ナツメロ喫茶店

 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#1082
アグネス・チャン SMS時代オリジナルアルバム復刻2タイトル
ヨーイドン +10BRIDGE-339)・不思議の国のアグネス ~AGNES IN WONDERLAND~ +12BRIDGE-340
2021.12.15発売、各¥2,750<税込>

SMS時代に突入!ゴダイゴとのコラボも!

 「ひなげしの花」のリリースが1972年11月ですから、来年、日本デビュー50周年を迎えるアグネス・チャン。
 1月26日に中野サンプラザで開かれる日本デビュー50周年記念コンサート「 アグネス・チャン 平和の歌声よ、届け! 歌でつづる私の半世紀 icon」のチケットも12月に一般発売されるようですが、往年のファンを喜ばせているのがブリッジからの紙ジャケアルバム復刻。
 
 ライブアルバム3タイトル( こちらで紹介)を皮切りに、オリジナルアルバム第1弾3タイトル( こちらで紹介)、第2弾3タイトル( こちらで紹介)、第3弾1タイトル( こちらで紹介)、第4弾4タイトル( こちらで紹介)と続き、今月の1タイトル( こちらで紹介)でワーナー・パイオニア時代が完結しましたが、今回からはSMS(サウンズ・マーケッティング・システム)時代に突入と相成ります。
 
 SMSといえば、アグネスが復帰を遂げた78年、渡辺プロダクションがワーナー・パイオニアから資本撤退して興したレコード会社。
 であるからして、SMSにはアグネスのみならず、小柳ルミ子、あいざき進也、園まり、秋庭豊とアローナイツら、W・パイオニア所属だったナベプロのタレントたちや、渡辺プロから来ていたスタッフたちがこぞって移籍したのです。
 そして11月には第1回新譜として、中島みゆき提供で話題を振りまいたルミ子の「雨…」、復帰第2弾となったアグネスの「やさしさ知らず」という2枚の強力シングルを発売。翌12月には、この稼ぎ頭のツートップ2人のアルバム「素顔のまま」で「ヨーイドン」という風にスタートを切ったのですが、今回復刻されるのは、その「 ヨーイドン(+10)」と、79年4月リリースの「 不思議の国のアグネス ~AGNES IN WONDERLAND~(+12)」の2作です。
 
 カナダ留学を経て復帰したアグネスにとっては寝耳の水のSMS移籍だったそうですが、実際に移籍してみるととても良い制作環境で大変喜んだのだとか。むろんワーナー時代から優秀なスタッフに恵まれてたアグネスですが、本人はデビュー当時から「ひなげしの花」みたいなアイドル路線は苦手だったそうですし、香港のフォーク少女だったゆえに自らの音楽性を主張していたのはご存じの通り。SMS時代になってアグネス本人の嗜好がどんどん色濃くなっていったのは事実です。
 
 さて、当時のアグネスと言えば76年の衝撃の引退劇から2年。本格復帰はファンにとって本当に待望といえるもので、おそらく本人もかつてのようにトップアイドルの座に返り咲くことを疑わなかったと思うのですが、やはり2年のブランクは大きく、復帰第1弾「アゲイン」も予想されたようなチャートアクションが見られず。アルバムアーティストらしく、復帰アルバム「Happy Again」はトップ10入りを果たしたものの、シングルのAB面を急きょ差し替えた「グッドナイト・ミス・ロンリー」も名曲にもかかわらず、パッとしない状況。
 もしかしたら水面下でのSMS移籍が、プロモーションにも大きく響いていたのかもしれませんけど、スタッフもやきもきしていたのかもしれません。
 
 そんな状況でリリースされたSMS移籍第1弾アルバム「 ヨーイドン(+10)」。
 松本隆+松任谷正隆コンビによる先行シングル「やさしさ知らず/3つの銅貨」をフィーチャー、タイトル通り、新天地でのスタート、復帰の成功を祈ったコンセプトでまとめられておりますが、セールス的にはオリコン70位という留学中でも見られなかった下位にとどまり、一気に数字を落としてしまうのです。
 
 とはいえ、当初、復帰シングルとして早くからアナウンスされていた吉田拓郎作品「ハート通信」、ブレット&バターの岩沢幸矢との洒脱なデュエット「つむじ風」、お得意の切な系カントリーポップ「曲がり道、別れ道」「雨の色」、ナベプロっぽいポップンロールな「泣き虫弱虫お嬢さん」、フュージョンタッチのサウンドが素敵な「白いスニーカー」、そしてタイトルとは裏腹に壮大でフォーキーな表題曲など、粒よりのナンバーが勢ぞろい。
 
