オススメ復刻盤「アグネス・チャン/Always Agnes ~ワーナー・イヤーズ・コレクション 1972-78~」


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 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#557

アグネス・チャン/Always Agnes ~ワーナー・イヤーズ・コレクション 1972-78~

(2012.8.8発売、WPCL-11103〜7、¥14,800)  *5枚組CD-BOX

アグネス監修、市販初BOXはワーナー時代の5枚組!

 アグネス・チャンは1972年11月のデビューですから今年で40周年。記念企画といえば、OMF・ナベプロ音源復刻として企画された10枚組CD-BOX「アグネス・チャン プレミアム」(こちらで紹介)が思い浮かびますが、実はアレ、実現までに1年かかったため、後付けでタイミングを合わせた40周年企画だったのでした。

 ただし、未CD化を含む初期のオリジナルアルバムの復刻が実現したこと自体には大感謝なのですが、内容を吟味すると、なぜかダブリ曲ばかりのベストアルバムを数に入れているのにアルバム未収録のシングル曲がボートラになっていなかったり、正直、プレミアムと銘打つには内容やBOXの作りが物足りず、残念な思いがしたのは確かです。
 各アルバムの内容は素晴らしいので余計にそう思ったのかもしれませんがね…。

 そしたらば、ご本家ワーナーからウレシイ知らせが! 72年のデビューから衝撃の引退騒動、留学中のリリースを経て、本格復帰を果たした78年まで、本人監修による5枚組BOX「 Always Agnes~アグネス・チャン・ワーナー・イヤーズ・コレクション1972-1978~ icon 」が、アグネスの誕生月に出ることになったのデス!

 とはいえ、アグネスが大好きで、アグネスを聴いて育ってきたファンとしては、一報を聞いて喜んだものの、復刻が待たれる未CD化アルバムにスポットを当てたものではなく、ワーナー・パイオニア在籍時のシングルコレクション+アルバムセレクションという内容に、やっぱり今回もちょっとガッカリしてしまったりして。

 というのもシングル両面はとっくにCD化済みだし、先のプレミアムに入ってないアルバムでも「はじめまして青春」「Mei Mei いつでも夢を」「カナダより愛をこめて」はQ盤時代に既にCD化されているので、ワーナー時代のオリジナルは「お元気ですか」「私の恋人」「ハッピー・アゲイン」、ライブ盤では「ファミリー・コンサート」「また逢う日まで」と、残り5タイトルの復刻を残すのみという感じでしたのでね。

 これまで、通販の6枚組アグネス・チャンCD-BOX(現在ではついに入手困難になってしまった模様)と10枚組のOMFプレミアムという2つのBOXを即買いし、Q盤などアグネスの既発CDをほぼ揃えている身上としては、ちょっとファンを軽視したような感覚も覚えてしまったりして。アグネス自身これまでのCD-BOXにも協力していますし、公認と思ってきただけに…。
 まあ、それはナベプロの事情でワーナー・パイオニアから資本撤退して創業したSMSへと急に移籍した時以来、アグネスのレコードにはなんとなくそういう感覚がつきまっとっているせいかもしれませんが。

 とそんな風に言ってしまうと、今回のBOXを否定しているようですが、全くそうではありません。冷静に考えると初めてアグネスのBOXを買う人には極めて妥当な構成だし、どこを聴いてもほぼハズレなし、絶対オススメの内容なのですから。何よりワーナー純正、市販モノとしては初のBOXとなりますしね。

 デビュー時をはじめ折々に歌謡曲的要素もあるものの、フォーク&カントリーポップスをベースに、ニューミュージック、シティポップスを先取りしたような一連のオリジナル作品群は、公平に見ても当時のアイドルでは明らかに一線を画す珠玉の出来栄え。
 香港のフォーク少女であり、明確な思想を持つアグネス本人の嗜好や意思を鑑みつつ、バッキングも含む優秀なスタッフ陣が腕によりを掛けて、丁寧に新しい音楽作りに取り組んでいる様子が目に浮かびますもんね。

 松本隆さんが商業作詞家の道に入ったのもアグネスからだし、キャラメル・ママ(ティン・パン・アレー)、ムーンライダーズ、鈴木(矢野)顕子、シュガーベイブ、ハイ・ファイ・セット、ラストショウ(近年の太田さんのバックをしてるアリさんがいたバンド)らバックのチョイスのセンスといったらどうでしょう。
 この時代はアグネスの人間離れしたハイトーンの響きも含め、とにかく素晴らしいんですよ。

 それと何より、今回の一大ポイントは豪華オールカラー100ページのブックレットが付いていること!
 アグネス本人によると、これまで誰にも話してなかったことや、音楽に対する気持ち、来日の時の不安などなど、読み応えたっぷりらしいインタビューも入ってるそうですが、個人的に何と言っても楽しみなのが、あの当時のアグネスでしかできなかった素晴らしい音楽を創出してきたプロデューサー&ディレクター・木崎賢治さんと細井虎雄さんの対談が入るらしいこと!

