筒美先生の1周忌に、待望のセレクト集！

　シングル総売り上げ日本一の作曲家、筒美京平先生が昨年10月7日にお亡くなりになってから、はや1年が経とうとしています。
　逝去後は、さまざまなメディアで特集が組まれ、あらためてその功績と偉大さが広く再認識され、若いアーティストによるトリビュートアルバムも含め、世代を超えた再評価が一層高まったのはご存じの通り。
 
　4月には、オリジナルアーティストが中心となった「～筒美京平 オフィシャル・トリビュート・プロジェクト～ ザ・ヒット・ソング・メーカー 筒美京平の世界 in コンサート」が東京国際フォーラムで開催され、大盛況となったことも記憶に新しいところです（WOWOWで10/3（日）17:00〜放送決定！）。
　幸運にも２日間とも参加できましたが、まさに綺羅星のごとく輝くスターたちによる歌唱と、ダイナミックかつ繊細な船山基紀とザ・ヒット・ソング・メーカーズの演奏は圧巻のひとこと。コロナ禍を忘れるほど、うっとり夢見心地のひとときを過ごし、筒美メロディーを聴いて育ってこられた幸運に心から感謝したことでした。
 
　さて、追悼盤としては、コロムビア、ソニー、ビクター、ユニバーサルというレコード会社４社と、ゆかりの音楽出版社・日音、そして筒美音楽事務所の共同企画として「筒美京平 TOP 10 HITS」4タイトル（ こちらで紹介）がリリース。
　あくまでシングル盤をヒットさせることが最大の使命であり目的であった筒美先生の信条に寄り添った内容につき、ベストテン入りしたヒット曲を集めたベスト中のベストという構成でしたが、これまでアンソロジーがたくさん編まれてきましたし、レア音源を求めてやまないフリークやコレクターの皆さんの中には食指が動かないという方も多かったのは事実です。
 
　ということで、今回はその続編として、レア音源も含んだ裏ワザ的セレクションアルバム4タイトル「 筒美京平 マイ・コレクション タブレット純」「 筒美京平 マイ・コレクション クリス松村」「 筒美京平 マイ・コレクション 半田健人」「 筒美京平 マイ・コレクション スージー鈴木」が登場することになりました！
　選者は、前回の各盤のライナーノーツを担当したタブレット純（コロムビア）、クリス松村（ソニー）、半田健人（ビクター）、スージー鈴木（ユニバーサル）という著名人各氏が担当。
　それぞれ思い入れのある筒美作品20曲がセレクトされているとのことですが、一癖も二癖もある各氏ですから四者四様、各盤個性が押し出された選曲となる模様。大ヒット曲を集めた「筒美京平 TOP 10 HITS」との重複はないということですから、マニアックなナンバーもしっかり入っているようです。
　クリス松村（ソニー）盤以外はまだ詳細が発表されていませんが、初CD化となるナンバーや入手困難となっているレア音源が収録されるかどうかが気になるところ。
 
　ちなみに、全貌が明らかになっているクリスさんの選曲はディスコチューン中心。核となるのは、郷ひろみの筒美ヒット曲メドレー「マイ・コレクション」だと思いますが、これは81年の同名ベスト盤に収録されていた20曲メドレー「HIROMIコレクション20」から筒美作品を抜粋したON AIR編バージョンで、当初はプロモーションレコードのみに入っていたもの。翌82年のシングル「哀愁のカサブランカ」のB面に収録される際、このタイトルに変更の上初商品化されています。
　目玉は、松本隆さんとの記念すべき初コンビとなる桑原一郎「谷間の百合」の初CD化と、東京タワーのイメージVGサントラに収録されていたCindyの「Touch The Sky」、入手困難が長らく続いていた麗美「恋する時間」あたりでしょうか。
　太田裕美「トライアングル・ラブ」、南沙織「シンプル・シティー」といったアルバム曲や西城秀樹「IF (イフ)」といったシングルB面もふんだんに選曲されるなど、CBS・ソニー、RCA、ファンハウスといったソニー音源を中心に、さすがのセレクトです。
　個人的には、企画の趣旨は違えどソニー盤は2012年の「筒美京平 GOLDEN HITSTORY」が発売中止になった分、もっとレア曲を入れてほしかったというのが正直なところ。例えば石井明美（今回は豊島たづみのカバー「もう海へなんか行かない」）なら、唯一の未CD化曲「やさしい人」（大橋純子のカバー）とか、また別の機会に日の目を浴びる事を切望しております…。
 
　一方、タブレット純さんの選曲は、現在のリストを見る限りではお得意のムード歌謡やGSがメインの印象。
　ジャッキー吉川とブルー・コメッツ「涙の糸」 、「また逢う日まで」の元歌として知られるズー・ニー・ヴー「ひとりの悲しみ」、島倉千代子「捧げる愛は」といったコロムビア作品から、黒沢明とロス・プリモス「ヘッド・ライト」、オックス「ガール・フレンド」、チコとビーグルス「新宿マドモアゼル」といったビクター作品、当時はビクターだったフィリップスのザ・ジャガーズ「マドモアゼル・ブルース」など、ヒットメーカーになる前、初期の筒美作品の名曲がセレクトされています。
 
　スージー鈴木さんの選曲で明かされているのは3曲で、総立ちの女王との久々かつポップなコラボが話題となった山下久美子「TOKYO FANTASIA」、ブレイク曲の次作にやたら力が入るという筒美先生のセオリーを証明する早見優「渚のライオン」、筒美先生の秘蔵っ子ならでは、ギター小僧のフュージョンの夢を叶えさせてもらった野口五郎「女になって出直せよ」。
 
　と、これだけでも各人の選曲眼が際立っていることを証明しているようです。前回は4タイトル同時購入特典としてチケットホルダーがもらえましたが、今回はどうなることでしょう（Amazonでは単品で メガジャケ付き盤も）。
 
　こういうセレクションを聴いていたら、自分ならではのマイ・コレクションが作りたくなるもの。
　そのためにも多くの筒美ナンバーを網羅しておきたいという方は、現在入手可能なものの中では「筒美京平Hitstory Ultimate Collection 1967～1997 2013Edition」（ こちらで紹介）がオススメ。
　97年の30周年記念で出たLPサイズ２BOX「筒美京平HITSTORY」を1組にまとめた上、その後の15年間のナンバーも入れてグレードアップしたBOXですので、筒美先生の軌跡がざっくりカバーできること請け合いです。
 
　レア曲も掘り下げてみたいという方は、今や入手困難になりましたが2012年の45周年時に出たメーカー6社による「筒美京平作品集 GOLDEN HITSTORY」シリーズ6タイトル（ こちらで紹介）や、2018年の50周年時の高護さんの企画監修による「筒美京平自選作品集 50th Anniversaryアーカイヴス」3タイトル（ こちらで紹介）をどうぞ。 大ヒット曲にまじって貴重なナンバーが放り込まれていますからね。
 
　なお、8月にはかの近田春夫さんによる筒美本「 筒美京平 大ヒットメーカーの秘密」も出るそうですし、先生への思慕は強まるばかり。ずれにしても、筒美作品にはまだまだ多くの未CD化曲が残っておりますので、１曲残らず復刻されることを願ってやみません！