「1969」効果で、洋邦カバー集8タイトルが一挙復刻!
世界で熱い支持を受けるピンク・マルティーニとコラボし、世界で好評を博した由紀さおりさんの「 1969 」(こちらで紹介)。
まさに空前という感じの由紀さおりブームですが、国内でもいまだ衰えることなくアルバムは安定して売れ続けているようです。
オリコンでも、瞬間風速の新譜が多い週は押されて下がるものの、3月5日付のチャートでは最高位の4位にまたまた再浮上。発売から半年近くになっても根強い人気で、近年希に見るロングセラーを記録しております。
先頃はBillboard JAPAN Music Awards 2011において「米国ビルボード特別賞」に輝いたほか、由紀さおり&ピンク・マルティーニとしてのジャパン・ツアーも6月に決定。千葉、東京、大阪での公演が予定されていますし、海を越えるコラボのきっかけとなったファーストアルバムの紙ジャケ復刻盤「 夜明けのスキャット(紙ジャケット仕様) 」(2008年復刻)も「1969」の隣で着実に売れているようですから、まさにピンク・マルティーニ様々といったところです。
その追い風を受けて2月に出た歌謡曲歌手としての入門編「ゴールデン☆ベスト」(こちらで紹介)も大好評のようで、発売されたとたんオリコン初登場57位にチャートインするという好発進を見せています。ホント、このクラスでは異例となる売り上げですから、ぜひともこのままの流れで行き着くとこまで行ってほしい!などと思っていましたら、やっぱりやってくれました!
ファーストアルバム「夜明けのスキャット」に続く4年ぶりとなる紙ジャケ復刻盤、今度はなんと「 由紀さおりの美しき世界(紙ジャケット仕様) 」「 あなたと夜と音楽と-由紀さおりの魅力-(紙ジャケット仕様) 」「 この愛を永遠に(紙ジャケット仕様) 」「 男のこころ~由紀さおり フランシス・レイを歌う(紙ジャケット仕様) 」「 故郷~由紀さおり ビッグ・ヒットを歌う(紙ジャケット仕様) 」「 恋文(紙ジャケット仕様) 」「 みち潮(紙ジャケット仕様) 」「 う・ふ・ふ~由紀さおり 宇崎竜童を歌う(紙ジャケット仕様) 」という8タイトルが一挙発売になる模様です!
いてもたってもいられない感じですので、先走り気分でご紹介させていただきましょう!
実はこの知らせを聞いてラインアップを眺めた時、個人的に名盤として愛聴し、復刻を切望していたいくつかのオリジナルアルバムが軒並み入ってないので、一瞬冷や汗が流れたりしましたが、冷静にタイトルを拝見してなるほど納得。
カバーアルバム「1969」の成功を受けたタイミングでの復刻ですからしごく当然、すべてカバー曲中心のタイトルがチョイスされていたのでした。
由紀さんのファンの方やコアな昭和歌謡(昨今もてはされるこの言い方は由紀さんはお気に召していらっしゃらないようです)フリークの皆さんには釈迦に説法でしょうし、ワタシごときがあれこれ申し上げるのも恥ずかしい限りです。
が、こちらをご覧の方々には「1969」で初めて由紀さんのCDを買ったという方も多いようですし、ぜひ今回も予約購入をお願いしたいものの、カバーであっても選曲が幅広く、サウンドも時代ごとに異なる由紀さんのこと。これらのアルバムを一挙にそろえるのはなかなか難しいでしょうから、お気に入りの目星をつけていただけたらという思いを込め、簡単に紹介させていただきましょう。
ぜひご予約の参考にでもしていただいて、お役に立てればと思っております。
まずは69年12月発表のセカンドアルバム「 由紀さおりの美しき世界 」。当時の最新曲「枯葉の街」に加え、再収録となる2大スキャット「夜明けのスキャット」「天使のスキャット」というオリジナル曲も収録。ファーストアルバムに続き、全編渋谷毅さんアレンジですから、「 夜明けのスキャット 」の雰囲気がお好きな人はマストです。
取り上げられたカバー曲は、当時の最新ヒットという様相。森山良子「禁じられた恋」「まごころ」、新谷のり子「フランシーヌの場合」、トワ・エ・モワ「或る日突然」といったカレッジフォーク系から、黛ジュン「雲にのりたい」、小川知子「銀色の雨」と東芝の先輩、いずみたく門下生ならではのチョイスと言えるピンキーとキラーズ「星空のロマンス」や岸洋子「希望」まで。
昭和歌謡マニアには外せない、同門・佐良直美のレコード大賞受賞曲「いいじゃないの幸せならば」、アン真理子「悲しみは駆け足でやってくる」、カルメン・マキ「時には母のない子のように」など、この時代ならではの退廃的な名曲もそろっています。
次は70年6月、これまた全編渋谷毅さんアレンジの「 あなたと夜と音楽と-由紀さおりの魅力- 」。
といっても同名のスタンダードがカバーされているわけではなく、得意のスキャットによるフランシス・レイのフランス映画音楽「白い恋人たち」「男と女」をはじめ、森山良子「恋は水色」、岸洋子「恋心」、菅原洋一「知りたくないの」、越路吹雪「サン・トワ・マミー」といったシャンソンやカントリーの外国曲ヒットが並びます。ファーストアルバムの紙ジャケ盤のボーナストラックは、このアルバムから5曲が選ばれていますので、そちらのお試しが気に入っているなら、こちらをどうぞ。
なお、森山加代子「白い蝶のサンバ」、沢たまき「ベッドで煙草を吸わないで」、ペギー葉山「爪」などの日本のヒット曲カバーや、当時の最新曲「好きよ」などのオリジナルも入っています。
