和モノとして人気を誇るシングルなどが復刻！

　2019年に歌謡曲歌手としてのデビューから50周年を迎え、ますます意欲的にアグレッシブな活動を続けている由紀さおりさん。
 
　若いアーティストたちとコラボした記念アルバム「BEGINNING ～あなたにとって～」（ こちらで紹介）も素晴らしい仕上がりでしたし、お姉さんとの童謡も、パパ役 といいますか、父性を加えた“由紀さおり・安田祥子 with 木山裕策”としてバージョンアップ。男声が入ることによって、欠けていたパズルの一片を見つけたといえば言い過ぎでしょうか。新境地を開拓するとともに姉妹の魅力もさらに増したようで、昨年末にリリースした新作「 家族の愛に包まれて」は、企画の勝利と言ってしまえば身もフタもありませんが、これまでにない新鮮な魅力が大きな話題を呼んでいます。
 
　また、コロナ禍でコンサートツアーやひとり芝居が中止を余儀なくされてはいるものの、今週末には1年延期となっていた初主演映画「ブルーヘブンを君に」がついに公開。パブリシティの露出も増え、ファンとしても喜ばしい限りです。
 
　そんな折、RECORD STORE DAY2021開催のタイミングで飛び込んできたのが、アナログ盤のリリース。何と由紀さんのシングル盤1枚、LP盤2枚の3タイトルが当時復刻されるとのこと！
　ヴァイナルブームは一向に衰える気配がないとはいえ、由紀さんまで！と一瞬驚きましたが、よく考えると当たり前という感じ。特に今回復刻が決まったシングルは、和モノとしては以前から高評価のナンバーですからね。
 
　そのシングル盤「 こころもち 気まぐれ＜完全生産限定盤＞」は1976年のリリースで、当時はまだ駆け出しの作詞家だったきすぎ（来生）えつこ＆井上陽水のサウンドプロデュースで手腕を上げた星勝のコンビによるもの。
　由紀さんにとっては大きいヒットが出なくなって試行錯誤していた、いわば低迷期のシングルにつき、一般的には知名度は高くないと思いますが、後年に聴けばその試行錯誤が主流とは異なる前衛的でグルーヴィーなメロウサウンドといえる仕上がり。
　だいぶ前から、KING OF DIGGIN'ことかのMUROさんが大プッシュし、和モノミックスCD「 DIGGIN' JAPANESE POPS MIXED BY MURO」でもチョイスされるなど、知る人ぞ知るジャパニーズ・フリーソウルの名曲として人気を誇っていたのですね。
 
　今回は、レア盤となっているオリジナルのシングル盤を完全復刻するということですが、今見るとオバさんっぽいジャケットなので、お洒落な和モノレコードを所有したいという目的の人はご注意くださいませ。
　なお、和モノ的な注目度はありませんが、B面の小椋佳作詞による「夕菜の花のなぐさめを」の方が個人的にはソフトメロウな名曲ではないかと思っていますので、これを機に再評価が進んでほしいと思っています。
　「1969」効果でオリアル復刻の進んだ由紀さんですが、フォーク期の「つかの間の雨」など一部未CD化アルバムがありますしね。
 
 　アナログではなくCDで聴きたいという人は、収録アルバム「 ふらりふられて＜タワーレコード限定＞」がタワレコ限定でCD化されていますので、そちらをどうぞ。
　当時の由紀さんは、折りからのフォーク、ニューミュージックブームに乗ろうと、従来の歌謡曲の職業作家に変えてシンガー･ソングライターの提供曲を受け始めていた頃。といっても、フォークの殿堂・東芝エキスプレスレーベル所属で、いち早く拓郎や小田さんからも提供を受けており、ボーカリストとして全く自分のものとしておりますので、違和感なく聴けることと思います。
 
　ちなみに、同時発売されるLPは、ピンク・マルティーニとのコラボレーションで世界的ヒットを記録した2011年の「 1969＜完全生産限定盤＞」、姉妹での童謡コンサートの出発点となった82年の自主制作ライブ「 由紀さおり・安田祥子 サイドバイサイド コンサート＜完全生産限定盤＞」という2枚。
　前者は国外でアナログ発売されていたようですが、国内盤としては初。後者も、市販のアナログ化は初というこですし、いくらアナログブームとはいえプレス数の少ない完全生産限定盤。コレクターの皆さんはお見逃しなく！