オススメ復刻盤「アグネス・チャン/ゴールデン☆ベスト~SMSイヤーズ・コンプリート・ABシングルス」


ナツメロ喫茶店

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 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#675

アグネス・チャン/ゴールデン☆ベスト~SMSイヤーズ・コンプリート・ABシングルス

(2014.6.4発売、CDSOL-1578~9、¥2,500+税)

*「小柳ルミ子/ゴールデン☆ベスト~SMSイヤーズ・コンプリート・ABシングルス」(CDSOL-1576~7、¥ 3,000+税)、「辺見マリ/ゴールデン☆ベスト アルティメイト・シングルス」(CDSOL-1580、¥ 2,000+税)も同時発売!

単品では初!SMS時代のシングルコレクション!

 78年、渡辺プロダクションがワーナー・パイオニアから資本撤退して興したレコード会社がSMS(サウンズ・マーケッティング・システム)。
 草創期のワーナー・ブラザーズ・パイオニア時代から稼ぎ頭だった小柳ルミ子、この年の夏に復帰したばかりのアグネス・チャン、あいざき進也、園まり、秋庭豊とアローナイツらW・パイオニア所属だったナベプロのタレントたちがこぞって移籍。

 11月には第1回新譜として、中島みゆき提供で話題を振りまいたルミ子の「雨…/雪の花」、復帰第2弾となったアグネスの「やさしさ知らず/3つの銅貨」という2枚の強力シングルを発売。翌月にはその2人のアルバム「素顔のまま」で「ヨーイドン」という風にスタートを切り、その後もデビル、桑江知子という期待の大型新人を送り込んでいったのは、当時渡辺プロタレント友の会に入っていた人なら記憶に残っていることでしょう。

 ただ、歌謡界の主流がナベプロのタレントだった時代は既に過ぎていましたし、ルミ子&アグネスの旧譜の再発やベスト盤が突出して目立っていたことや、SMS生え抜きのアーティストで最大の成功者が84年デビューの吉川晃司ということでも分かるように、レコード会社としては10年という短命で終わってしまったのでした。

 と今では伝説のレコード会社っぽい感じではありますが、そこは渡辺音楽出版の原盤制作ですから。音源的には他社への供給という形でCD化は問題なく進んできましたけど、ここに来てウルトラ・ヴァイヴからSMSのスタートを飾った2人のSMS時代のシングル・コンプリートベストが出ることになりました。

 それが、小柳ルミ子の「 ゴールデン☆ベスト:SMSイヤーズ・コンプリート・ABシングルス 」と、アグネス・チャンの「 ゴールデン☆ベスト:SMSイヤーズ・コンプリート・ABシングルス 」!

 とはいえ、ルミ子は2011年の「小柳ルミ子 デラックス・ボックス」(こちらで紹介)で、アグネスは2002年の「アグネス・チャンCD-BOX」で、いずれもCD化済み。ですので、熱心なファンの皆さんには今さらジロー的な感じだと思いますが、薄いファンにとってはロープライスで入手できるワケですし、かなりオススメ。
 特に2002年のBOXが入手困難になっているアグネスは、2012年のワーナー時代のBOX「Always Agnes~アグネス・チャン・ワーナー・イヤーズ・コレクション 1972-1978~」(こちらで紹介)の続きとして、ワーナーBOXを持っている人こそ必携の内容ではないかと思っております。

 カナダ留学を経て復帰したアグネスにとっては寝耳の水のSMS移籍だったそうですが、実際に移籍してみるととても良い制作環境で大変喜んだのだとか。確かに、アグネスはデビュー当時から「ひなげしの花」みたいなアイドル路線は苦手だったそうですし、香港のフォーク少女だったゆえに自らの音楽性を主張していたのはご存じの通り。

 むろんワーナー時代から優秀なスタッフに恵まれてたアグネスは、同時代のアイドルではずば抜けた音楽性を誇っていましたけど、SMS時代になってアグネス本人の嗜好が色濃くなっていったのは事実です。で、そういう観点でSMS時代のアグネスを追ってみますと、実に興味深いんですよね。

