・オブ・ザ・ワールド」の独自のアレンジもオススメです。

 73年の新人賞を総ナメにし、CMにもたくさん出演した上、73年組のトップを切って紅白にも初出場。看板番組「ハーイ!アグネス」を持つなど、トップアイドルの座を不動のものにするアグネスですが、その勢いはレコードでも同じです。
 73年11月リリースの2枚組ライブ盤「Flower Coccert」は、小柳ルミ子、朱里エイコらと同じデザインのジャケットで分かる通り、ワーナー・パイオニアの年末企画。録音は9月、青山草月会館での実況録音で、チッチとサリーのイメージも漂うアグネス唯一のオリコンNo.1シングル「小さな恋の物語/ふたりの牧場」も発売前に披露しています。
 MCやギターの弾き語りなども聴きどころでしょうが、特筆すべきはやっぱり洋楽カバー。アルバムで取り上げていたナンバー以外にも、ドーンの「幸せの黄色いリボン」、ビージーズの「若葉のころ」、ニルソンの「ウィズ・アウト・ユー」など、香港でのレパートリー曲はアグネス独自の解釈(それはやはりあの声と歌い方によるところが大きい)がお見事です。

 というように、出すアルバムすべてをトップ10入りさせ、アイドルとしてはハイレベルなセールスを記録したアグネス。これは子どもだけでなく、何より洋楽志向の高校生、大学生をガッチリつかんだのも大きかったのではないかと思います。

 そのへんを意識したのかしないのか、翌74年からのアグネスのアルバムはより丁寧に作られ、ある意味、日本のポップスの金字塔と言えそう。
 そのスタートが、自筆のイラストも秀逸な74年3月の「アグネスの小さな日記」です。
 大好きなヒット曲「星に願いを」を含んではいますし、メイン作家の森田公一さんの曲もけっこう入っていますが、バッキングのメインはキャラメル・ママが担当。一部では松本隆さんが魂を売ったアルバムとしてもおなじみですし、バックバンドでピアノを担当してた鈴木あきこ(矢野顕子)が後にカバーする「想い出の散歩道」も収録(アッコちゃんは「妖精の詩」もカバー)と、アグネスファン以外にも大人気のアルバムとなっています。
 95年にCD選書が発売されていましたが、入手困難になってからは、ビックリするほどのプレミアが付いている貴重盤。
 3カ月後にシングルカットされる「ポケットいっぱいの秘密」はよりキャラメル・ママらしいカントリー度の高いオリジナルバージョンで収められていますし、アグネスの愛鳥を歌った「TWINKY」や、日本で初めて雪を見た日の感動を歌った「雪」など、アグネスの初期を支えた松山猛+加藤和彦コンビによる私小説的な世界も味わい深いです。
 アグネス自身の素材の良さももちろんですが、木崎プロデューサーやディレクターの細井虎雄さんら、やっぱり才能あるスタッフに囲まれていたことを実感できるアルバムと言えるでしょう。

 そして個人的にこのボックスでは最も好きなのが、74年8月の「あなたとわたしのコンサート」。
 オーケストラの調音から始まる「二人だけのコンサート」の名曲さといったらどうでしょう。松山猛+加藤和彦コンビも極まっていますし、アグネスの声もここが最高地点ではないかと思います。
 シングルカットされたバージョンとは異なる「美しい朝がきます」もミディアムの優しい雰囲気ですけど、そのB面にも入った「わたしのペンフレンド」が秀逸。穂口雄右さんのメロディーもカワユイですが、 東海林修さんのアレンジが最高です。
 他に、ナベプロの後輩・石川ひとみもカバーした「海より青い瞳」、アイドル・アグネスのパブリックイメージであろう声質と歌い方を最大限に生かした「アップル・パイのラブレター」などなど、少女漫画風味も加わり、バラエティーに富んだ仕上がりとなっています。
 これもバックには細野晴臣、林立夫、松任谷正隆、鈴木茂のティン・パン・アレー(キャラメル・ママ)を中心に、高橋幸宏や矢野誠&鈴木あきこらが参加しています。

 なお、今回は、なぜか2枚組ベストアルバム「あなたにありがとう」もラインアップに入っていますけど、これはシングルバージョンの「美しい朝がきます」が入っているせいでしょうか? それとも…。

 そしてこのボックスのラストを飾るのは、75年4月に出た「小さな恋のおはなし」。
 自作の詩の朗読をちりばめ、ヒットシングル「愛の迷い子/まごころ」「恋人たちの午後/ほほえみ」をフィーチャーしたアルバムです。イラスト詩集「小さな恋のおはなし」や、東宝チャンピオンまつりで上映された短編映画「アグネスからの贈りもの」とメディアミックスした企画盤のような雰囲気もありますね。
 内容もそんな感じで一歩後退、シングルとナレーション以外はほとんどがカバー。井上陽水「心もよう」、トワ・エ・モワ「初恋の人に似ている」、NSPの「夕暮れ時はさびしそう」、高木麻早「ひとりぼっちの部屋」、中村雅俊「ふれあい」、荒木一郎「空に星があるように」と新旧のフォークを歌っています。

 とこんな感じの内容となっていますが、アグネスの初期というと、やはり一方的な引退宣言が衝撃を与えた76年夏までだと思いますし、そうなればフォーク志向を強め、ハイ・ファイ・セットやシュガーベイブも参加した2枚組「はじめまして青春」や、アグネスとムーンライダース、そしてアッコちゃんたちが総力を結集した76年の最高傑作「Mei Mei いつでも夢を」までというのが、ファン目線のくくりですよね。

 いずれもCD選書で出ていましたが、入手できなかったファンの方もかなりいらっしゃるでしょうし、ムーンライダースのファンにも再CD化を望んでいる人も多いでしょう。
 個人的にも「Mei Mei いつでも夢を」は、日本のポップス史上に残る名作だと思いますし、CDを買い損ねた人にも聴いていただきたいですし、やはりこれをぜひとも実現させ「アグネス・チャン プレミアムVol.2」が企画されるよう願いたいと思います! 皆さんもぜひぜひご協力ください。

(2010.8.4)


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