ワーナー時代の紙ジャケ復刻、オリアルに突入！

　日本での歌手デビュー50周年目に突入するタイミングで始まった、アグネス・チャンのワーナー・パイオニア時代のアルバム復刻。
　ブリッジからの紙ジャケ復刻ということで、まず5月にライブアルバム３タイトル（ こちらで紹介）のリリースが発表されましたが、6月からはオリジナルアルバムが３タイトルずつ順に発売されるとのこと！
 
　アグネスの場合、ワーナー時代のオリアルは「お元気ですか」「私の恋人」「ハッピー・アゲイン」という後期3タイトルを除き、90年代のQ盤や70's smile、そしてOMFのBOX「アグネス・チャン プレミアム」（ こちらで紹介）ですべてCD化済みですが、それぞれバラバラのシリーズにつきスリムケースや紙ジャケ、ジュエルケースなどまちまちの仕様。ファンとしては、今回統一された形で出ることが最も喜ばしい点かもしれません。
　当時の封入物もミニチュアで復刻されるほか、音源も2021年の最新リマスタリング。しかも今回は、オリジナルカラオケのボートラ付き。それもLP「アグネス・チャン オリジナル・カラオケ集」に収録されていたガイドメロディー入り音源のCD化だけでなく、初商品化となる純カラオケも可能な限りプラス。現存しているものはシングル曲以外も収録というサービスぶりです。コレクター的にもうれしい企画ですよね。
 
　今回リリースされるのは、ファーストアルバムから順に「 ひなげしの花」「 花のように 星のように」「 草原の輝き」という3枚。音盤自体はAmazon DODの「昭和歌謡・復刻盤シリーズ」（ こちらで紹介）で入手可能ですが、オンデマンドCD-Rですので、やっぱり紙ジャケCDがオススメです。

　せっかくですので3タイトルを簡単に紹介しますと、ファーストアルバム「 ひなげしの花」は、デビューから２カ月後の73年1月発売。
　シングル「ひなげしの花／初恋」以外はすべてカバー曲で、いきなりの人気にあやかった即席盤のイメージもありますが、とにかくフレッシュな魅力がいっぱい。香港では既にスターでしたから、日本語の発音以外は安定の歌唱です。
　選曲はフォーク中心で、得意の英語曲は香港でのデビュー曲「サークル・ゲーム」の日本録音版をはじめ、カーペンターズの「スーパースター」、南沙織「17才」のインスパイア元として知られるリン・アンダーソンの「ローズ・ガーデン」。
　一方の日本語は森山良子の「遠い遠いあの野原」「この広い野原いっぱい」やトワ・エ・モワ「或る日突然」「誰もいない海」などが入っていますが、注目は、同じナベプロで、元々はフォーク志向だった天地真理の「水色の恋」。アグネスは、この真理ちゃんの後をぴったりと追い、１年も経たないうちに真理ちゃんに取って代わるように国民的人気のトップアイドルへと上り詰めていくんですよね。
　ちなみにボートラのオリカラは「ひなげしの花／初恋」の純カラと、ガイドメロディー入りの「ひなげしの花」。

　73年5月のセカンド「 花のように 星のように」は初の全曲日本語アルバム。当時は歌詞をローマ字で丸暗記して、意味をよく分からないまま歌っていたというアグネスですが、逆に歌心が伝わる結果になったのではないかと思います。
　松山猛＋加藤和彦コンビの第2弾シングル「妖精の詩／いじわる雨の日曜日」をメインに、A面がオリジナル、B面がフォークカバーという構成となっています。
　オリジナルでは安井かずみ＋平尾昌晃、山上路夫＋森田公一という小柳ルミ子と天地真理のコンビを起用、さすがナベプロのアイドル路線を集約させたアグネスらしい布陣ですが、「ひなげしの花／初恋」を再収録しているのでアルバム用の書き下ろしは2曲のみ。
　フォークカバーは、香港時代から歌っていた「思い出のグリーン・グラス」を筆頭に、ベッツィ＆クリス「白い色は恋人の色」、シモンズ「恋人もいないのに」、チェリッシュ「ひまわりの小径」など爽やかなハーモニーが楽しめるナンバーがチョイスされています。今回は既発の「ひなげしの花／初恋」を除く10曲すべてのオリカラ（プラスガイドメロディー入りの「妖精の詩」）を収録とのことですので、
　なお、当時のアイドルはステージ衣装も含め、私服がほとんどだったそうですが、アグネスも右に同じ。妖精感たっぷりのジャケットはシングルの別カットと思われますが、特にこのちょうちん袖ニットはお気に入りだったようで、翌年のシングル「星に願いを」でも着回しています。それにしてもなぜかメイクが濃い…。

　73年8月の「 草原の輝き」は、数々の新人賞に輝いた第3弾シングル「草原の輝き／山鳩」をベースにしたサード。
　ビザの書き換えや芸能活動のため、しょっちゅう帰国していたせいでレコーディングの時間がとれなかったのか、当時でもことさら再収録の多いアグネスですが、ここでは既発のシングル「ひなげしの花」「妖精の詩」に加え、「遠い遠いあの野原」「白い色は恋人の色」「サークル・ゲーム」が再収録となり、デビュー1年目の総集編、ハーフベストと言ってもいい内容です。
　といってもカーリー・サイモンのカバー「うつろな愛」や独自のアレンジによる「トップ・オブ・ザ・ワールド」などの英語カバーは出色。トータル的にとても聴きやすい構成だと思います。香港の爽やかな夏を思わせるジャケットも素晴らしいですよね。 香港ではフォークギターを抱え、少女シンガー･ソングライターのイメージもあったというアグネスですが、このアルバムに初収録された自作曲「You’re 21, I am 16」では、アイドルチックではありますがその雰囲気がうかがえます。
　ちなみにボートラのオリカラは「草原の輝き／山鳩」の純カラと、ガイドメロディー入りの「草原の輝き」。初期の3タイトルで1枚を選ぶとしたら、迷わずコレをオススメしますね。
 
　という3タイトル。ここまでは70年代アイドルの王道といいますか、同じバイリンガルだった南沙織の初期を思わせる雰囲気の選曲ですが、次回からはオリジナリティを押し出した名盤がゾクゾク登場しますので、ここでリタイアする人が出ないことを祈っています。