 76年の衝撃の引退劇から2年後、アグネスの本格復帰は本当に待望といえるもので、我々ファンはもとよりおそらく本人もかつてのようにトップアイドルの座に返り咲くことを疑わなかったと思うのですが、やはり2年のブランクは大きかったのです。

 デビュー直後から、天地真理に取って代わったように、フォーク嗜好の学生や子どもたちのファンを獲得したアグネスでしたが、彼女の不在時、そのポジションに就いたのは、すべての常識を覆したピンク・レディー。
 さらに、かつて対極の存在であったフォークはニューミュージックへと進化し、アイドルと同じようにテレビの歌番組に出たり、芸能界は様変わりしていたのでした。

 復帰第1弾「アゲイン」も予想されたような大ヒットとはいえず、そんな状況でのSMS移籍。
 続く「やさしさ知らず/3つの銅貨」こそ松本隆+松任谷正隆コンビによる従来のフォーク&ニューミュージック路線でしたが(衣装のミリタリールックがカワイかったネ)、79年は人気絶頂の国際派グループ・ゴダイゴとコラボ。
 「不思議の国のアグネス」(こちらで紹介)という名盤アルバムを創り上げ、先行シングル「鏡の中の私/アイム・ロスト」と、そこからのリカット(A面のみ)「100万人のJabberwocky/風まかせ・愛まかせ」をリリース。

 そして自らのルーツ・中国の漢文タイトルのA面に当時ロマンスをウワサされたシンガー・ソングライターの影響が色濃い自作品をカップリングした「春不遠/言葉が消えた」にフォーク回帰した後、ターニングポイントと言える作品を出します。

 それが、国際問題となっていたボートピープルを歌った「ぼくの海/CHILDREN OF THE SEA」。シングルA面としては初めての自作品となったナンバーです。ギターの弾き語りというフォーク少女の原点に返り、自作のメッセージソングを歌いながらカンボジア難民救済をする姿は、国際協力やボランティアも使命とする“文化人アグネス”の萌芽だったように思います。

 しかし、まだ完全にはそっちへと移行できずにいたアグネス。ポップに戻した「シャイン・オン・ミー/サムワン・トゥ・ラブ」、モノホンの中華系「原野牧歌/原野牧歌(中国語)」、“You are mine forever”を逆読みした呪文が妖艶な「愛の呪文/絹の娘」、「聖母たちのララバイ」に似ていると批判された「24時間のララバイ/I Believe In Love」と試行錯誤が続きます。

 そしてSMS最後となった83年。最後が傑作ぞろいというのも皮肉ですが、この年には、交遊関係をベースに女性の自立をテーマにしたとでも言うべき傑作アルバム2枚をリリースしたアグネス。
 まずは南沙織、麻丘めぐみらにも詞を書いてもらった「小さな質問」から山崎ハコ作の哲学的なタイトル曲が胸を打つ「小さな質問/時の河」を、続く初のセルフプロデュースによる「ガールフレンズ」からは、女性ライダーとして時代の寵児的に脚光を浴びた三好礼子が作詞し、久保田早紀が作曲した「Lady of The Wind/人はなぜ」をシングルカット。セールス的に結果がついていかなかったのが残念でしたが、デビュー当時からアルバムアーティストだった力量を見せつけたのですね。

 という78年から83年までのアグネスのシングル曲の流れが、今回のG☆Bでは十二分に堪能できると思います。全盛期とは全然違ったアグネスの軌跡ですが、76年の引退劇で離れてしまった元ファンの皆さんにも聴いていただければと思います。

 ルミちゃんの方の軌跡も、個性が際立っていく点はとても似てはいるのですが、彼女の場合は78年から87年までと在籍が長かった上、「来夢来人」のスマッシュヒットや「お久しぶりね」の大ヒットがありましたので、もっとメリハリのついた印象で聴けるんじゃないかと思います。

 なお、今回の発売は、このところ、奥村チヨなど、ナベプロのテープ会社・アポロン音楽工業の音源のCD化も手がけているウルトラ・ヴァイヴ。SMSではありませんでしたが、同じナベプロ音源の辺見マリ「 ゴールデン☆ベスト:アルティメイト・シングルス 」も同時発売となります。

(2014.4.18)


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