ナツメロ喫茶店

 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#1068
アグネス・チャン オリジナルアルバム復刻4タイトル
Mei Mei いつでも夢を +5BRIDGE-334)・How are you? お元気ですか +2BRIDGE-335)・私の恋人 +3BRIDGE-336)・Happy Again +10BRIDGE-338
2021.10.20発売、各¥2,750<税込>

第4弾は引退騒動前からカムバック作まで!

 コロナ禍で延期になっていた50周年コンサートの開催が香港や日本でも決定し、それに先駆け11月5日に行われる松本隆作詞活動50周年記念コンサート「 風街オデッセイ2021 icon 」第一夜にも出演。来年1月には現在所属のクラウンから記念ベストも出るそうで、歌手としての活動も活発化しているアグネス・チャン。
 
 旧譜の復刻も盛んで、5月のライブアルバム3タイトル( こちらで紹介)を皮切りに始まったブリッジからの紙ジャケ復刻も、オリジナルアルバム第1弾3タイトル( こちらで紹介)、第2弾3タイトル( こちらで紹介)、第3弾1タイトル( こちらで紹介)とコンスタントに続いてきたのはご存じの通り。
 
 第4弾も順調に発売が決定し、なんと最多となる4タイトル「 Mei Mei いつでも夢を +5」「 How are you? お元気ですか +2」「 私の恋人 +4」「 Happy Again +10 」が一挙リリースされます!
 
 発売順でいけば今回ラインアップされるはずだったオリジナル&ベストの2枚組「カナダより愛をこめて」が欠番(BRIDGE-337)となっているので、リリースは持ち越されるようですが、とりあえずワーナー・パイオニア時代はラストまでたどり着いたことになりますね。
 
 今回最もオススメしたいのは76年4月リリース、アグネスとムーンライダース、そして矢野顕子さんたちが総力を結集した最高傑作「 Mei Mei いつでも夢を +5」。CD選書とアルバムBOX「アグネス・チャン プレミアム」( こちらで紹介)で合計2度CD化されていますのでレア度は低いですが、未聴の方はまずこのアルバムを。
 マイナーなフォーク調のイメージが強かった75年後半とは一転、76年は久々のトップ10ヒットなった「恋のシーソー・ゲーム」でも分かるように、カントリーポップを展開したアグネス。ステージではおなじみだったムーンライダースお得意のカントリーサウンドを、アルバムでも繰り広げたのがこのアルバムなのですが、本名(当時)は陳美齢で、ニックネームは美美(Mei Mei)。タイトルに象徴されるように、等身大のアグネスといいますか、彼女のシンガー・ソングライター的な一面がクローズアップされています。
 「雨に唄えば」を引用したミニミュージカル風の大名曲「小さなアンブレラ」や、UFOに扮したアッコちゃんの早口言葉(当時流行ったバビ語!)が聞ける「JIP-JIPのU.F.O.」、フォーク少女としての矜持を感じさせる「愛はメッセージ」など、ムーンライダースのメンバーや松本さんたちが手がけた収録曲が素晴らしいのはもちろんですが、何より素晴らしいのは息の合った仲間たちと大好きな音楽を楽しく創り上げるという姿勢。言葉が通じなくても音楽というコミュニケーションを使えば心の底から分かり合える…そう信じることでアグネスは異国の理不尽な芸能界を生き抜いたように思うのですけど、このアルバムには、心通じ合う音楽仲間の雰囲気までもがきっちりパッケージされています。そしてそれこそが同時期のアイドルとは一線を画すアグネスの音楽の魅力だったように思います。
 なお、ボートラは、山川啓介+小泉まさみによるシングル「夢をください」。カントリー路線のまま通常の新曲としてレコーディングされたもので、まさかこれがラストになるとは皮肉な感じがしたことは確かです。
 
 思えば、やり切った感もあったのでしょうか。このアルバムを最後に衝撃の引退劇を巻き起こしたアグネス。ナベプロと交渉の末、カナダに行ってもレコード制作を続ける契約となり、時々は来日もして歌手活動するとのことでファンも胸をなで下ろした次第ですが、以降の作品は消化試合のムードは否めません。しかも、シングルと同じ3カ月置きというハイペースでアルバムをリリースし続けたのですからね。
 とはいえ、アグネスの楽曲制作は木崎&細井コンビにつき、クオリティは高水準ですから、決して駄作ということではありません。
 
 留学生活も落ち着いた77年2月にレコーディングし、翌3月にリリースされた「 How are you? お元気ですか +2」は、アグネスがカナダからロサンゼルスのワーナー・ブラザーススタジオまでやって来てレコーディングしたアメリカ録音盤。ジャケットのリアルな表情にドキッとしたものですが、今回アルバムとしては初CD化となります。
 ただ、このアルバムのリリース直後に最愛のお父さんが急逝してしまうのですよね。このアルバムは半数以上が松本隆さんの作詞ですが、シングルカットされた「心に翼を下さい」は奇しくもアグネスの心情を映したようで涙を誘います。
 
