34年ぶり！ヴォーカリーズ3部作が再発！

　もはやブームを超えたムーブメントとして定着した、ジャパニーズ・シティポップ。錦の御旗のように何でもかんでもシティポップと付けりゃいいというような風潮もありますが、ずっと復刻されなかったアルバムがようやくCD化されたり、入手困難だった音源が発掘されたりするのは大歓迎。それが廉価盤ならば、もう言うことはありません。
 
　そんな観点からすれば、今回ユニバーサルミュージックから登場する「 CITY POP Selections by UNIVERSAL MUSIC」シリーズは、まさに万々歳！
　第1弾にラインアップされた14アーティスト25タイトルには初CD化が9作も含まれるそうで、泰葉の4枚「 TRANSIT＜限定盤＞ 」「 ViVid＜限定盤＞」「 RESERVED＜限定盤＞」「 White Key＜限定盤＞」（ファースト以外は初CD化！）を筆頭に、野口五郎のバックバンド・GORO SPECIAL BANDによる「 GORO SPECIAL BAND＜限定盤＞」なども！　しかもQ盤・音蔵と同じプライスですからね。
　さらにキャンペーンの連動企画として、泰葉のデビューシングルとファーストアルバムのアナログ復刻盤「 フライディ・チャイナタウン＜生産限定盤＞」「 トランジット＜生産限定盤＞」なども同時発売されるとか！ 
 
　ということで、今は昔、素敵なチャキチャキダウンタウンっ子だった頃の泰葉を…と思いましたが、きっと待ち望んでいた皆さんに爆売れするでしょうから、ここは一つ隠れた名盤、ハイ・ファイ・セットが81年から83年にかけて発表した三部作「 3 NOTES＜限定盤＞」「 1&2＜限定盤＞」「 I miss you＜限定盤＞」と参りましょう。
 
　高度でファッショナブルなコーラスグループとして知られるハイ・ファイ・セットは、赤い鳥のメンバーだった山本潤子、山本俊彦、大川茂の3人によって74年に結成。デビュー曲が同じアルファのユーミンが提供した「卒業写真」だったことでも分かるように、しみったれたフォークの全盛期に、時代を先取りしたシティ派のおニューなミュージックを展開。現在もてはやされるシティポップの一角を、確実に形作ったグループといっても過言ではありません。
　しかし、今回の三部作はジャズ。しかも、声だけでジャズを演奏する“ヴォーカリーズ”スタイルでジャズコーラスに挑戦した“4ビート3部作”なのです。
 
　77年に「フィーリング」の大ヒットを放った後、アルファを離れた（といってもレコードはユーミンと同じく東芝EMIから発売）ハイ・ファイ・セットは、コーラスグループとしてのテクニックを向上させることに躍起になって、マンハッタン・トランスファー的なより高度なハーモニーを突き詰めていた印象があります。それはユーミンの「DISTENY」のカバーを聴けばうなずけることと思いますが、より新たな方向性を見出すため、79年いっぱいで活動を停止。1年間の休業に入るワケですが、その間基礎からレッスンをし直し、見つけた方向性がスウィング感たっぷりのヴォーカリーズスタイルだったのです。
 
　きっかけは、山本夫婦のニューヨーク旅行。マンハッタン・トランスファー目当てで出かけたコンサートで偶然聴いたジョン・ヘンドリックス・ファミリーに触発され、そのルーツであるランバート・ヘンドリックス＆ロスへとさかのぼっていったといいます。
 
　そんな経緯の末、休業明けに発表されたのがこの3部作。ジャズピアニスト・佐藤允彦さんプロデュースによる「3 NOTES」（オリコン38位）、「1 ＆ 2」、「I miss you」（76位）です。
　日本語詩で綴られたジャジーなナンバーをスウィングしながら歌う姿は、まさにアダルトなハイ・ファイ・セット。3人のヴォーカリーズの精度はジャズファンさえも唸らせておりましたが、それまでのファンには受け入れられず…。セールス的にもとても成功とは言いがたく、CBS・ソニーへの移籍につながっていきます。
 
　というワケで、ハイ・ファイ・セットの場合、シティポップと定義づけるのはこの3部作以外がふさわしい気がしますが、アルバムのCD化としては88年以来34年ぶりですので、諸手を挙げて喜ぶことにいたしましょう。
 
　なお、ユニバーサルが権利を持つ東芝EMI時代のハイ・ファイ・セットのアルバム6枚はこれにて再発完了。先の3枚は2017年にLight Mellow 和モノシリーズ3タイトル（ こちらで紹介）で再発されておりますので、シティポップを求める方は、まずはそちらをオススメいたしますぞ。