スタンダードなご当地ソングコンピ、厳選41曲の2枚組!
今年のお盆休みも駅や空港は帰省や旅行の人で混み合っておりましたが、局地的な大雨などに見舞われた地域も多々あって、途中で足止めをくらうケースも少なくなったようです。
飛行機や新幹線に限らず電車やバス、マイカーを含め、いつも当たり前に移動できていることが実は当たり前でないことに気づき、あらためてそのありがたさを実感する次第ですが、交通情報で各地の地名を目や耳にするたび、その土地土地のご当地ソングを思い出してつい口ずさんでしまったり。お盆には、そんな習性にも気づかされるんですよね。
同様の人は意外に少なくないんじゃないかと思っていますが、ちょうど来月に出ますのがそんなご当地ソングを集めたコンピ盤「 心に響くご当地ソング 」。
昭和歌謡を中心に、さまざまなジャンルからスタンダードなご当地ソングを厳選。全41曲をギッシリ詰め込んだ2枚組でのリリースです。
北は北海道、お登紀さんの「知床旅情」やたくろう「襟裳岬」、布施さんの「霧の摩周湖」から、南は九州、クール・ファイブの「長崎は今日も雨だった」やグレープの「精霊流し」まで。全国津津浦浦のご当地ソングが満載ですが、多いのはやっぱり東京と神奈川。
東京は、「新宿の女」(藤圭子)、「銀座の恋の物語」(舘ひろしのリメイク版)といったネオンきらめく盛り場から、銭湯に安アパートの「神田川 」(かぐや姫)に、葛飾柴又「男はつらいよ」(渥美清)や「矢切の渡し」(細川たかし)といった風情ある下町までを網羅していますが、「ウナ・セラ・ディ東京」(ザ・ピーナッツ)に象徴されるような、哀愁漂うナンバーが都会的な証しという感じもします。
その証拠に、夢破れる地方人たちの「東京」(マイ・ペース)やコンクリートジャングル的無情感の「東京砂漠」(内山田洋とクール・ファイブ)は言わずもがな、都会派のシティミュージックに至っても「東京ららばい」(中原理恵)のような屈折したご当地ソングが多いみたい。ハイ・ファイ・セットによるユーミンのTOKYOシティミュージック「中央フリーウェイ」は例外ですがね。
一方、神奈川は、「ブルー・ライト・ヨコハマ」(いしだあゆみ)や「よこはまたそがれ」(五木ひろし)に代表されるように、ご当地ソングのメッカといえる横浜をはじめ、百恵ちゃんの私小説的世界「横須賀ストーリー」の横須賀、「縁切寺」(バンバン)の鎌倉と絵になる名所が多いですし、サザンの聖地・湘南を擁する県ですからね。
どれも粋で小洒落ておりますが、やはり「夏をあきらめて」(研ナオコ)、「恋人も濡れる街角」(中村雅俊)、「そんなヒロシに騙されて」(高田みづえ)のサザンナンバーが際立ってます。
関西のご当地ソングも数は多いのですが、大阪弁とかどうしてもコテコテなトーンが主流。しかし、ここでは「大阪で生まれた女」(BORO)や「悲しい色やね」(上田正樹)と、大阪弁がカッコよく響くうたがチョイスされております。
とはいえ、欧陽菲菲のデビュー曲「雨の御堂筋」をはじめ、前川さんの歌唱法が独特な「そして、神戸」や、外国人から見た日本情緒という感じのベンチャーズ歌謡「京都慕情」(渚ゆう子)など、関西のご当地ソングはやっぱりアクの強いナンバーが多いですよね。
地域傾向ということで言えば、東北は演歌でしょう。ここでも石川さゆり「津軽海峡冬景色」、「みちのくひとり旅」山本譲二、「北国の春」千昌夫がチョイスされています。
また、中国四国では、絵になるのは700を超える小島が浮かぶ瀬戸内。村下孝蔵「松山行フェリー」と小柳ルミ子「瀬戸の花嫁」と2曲の瀬戸内ソングが収録されています。
ほかにも都市間を移動する「京都から博多まで」(藤圭子)、全国行脚する「中の島ブルース」(内山田洋 と クール・ファイブ)や「港町ブルース」(森進一)などがありますが、こうして見るとこのCDに限らずご当地ソングの大ヒット曲って昭和40年代に多かったことに気づきます。
ちょうど列島改造で各地の風景が激変していった時代と重なりますが、やはり失われゆく風景へのノスタルジーという背景もあったのでしょうね。
そういう意味でも、ご当地ソングにはその土地にまつわるいろんな歴史や思いまでもが刻まれていると言えそう。ならば聞き継ぎ、歌い継ぐことは、個人の郷愁というレベルを超えてとても重要な意味を持つ行為ではないかと思ったりしています。
週末からのちょっと遅れた夏休みには、ご当地で「北の旅人」でも口ずさんできましょうか。
(2014.8.22)