アグネス meets ゴダイゴ! タケの秘蔵音源付きで復刻!
ここ数年、安定した再評価を受け続けるゴダイゴ。バンド名義の作品だけでなく、映画やドラマのサントラ、ソロ作品など超貴重な音源付きでの再発もゾクゾクと進んでいます。
そんな周辺作品も次々に発掘してきたゴダイゴ音源復刻レーベルといえば、ご存じG-matics。今回、なんとあの名盤がついに登場することになりました! そう、アグネスがゴダイゴの完全バックアップを受けて完成させた名盤の復刻「 不思議の国のアグネス+AGNES IN WONDERLAND-HOME RECORDING DEMO IN 1979 」です。
しかもゴダイゴファンのための復刻ということで、なんとタケカワユキヒデが直々に録音したデモテープ音源を収録したスペシャル・ディスク付きの2枚組で発売されるとのこと。めちゃくちゃ貴重で興味深いアイテムになること請け合いですね。
これまでにもこちらで紹介したり、このアルバムの素晴らしさをお伝えしてきましたが、本作は79年4月25日発売。76年の引退騒動、カナダ留学を経て78年に本格復帰してから3枚目となるLPで、先行シングルとなった「鏡の中の私(Through the Looking Glass)/I'm Lost」を含む全12曲を収録。当時「ガンダーラ」「モンキーマジック」で大ブレイクを果たしたばかりのゴダイゴと作ったアルバムなのです。
アグネスのヒット曲でもおなじみの山上路夫さん、ゴダイゴ専属という感じの奈良橋陽子さんが作詞し、タケが作曲。アレンジはもちろんミッキー吉野さんで、バッキングはゴダイゴの面々。彼らと一緒に涙のプールやお茶会、鏡の世界、ジャバウォッキーの詩など、あのアリスワールドがストーリー展開されています。それはまさしく「不思議の国のアリス」や「鏡の国のアリス」をモチーフに、かわいくもシュールなファンタジーの世界です。
デビューの頃と比べると、キーが低くなってしまっていますが、妖精・アグネスはまだまだ健在。ゴダイゴならではの洒脱で楽しいポップな音の装飾が見事にハマっていて、いつ聴いても音楽っていいものだなあとあらためて実感してしまう1枚に仕上がっています。
ワタシはアグネスの妖精としての魅力が最後に発揮されたアルバムではないかと思っていたりして。特に「Wonderland」はぜひ聴いてほしいです。
アグネスのボーカルはやっぱりほかには見当たらないキュートさがあるし、ほとんどが英語なのでなんだかトミーやスティーヴたちと一緒に踊っている姿も浮かんできそう。歌でおしゃべりする素敵な音楽仲間、という表現がいちばんピッタリしますね。
当時、ナベプロがワーナー・パイオニアへの資本撤退によって設立した新レコード会社・SMSのデザイン室にいた安斎肇さんのアートワークもホントに素敵です。
そういえば、アグネスとゴダイゴって、共通のイメージがありますよね。洋楽的で上質な音楽を、子どもたちにも分かりやすくパッケージして届けてくれましたし、PTAも安心してスイセンできる知的なイメージも似ています。
そういや、このアルバムが出た年は国際児童年。小6だったワタシは全校生徒とともに、ゴダイゴの歌うテーマ曲「ビューティフル・ネーム」を踊りましたし、クラスメイトにもゴダイゴファンは多かったです。
よく隠れた名盤、知られざるアルバム、なんて言われてるけど、アグネスとしてはホントに久しぶりとなる明星の表紙をゴダイゴと一緒に飾ったり、彼らとのコラボをかなりプッシュしていましたよね。で、そのプロモーションも功を奏してオリコンのアルバムチャートでは29位をマーク。アルバムアーティスト・アグネスの面目躍如と言えるスマッシュヒットを記録してます。
なお、タケのジャバウォッキーが楽しい「Talkin' Jabberwocky」は、この年の7月に日本語詞をつけた「100万人のJabberwocky」としてシングル化されるのですが、シングルの方はその後のアグネスが向かう方向が示されたものになっています。
これに加え、タケのデモ音源が全曲はいるという今回の復刻ですが、タケの書き下ろしによるアルバム制作秘話や、楽曲解説も掲載されるとか。さらに、ディスクユニオンで購入すると、オリジナル特典として、タケのデモ音源から本編収録とは別バージョンの「A Mad Tea Party」が入ったスペシャル・プレミアムCDがもらえるのだとか。
アグネスファンとしては、シングルバージョンの「100万人のJabberwocky」のボートラや、アグネスの英語教室をコンセプトにタケ&ミッキーが曲提供した企画盤「ABC Agnes Sing With Me」も期待したいところですが、あくまでもゴダイゴあってこその復刻ですので。コレが大好評を博し、次回につながりますように。
とファンとしては謙遜発言をしましたけど、ホントはアグネスこそ、きちんと再評価されるべきアーティストなんだけどな。ということで再評価、再発のためにも、最後にちょこっとクダを巻かせてください。
今回の復刻にしても、アグネスの楽曲制作のレベルの高さをご存じなければ、なんで飛ぶ鳥を落とす勢いのゴダイゴがアグネスなんかと…と思ってしまうかもしれませんが、デビュー時から新進気鋭のミュージシャンを起用し、幾多の名作アルバムを放ってきたアグネスなら当然の流れなのです。
それはむろん、かの木崎さんをはじめスタッフ陣たちの努力の賜物でしょうけど、フォークやカントリーが大好きだった本人の意向を汲みつつ、ナベプロならではの一流の職業作家さんたちとともに新進気鋭のミュージシャン(キャラメル・ママ〜ティン・パン・アレー、ブレッド&バター、ハイ・ファイ・セット、シュガーベイブ、ラストショウら)を積極的に起用しつつ、築き上げた音楽の黄金律ではないかと思っています。
個人的にも、松本隆さんやユーミン、矢野顕子ちゃんなどなど、後に深く影響を受けることになるミュージシャンを知ったのもアグネスからもたらされたものでした。アグネスがいなければ、小学2年生の子どもがアッコちゃんとムーンライダーズの演奏をナマ体験することもなかったでしょうし。ずっと後になって、ホソノさんのベースやユキヒロのドラムだったと驚いたこともありました。
何よりイイ曲がホントに多いですし、70年代アイドルという括りの中では、客観的に見ても群を抜く仕上がりのアルバムぞろいだと思っています。なので、コレを機に70年代のアグネスがちゃんと再評価され、再CD化や初CD化されることを切に祈っています。
(2009.6.15)
*9月2日に発売されるアグネスのニューシングル「 あなたの忘れ物 」は、なんとおよそ35年ぶりにムーンライダーズがバッキングを担当!NHKラジオ深夜便の「深夜便のうた」に決定しています。