93年のジャズアルバムが生誕80年でリニューアル！

　ヘレン・メリルがニューヨークのため息なら、青江三奈は伊勢佐木町の悶え声。かつて日本に住んだこともあるヘレン・メリルが歌った「五木の子守歌」を聴いたとき、まさに三奈さんだと思ったことでしたが、そんなジョークを飛ばしたことも今は昔。青江三奈さんが54歳でお亡くなりになって21年が経とうとしています。
 
　「伊勢佐木町ブルース」「国際線待合室」など大ヒットしたブルース歌謡のイメージが強いのはしょうがありませんが、キャリアのスタートはクラブ歌手で、もともとジャズを歌っていたという三奈さん。デビューしてからもホントは歌謡曲ではなくジャズメインの活動をしたかったそうで、ステージではもちろんLPでもジャズのスタンダードナンバーを吹き込んんでいますが、本格的な取り組みはアメリカレコーディングによる93年のアルバム「THE SHADOW OF LOVE～気がつけば別れ～」から。
 
　95年には本場ニューヨークで30周年記念ディナーショーを行い、その模様を収めたアルバム「PASSION MINA IN N.Y.」とともに、従来のファン以外からも支持されていますが、このたび生誕80年特別記念盤として新たなデザインとリマスタリングでリニューアル。CD「 THE SHADOW OF LOVE ～気がつけば別れ～ （CD）」とLP「 THE SHADOW OF LOVE ～気がつけば別れ～（LP）＜限定盤＞ 」でリリースされることになりました。
 
　前回の復刻はCDが2007年、LPが2012年で、いずれもレア・グルーヴ系の復刻を手がけていたTHINK!レーベルから「昭和ジャズ復刻シリーズ」としてのリリースでしたが、今回もビクター純正ではなく、ジャズの名盤を中心に発掘しているCRAFTMAN RECORDSからとなっています。
 
　「CRY ME A RIVER（クライ・ミー・ア・リバー）」「IT'S ONLY A PAPER MOON（イッツ・オンリー・ア・ペイパームーン）」「LOVER, COME BACK TO ME（恋人よ我に帰れ）」「WHAT A DIFFERENCE A DAY MADE（縁は異なもの）」「SENTIMENTAL JOURNEY（センチメンタル・ジャーニー）」といったスタンダードを中心に、自身のヒット曲「BOURBON STREET BLUES～伊勢佐木町ブルース」「HONMOKU BLUES～本牧ブルース」も青江イングリッシュで聴かせるこのアルバム。
　バックにグローバー･ワシントンJr.やマル･ウォルドロンなど一流ジャズメンを従え、ナット･キング･コールの弟、フレディ･コールとのデュエットもあり、青江さんの並々ならぬ熱意が存分に感じられる仕上がりとなっています。
 
　正直、英語の発音と節回しが気にならないといえば嘘になりますが、独特の青江ジャズが堪能できること請け合い。そういう意味では、三奈さんのうたごごろが言語のセオリーを超えたことを証明しているといえるでしょう。
　個人的には「PASSION MINA IN N.Y.」（「MOANIN'」に重なるMCと「伊勢佐木町ブルース」の流れや、ビリー・ジョエルのカバー「NEW YORK STATE OF MIND」が秀逸です）が大好きなので、これに続くことを願っています。