太田裕美提供作を含む2nd、30年ぶりの再発！

　1988年。太田裕美ファンにとっては、耳を疑うような声質とファルセットでEPIC・ソニーから颯爽とデビューした遊佐未森さん。
　フタを開ければプロデュースが太田さんの夫君でいらっしゃる福岡智彦（当時は知彦名義）さんで、太田さんも楽曲を書き下ろしていたことに二度ビックリしたことを思い出しますが、彼女の出世作といえば、翌89年に日清カップヌードルCMソングとしてスマッシュヒットした「地図をください」。
 
　それから33年、その曲のリカット元のセカンドアルバム「空耳の丘」が、CD「 空耳の丘」と初のアナログ盤「 空耳の丘＜完全生産限定盤＞ 」の2形態で復刻されることになりました！
 
　遊佐さんのEPIC時代のアルバム復刻といいますと、2006年に初期の5作品が再発された後、10年に後期の4作品がシングルベスト「 Do-Re-Mimo the singles collection」（ こちらで紹介）と同時発売で再発されていますが、なぜかこのアルバムだけは対象外。
　であるからして、CDの再発は91年の廉価盤（といっても2,800円でしたが…）以来30年ぶり、アナログ盤に至っては初めてのリリースとなるんですよね。
　ファンにとっては待ちくたびれた感があるとは思いますが、初となるリマスター音源ですし、CDにはボートラとしてオープニング＆クロージング曲のフルバージョン「空耳の丘 (legendary complete version)」も収録と、待った甲斐がある復刻となっています。
 
　ちなみにアナログ盤は、かのバーニー・グランドマン御大のカッティング。デザインはオリジナルデザイナーが担当されるそうで、オリジナルCD初回盤の凝ったデジパック仕様には及ばないでしょうが、ダブルジャケット仕様でLPサイズのブックレットを封入と、パッケージ的にも相当手の込んだものになりそうです。
 
　さて、遊佐さんといえば、ボーカルの透明感から癒し系の筆頭に挙がったり、はたまた少年のような少女のイメージからメルヘンファンタジーを通り越してヘンテコ不思議ちゃん的なとらえ方をされたり、メイン作詞家となる工藤順子さん独特の詞世界とともにとらえどころのないアーティストイメージもあったように思いますが、このアルバムはあの世界観を確立させた外間隆史さんが本格的にサウンドプロデュースした1枚。
　例えるなら、一見、性差のない少年少女が住む無限に広がる幻想の世界のように見えるけれど、実は囲いのある牧場のようであり、そこで口にする泉の水には良薬と表裏一体の毒がある…そんなユサミモリ・ワールドが確立した記念碑的アルバムといえるでしょう。
 
　そういう意味では、太田裕美作詞作曲のバラード「夢のひと」は継子的な感じもしますが、サウンド的にタイトなドラムがビシバシ響くこのアルバムにあって、太田さんの提供作はいいクッションになっている感じ。太田さん自身にとっても、後のシングル「Virginからはじめよう」へと連なる作風のものといえそうです。
 
　というワケで、太田裕美ファンもぜひ必聴の1枚。そのほかの提供作は「 瞳水晶」に「花ざんげ」（初出はデビューシングルB面）、「 ハルモニオデオン」に「空色の帽子」が収録されていますので、興味がおありの皆さんはそれぞれのアルバムをどうぞ。
　ただし、遊佐さんの場合はブレーメンの音楽隊みたいな楽しい響きにつられてついていったはいいけど、ふと我に返ったら実はハーメルンの笛吹きだった、というような怖い思いをするかもしれませんので、そのへんは覚悟してお聴きください。
 
　なお、遊佐さんはもちろん現役バリバリで、先月にはニューアルバム「潮騒」（初回盤「 潮騒 ［CD+Blu-ray Disc］＜初回盤＞」／通常盤「 潮騒＜通常盤＞」）を発表。なんと外間さんと17年ぶりに制作したとのことで、併せて聴きたいものです。