 家長としてアグネスの芸能界引退を決めるなど、家族の生き方も指南していたというお父さんだっただけに、失った悲しみはことのほか深く、5月の来日時も涙、涙の連続だったアグネスですが、その際にレコーディングしたのが77年7月発売、ラストショウをバックにカントリーポップを繰り広げる「 私の恋人 +4」。
 シングルカットされる「少し待ってて」をはじめ、ソングライターとしてもナベプロ中心に活躍していた布施明の提供曲など、喪に服していたアグネスがファンたちに慰められ元気を取り戻した感じといいますか、明るく楽しいカントリーポップスでまとめられており、聴きどころが満載です。
 中国民謡の「初恋」以外は本人セレクションのBOXでCD化されていましたので、アグネス自身もお気に入りなのかも。音源のレア度は低いですが、トータルでまとまっているアルバムといえるでしょう。
 ボートラには、前回漏れていた「白いくつ下は似合わない」のシングルバージョンも入るのでマストバイですね。
 
 この後、77年11月にはオリジナル&ベストの2枚組「カナダより愛をこめて」が出ているのですが、CD選書化済みですし、前述のように今回は欠番扱いのため飛ばして、いよいよワーナー最後のオリジナルアルバム。78年9月リリースの「 Happy Again +10 」です。
 当初カムバック第1弾シングルとして早くから告知されていた松本隆+吉田拓郎作品「ハート通信」は次のアルバムに回されましたが、同じく松本+拓郎作でカムバック作となった「アゲイン」、そしてコレが思いのほか苦戦したためAB面を急きょ差し替えた松本+松任谷正隆作品「グッド・ナイト・ミスロンリー」をはじめ、強力作が目白押し。
  なお、「ハート通信」は後にナベプロの後輩・石川ひとみがシングル化しますが、渡辺音楽出版が権利を有していたであろう外国曲「この窓をあけて」も石川ひとみが同時期のアルバムでカバーしています。
 これもBOXで半分以上がCD化されていますが、アルバムとしては初CD化。留学前の「Mei Mei いつでも夢を」と比べると、歌声もオトナっぽく、大きな成長が見られると思います。
 
 この後、ナベプロは外資のワーナー・パイオニアから資本撤退し、日本の企業として新たなレコード会社、SMS(サウンド・マーケッティング・システム) を立ち上げ、小柳ルミ子とともに移籍するアグネス。ワーナー時代のシングルはA面同士のカップリングで、主要アルバムはカラーレコードで、いずれもオリジナルジャケットそのままに再発されることになり…。
 アグネスも寝耳に水だったそうですが、ファンも同様で、大人の事情というものをまざまざと見せつけられたような出来事でしたよね。
 
 ということで、次はいよいよSMS時代へ。と思いきや、「カナダより愛をこめて」は2枚組なので「はじめまして青春」のように、次回単独リリースということになるのかも。いずれにしても、完結は来年の春から夏にかけての予定だそうですので、地道にコレクションしていきたいものです。
 
 
 

(2021.9.10)

 
#1100〜
 
#1099:シンシア(南沙織)アナログ盤
#1098:ハイ・ファイ・セット CITY POP…
#1097:大江千里/Senri Oe Singles
#1096:上田知華 提供曲集
#1095:早見優/LIVE 1984~1985
#1094:アグネス・チャン SMSオリアル3
#1093:中森明菜/スローモーション…
#1092:浅田美代子 BESTタッグ
#1091:アグネス・チャン SMSオリアル2
#1090:中森明菜/AKINA EAST LIVE
#1089:森山良子/MY STORY
#1088:小泉今日子/コイズミエキ…
#1087:西城秀樹/THE 50 HIDEKI SA…
#1086:堺正章/ひとりぼっちのマチャアキ
#1085:続・心に響く唄
#1084:伊藤アキラ ソングブック
#1083:野口五郎 アルバム復刻
#1082:アグネス・チャン SMSオリアル1
#1081:風街レジェンド2015
#1080:西城秀樹 ライブアルバム
#1079:松本伊代/トレジャー・ヴォイス
#1078:アグネス・チャン/カナダより…
#1077:尾崎亜美/EARLY YEARS…
#1076:工藤静香/gradation
#1075:松田聖子/Snow Garden
#1074:松原みき meets 林哲司
#1073:南野陽子/Four Seasons …
#1072:大貫妙子 SACDハイブリッド2
#1071:岩崎宏美/筒美京平シングルズ…
#1070:若草恵 サウンドマジック
#1069:風街とデラシネ
#1068:アグネス・チャン オリアル復刻4
#1067:イルカ/冬の贈り物
#1066:薬師丸ひろ子 40周年記念企画
#1065:河合奈保子 SACDハイブリッド
#1064:nanan/nanan style
#1063:大貫妙子 SACDハイブリッド1
#1062:アグネス・チャン/はじめま…
#1061:筒美京平 マイ・コレクション
#1060:宮崎美子/スティル・メロウ
#1059:作編曲家・萩田光雄の世界
#1058:伊東ゆかり/ふたたび愛を
#1057:青江三奈/THE SHADOW OF…
#1056:郷ひろみ 555配信
#1055:戸川純 アナログ復刻
#1054:庄野真代/MAYO BOX
#1053:西城秀樹 オリアル復刻2
#1052:遊佐未森/空耳の丘
#1051:アグネス・チャン オリアル復刻2
#1050:田原俊彦/オリジナル・シン…
 

Yahoo! JAPAN

  • このサイト内を検索
  • ウェブ全体を検索