 実は詳細を見なかった時点では、どうせダブリまくりの選曲だし、近年稀に見る高額単価だしということでスルーしようかと思っていたのですが、この対談を読みたいがためだけに予約を決定いたしました。

 さて、BOXの中身の5枚はと言いますと、テーマ別にセレクトされ、アグネス自身がネーミングと色を指定したディスクになるのだとか。

 最初の2枚が“Dream”と “Youth”で、「ひなげしの花/初恋」から「アゲイン/グッドナイト・ミス・ロンリー」まで、ワーナー時代の全シングルのAB面を完全収録。なんと今回は未発表音源も2曲発掘されたそうで、「小さな恋の物語」のB面「ふたりの牧場」の別歌詞バージョン「みどりの牧場」と名曲「恋人たちの午後」の未発表バージョンが収録になるそうです。

 アグネスの場合、B面も名曲ぞろいなので、たどたどしさがカワユい「いじわる雨の日曜日」、牧歌的なサウンドと美しいハーモニーが心地よい「山鳩」、とにかくキュートで甘美な「わたしの日曜日」「しあわせの白い砂」、穂口さんの美メロと東海林さんのアレンジが最高な傑作「わたしのペンフレンド」、超ウルトラドンだと「年下の男の子」と間違いそうだけど大名曲の「心のとびら」、アッコちゃんがピアノを弾くユーミン書き下ろしの「愛を告げて」、ムーンライダーズとアッコちゃんが総力を結集したミニミュージカル「小さなアンブレラ」、復帰作にしてA面に昇格した「グッドナイト・ミス・ロンリー」など、聴きどころ満載。
 さらに、アルバムからシングルカットされた2曲(「ポケットいっぱいの秘密」と「美しい朝がきます」)はアルバムバージョンも追加収録してくれるサービスぶりです。

 残りの3枚は、ファンのリクエストも参考にアグネスが自選し自作品を含むアルバムセレクション。アグネスが名付けたテーマでいうと“Friendship”、“Hope”、そして“Love”ですが、この3枚には多くの人に聴いていただきたいアルバムの名曲、例えばオーケストラの調音で始まる佳曲「二人だけのコンサート」や、アッコちゃんの早口言葉が聞ける「JIP-JIPのU.F.O.」、アッコちゃんやオトナモードもカバーした「想い出の散歩道」、飼ってた小鳥のことを歌った「トゥインキー」とかだけでなく、冒頭の溜飲を下げるような初CD化となるナンバーもいっぱいです。

 例えば、トロント大留学中にアメリカで録音された「お元気ですか」からは「教えて下さい」「想い出のかけら」「もう振り向いたりしない」「あなたを包みたい」「ひとりぽっちで歩きたい」。

 ラスト・ショウ参加でカントリーっぽい名曲の多い「私の恋人」からは中国民謡の「初恋」を除く「忘れないでしょう」「お皿一枚涙のスープ」「愛のパントマイム」 「花咲く丘に涙して 」「ハロー・サンシャイン」「悲しくても美しく」「IT’S A BEAUTIFUL DAY」「勇気を下さい」とゴッソリ。

 さらに復帰を遂げたカナダ録音盤「HAPPY AGAIN」からは「そよ風と私」「風の縁結び 」「この窓をあけて」「悲しみよこんにちは」「あなたにさようなら」とシングル曲を含めると半分以上がそろうこととなり、コレなら未CD化アルバムを切望しているファンにも配慮した選曲といえそうです。

 音にウルサイ皆さんでも、オリジナル・アナログマスターテープから新しく24bitデジタル・リマスタリングした音源ならきっと満足できそうな気もしますし、アグネス本人によるカラーイラスト・レーベル仕様もあるし、昔の写真だけじゃなく今のアグネスも撮り下ろしたみたいだし(ワーナー時代なのにその必要はあるのかはおいといて)、お楽しみ満載のBOX。特にアグネスをちゃんと聴いたことがない人に、絶対聴いてほしいBOXです。

 そしてコレが起爆剤となるほど売れて、「ファミリー・コンサート」以降のアルバム復刻のプレミアム2が実現しますように! というか、アルバム復刻もワーナー純正で大歓迎なんですけどね。

(2012.5.2)

*新曲シングル「午後の通り雨」&ボックスリリース記念イベント「アグネス・チャン リスニング・パーティ」が2012年8月7日(火)18時から東京銀座・山野楽器本店で開催されます。
 内容は、アグネス本人の解説によるワーナーイヤーズ楽曲試聴会&新曲ライブ。 山野楽器 の対象店舗で、ボックスまたは新曲シングル「午後の通り雨」を予約すると先着でイベント入場券が、両方の予約でツーショット写真撮影券ももらえます。


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