ナツメロ喫茶店

 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#1072
大貫妙子 SACDハイブリッド盤3タイトル
Cliché(MHCL-10151)・SIGNIFIE(MHCL-10152)・カイエ(MHCL-10153)
*2021.12.8発売、各¥3,000<税込>

RVC時代のSACD化、続編3タイトル!

 近年のシティポップブームで再評価が高まる大貫妙子さん。先日 こちらでご紹介したように、RVC時代のSACDハイブリッド盤再発がアナウンスされましたが、11月リリースの「MIGNONNE」「ROMANTIQUE」「AVENTURE」のRCAレーベル3タイトルに続き、12月には「 Cliche(SACDハイブリッド)」「 SIGNIFIE(SACDハイブリッド) 」「 カイエ(SACDハイブリッド)」のRCAおよびディア・ハートレーベルの3タイトルが出ることになりました!
 
 SACDのお膝元のソニーですが、近年はステレオサウンドの企画盤が中心でしたが、大貫さんのシリーズはなんと自社発売で市販流通。しかも、プライスも税込み3千円というポッキリプライスですので、やっぱり買い替え、買い増しをオススメしたいと思います。
 
 さて、今回の3タイトルを以前のコピペで簡単に紹介しますと、まず「 Cliche(SACDハイブリッド)」は1982年9月リリース、ヨーロッパ三部作の第3弾にしてRVC・RCAレーベルとしては最後となったアルバムですが、先にその前年の状況を振り返っておくべきでしょう。
 81年のター坊といえば、第2次ブームを起こしていたユーミンや、「春咲小紅」でついにブレイクを果たした矢野顕子ら、古くから交流のあった同世代の女性シンガー・ソングライターに比べ、まだまだマイナーなアーティストイメージがあった頃。
 それがマクセルのカセットテープのCMに、吉田美奈子とラジとともに3人娘的に起用され注目を浴びるのです。そのそのCMソングは、統一テーマ“磨かれて、ブラック。”に合わせて書かれた「黒のクレール」。シングルとしては初めて話題を呼び、ブレイクの予感めいた雰囲気が漂い始めたのです。
 そしてその予感を的中させるように、このアルバムはオリコンで初のトップ20入り(15位)を果たす最高位をマーク。ソロデビューから6年、ター坊はようやくヒットを記録したのでした。
 
 ということで、このアルバムはター坊の長いキャリアの中でも記念碑的なアルバムといえますが、特長は本人がプロデュースに名を連ねていることと、何と言っても本場・パリ録音という点に尽きるでしょう。
 ター坊自身が、大好きなフランシス・レイのアレンジを手がけていた巨匠、ジャン・ミュジーに依頼したといい、まさにヨーロッパ路線ここに極まれりという内容になっております。といっても約半分は東京録音が占めますが、引き続きの坂本龍一アレンジのナンバーともしっくり溶け合っていますので違和感なし。84年に初CD化されてからもロングセラーを記録し、初期の代表作として広く愛聴されています。
 なお、同時発売でメルヘン路線のスタートとなったシングル「ピーターラビットとわたし/光のカーニバル」のほか、薬師丸ひろ子や原田知世、ユーミンもカバーした人気曲「色彩都市」など、ポップでカラフルな彩りもあふれていますが、イチオシはラジへの提供曲にして、岩崎宏美もカバーした「風の道」。声と言葉、メロディーの三位一体感はワビサビの世界ではないかと思っています。
 
 続く「 SIGNIFIE(SACDハイブリッド) 」は、1983年10月リリースのセルフプロデュース作にして、RVC・ディアハートレーベル第1弾。
 「CLICHE」で上昇気流に乗ったター坊の快進撃といいますか、この年の夏、同名テレビドラマの主題歌として書き下ろしたシングル「夏に恋する女たち」を発表。お洒落なドラマの評判とともに主題歌も話題を呼び、スマッシュヒットを記録し、シングルとしてはター坊初のオリコントップ100入り(51位)を果たすのです。
 その余波を受けてリリースしたこのアルバムは、オリコン最高6位とター坊初のトップ10入り。名実ともにトップアーティストの仲間入りを果たしたワケですが、高尚なハイブランドといいますか、インテリ業界人御用達といいますか、アートワークも含め、広く一般的に浸透することにはなりませんでした。もっともそれがター坊らしい感じですけどね。でも、時代を映したキッチュなジャケットじゃなかったら、もっと売れていたように思います。アレンジは引き続きの坂本龍一に加え、清水信之、鈴木慶一とトレンディな先鋭ポップのメンツとなっています。
 
 個人的なオススメは、毛色が違ってちょっと浮いているメルヘン路線の「テディベア」。ター坊のこの路線は後のみんなのうた「メトロポリタン美術館」を経てしっかり定番化していくわけですけど、周囲からかわいいのは合わないという理由で最初の「ピーターラビットとわたし」から反対されたそうです。でもター坊の場合、一連のシリーズは単なるかわいいメルヘンではなく、どこかに寓話っぽいエッセンスも入っていて、例えるなら大人向けの本当は怖い童話ですよね。
 なお、カセットテープ版のみに収録されいた「みずうみ」もボーナストラックとして収録されています。
 
 そして1984年6月リリースの「 カイエ(SACDハイブリッド)」は、映画音楽を手がけたいと思っていたター坊の夢を実現させた企画盤。東京とパリでレコーディングされ、ジャン・ムジーが参加。映像と音楽によるサウンドトラック・アルバムというコンセプトのもと、映像ソフトと合わせて初めて完成するというアルバムです。
 なお、2018年のアナログ復刻時( こちらで紹介)にDVD「 カイエ( DVD) 」も再発されておりますので、未購入の方はセットでどうぞ。
 
 ちなみに、モノクロームの映像はパリの街角や遠くの海辺、歌入れはあの「男と女」が録音されたスタジオで収録という、とてもシックな世界観が示されておりますけれど、その後、実際に「東京日和」「東京オアシス」といった映画のサウンドトラックや、「恋人たちの時刻」「Shall we ダンス?」「めがね」「パンとスープとネコ日和」などの映画主題歌を担当することになるター坊ですが、そのルーツはここにあるといっても過言ではないでしょう。
 収録曲では、「カイエ Ⅰ」はCMのほか、いろんな番組のBGMやジングルで使われたりしましたので耳なじみがあると思いますし、後半の「雨の夜明け」などのインストは映画音楽のようでうっとりするほど素敵ですが、個人的に珠玉と思うのは「Amour levant -」、そう、仏語版「若き日の望楼」。
 また、先行シングルとして出たNHK「おしゃべり人物伝」テーマ曲「宇宙(コスモス)みつけた」のカップリングであるNHKみんなのた「メトロポリタン美術館」も、ボーナストラックとして収録されています。
 
 という3タイトル、今回もマスタリングはアナログ盤と同じく、バーニー・グランドマンとのことです。
 なお、ター坊のRVC時代はこれにて終了。85年にはミディへと移籍するワケですが、この先もCD再発が途絶えていたミディまで、SACDハイブリッド再発が続くことを祈ります。
 
 
 

(2021.9.30)
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