 ただ、今思えば従来からのフォークとカントリーポップのミックス路線を踏襲してしまったのが、アグネスが低迷してしまう原因になったのかも。新体制の準備が間に合わなかったせいかもしれませんが、ホントは次作のように、一歩先に進んでしまった方がアグネスらしくて良かったのかもしれません。
 そういう意味で象徴的と言えるのが、事務所の先輩だったトワ・エ・モワの「友だちならば」のカバー「友達ならば」。キャロル・キングの「君の友だち」を翻案した名曲ではあるのですが、やっぱり原曲は72年のナンバーですから、ニューミュージック全盛の当時としては古くさかく聞こえてしまったんですよね。
 とはいえやっぱりアグネスの魅力が詰まった佳曲ぞろいの名盤ですし、何といっても初CD化ですから、ジャケ裏のスポーティーなアグネスとともにぜひとも入手したい1枚です。
 
 そしてもう1枚は、打って変わって世間的に名盤と誉れ高い1作。79年4月発売、「ガンダーラ」「モンキーマジック」で大ブレイクを果たしたばかりの国際派グループ・ゴダイゴとコラボした「 不思議の国のアグネス ~AGNES IN WONDERLAND~(+12)」です。
 先行シングルとなった「鏡の中の私(Through the Looking Glass)/I'm Lost」を含む全12曲を収録。
 ゴダイゴの一連のナンバーと同じく、作詞は山上路夫さん(アグネスのヒット曲でもおなじみ)と、ゴダイゴ専属という感じの奈良橋陽子さん。作曲はタケカワユキヒデ、アレンジはミッキー吉野で、バッキングはゴダイゴの面々。ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」や「鏡の国のアリス」をモチーフに、涙のプールやお茶会、鏡の世界、ジャバウォッキーの詩など、あのアリスワールドがストーリー展開され、かわいくもシュールなファンタジーの世界が繰り広げられています。
 デビュー当時と比べると、キーが低くなってしまっていますが、妖精・アグネスはまだまだ健在。アグネス得意の英語での歌唱と、ゴダイゴならではの洒脱で楽しいポップな音の装飾が見事にハマっていて、いつ聴いても音楽っていいものだなあとあらためて実感してしまう1枚に仕上がっています。日本語で歌ったラストの「ワンダーランド」を聴くにつけ、なぜこの名曲をリカットしなかったのか当時から不思議に思っております。
 当時、SMSのデザイン室にいたソラミミスト・安斎肇さんのアートワークも素敵ですよね。
 
 よく隠れた名盤、知られざるアルバム、なんて言われていますが、アグネスとしてはホントに久しぶりとなる明星の表紙をゴダイゴと一緒に飾ったり、彼らとのコラボをかなりプッシュしていましたので、当時のゴダイゴのファンにもよく知られた作品ではないかと思います。
 そのプロモーションも功を奏してオリコンのアルバムチャートでは29位をマーク。アルバムアーティスト・アグネスの面目躍如と言えるヒットを記録してますしね。
 なお、タケのジャバウォッキーが楽しい「Talkin' Jabberwocky」は、この年の7月に日本語詞をつけた「100万人のJabberwocky」としてシングル化されるのですが、シングルの方はその後のアグネスが向かう方向が示されたものになっています。
 
 今回も最新リマスタリング音源、オリジナル・レコードを忠実に再現した紙ジャケット仕様ですが、ボートラはいずれもカラオケ全曲が追加されるとのこと!
 「不思議の国のアグネス ~AGNES IN WONDERLAND~」は2009年にゴダイゴ音源復刻レーベル・G-maticsから初CD化された後、2018年にはAmazon DOD「昭和歌謡・復刻盤シリーズ」でもCD-R化されていましたので、音源的にはレアではありませんが、ゴダイゴファンの皆さんはカラオケ目当てに買い替え、買い増し必死ですぞ。
 
 ここからのSMSのアルバムは、BOXで数曲が聴けるものもありますが、アルバムとしては未CD化ですので、次回からも楽しみ! なお、次作の「ABC AGNES」は“聴きながら楽しく学べるアグネスの英語教室!!”というコンセプト通り、子ども向けの企画盤ではありますが、全曲タケの作曲ですのでゴダイゴファンの皆さんもお見逃しなく!
 
 

(2021.11.18)

 
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