続くのは1971年7月発売、フランシス・レイ提供というなんともゴージャスな「男のこころ/恋におちないように」やタイトル曲のシングルなどオリジナルを半数がしめる「 この愛を永遠に 」。
カバーは当時の大ヒットナンバーで、朝丘雪路の筒美作品「雨がやんだら」、はしだのりひことクライマックス「花嫁」、加藤登紀子「知床旅情」、赤い鳥「竹田の子守唄」と民謡調のフォーク、歌声喫茶いずみたくミュージカル曲「今、今、今」、ペギー葉山「雲よ風よ空よ」とバラエティーに富んでます。
ナチュラルでお綺麗な由紀さんが写ったジャケットもいいですね。
そして前作からわずか2ヶ月後に出たのが、「 男のこころ~由紀さおり フランシス・レイを歌う 」。
文字通り、巨匠フランシス・レイのカバー集。「白い恋人たち」「愛のレッスン-個人教授のテーマ-」「うたかたの恋」「パリのめぐり逢い」「ある愛の詩」「雨の訪問者」「男と女」「さらば夏の日」「流れ者」などなど…映画音楽の名曲、ラブサウンドがずらり。 編曲はヨーロッパっぽい雰囲気の楽曲がお得意な川口真先生で、ジャケットも含めホントにお洒落で素敵です。「1969」のそのへんのエッセンスにシビれた方はぜひこの1枚を。
それにしても当時は、こういう映画音楽はもちろん、アメリカン&ブリティッシュロックやポップスもフレンチポップスもシャンソンも、フォークもカンツォーネも一体となって、歌謡曲と一緒にヒットチャートに上り、テレビやラジオはもちろん、お茶の間でも街角でもごく普通に流れていました。
それこそが、今注目を集める「1969」であり、あの時代の日本の世俗であり、歌謡曲の真髄だと思いますが、幼児であってもそういう時代を原体験できたことは本当に幸運だったと思っています。
次は1972年9月「 故郷~由紀さおり ビッグ・ヒットを歌う 」。タイトル曲は熱烈なファンを持つ大野雄二が作曲したシングルですし、このアルバムではアレンジを全曲担当。大野ファンの間では復刻を熱望されていたアルバムです。
オリジナルも多いですが、カバーはもとまろ版がヒットした競作盤「サルビアの花」、チェリッシュ「ひまわりの小径」というフォークにプラスして、ポール・サイモン「母と子の絆」、ニール・リード「ママに捧げる詩」という洋楽ヒットをはじめ、シナトラ御大の「マイ・ウェイ」、アンディ・ウイリアムスの「ゴッドファーザーのテーマ」という多くの歌手に競作されたナンバーがずらり。
ジャケットデザインもセンスが光っています。
1973年9月発売、レコ大最優秀歌唱賞を受賞するタイトル曲をはじめ、「ルーム・ライト(室内灯)」「りんどうの花」というオリジナル作品をフィーチャーした「 恋文 」。
よしだたくろう書き下ろしの「ルーム・ライト(室内灯)」でフォークに挑戦した由紀さんですが、ここでのアレンジも木田高介、宮本光雄というフォーク系の両氏が担当。
井上陽水「夢の中へ」をはじめ、チェリッシュの「避暑地の恋」、フォー・クローバーズ「冬物語」といったフォークっぽいものから、ちあきなおみ「喝采」を筆頭に、大信田礼子「同棲時代」、三善英史「円山・花町・母の町」、小柳ルミ子「漁火恋唄」の歌謡曲まで、フォークでも歌謡曲でもない、まさにニューミュージックという雰囲気を醸し出しています。
聴きどころは浅田美代子の「赤い風船」。この歌がなぜ浅田美代子のためにつくられたのかという理由や、由紀さんの過去と将来までが感じられると言ったら言い過ぎでしょうか。
今回のラインアップでは、ジャケットが最も歌謡曲のアルバムという雰囲気なので、ビギナーは店頭では手に取りにくいかも。逆に昭和歌謡ファンにはたまらないでしょうけど。
まだ権威のあったレコ大で日本一歌唱力があると認められた余裕からなのか、ますます従来の歌謡曲にはないメロウな軽さが顕著になっていく由紀さん、1974年7月の「 みち潮 」のB面では、絶頂期を迎えたフォークを歌いこなします。
かぐや姫「神田川」、井上陽水「心もよう」、ペドロ&カプリシャス「ジョニィへの伝言」、チェリッシュ「白いギター」、小坂明子「あなた」、そして新人・麻生よう子「逃避行」。
おなじみの曲で由紀さんの歌のうまさを実感したいなら、迷わずこの1枚をどうぞ。
気がつけば時代はすっかり変わり、1977年8月。「 う・ふ・ふ~由紀さおり 宇崎竜童を歌う 」は文字通り、大ヒットを連発させ、飛ぶ鳥を落とす勢いだった宇崎竜童作品集です。
阿木燿子、島武実という名パートナーの詞も、ホントに新しいオトナの歌謡曲という感じでしたよね。当時の由紀さんに「ふらりふられて/風恋歌」「う・ふ・ふ/ワン・デイ」というシングルが書き下ろされた関係で、この企画につながったと思われます。
すっかりアダルト歌手のイメージになっていた頃ですが、カバー曲に選ばれたのは、山口百恵「横須賀ストーリー」、研ナオコ「サヨナラは嫌いな言葉」、木之内みどり&高田みづえ「硝子坂」、木の実ナナ「愛人(アマン)」、梶芽衣子「欲しいものは」、内藤やす子「想い出ぼろぼろ」と、ブルース歌謡、歌謡ロック ロック演歌などと呼ばれたヒット曲ばかり。
百恵ちゃんのメロウなナンバーをメロウな由紀さんが歌うとどうなるか。聴いてのお楽しみの「夢先案内人」や、百恵ちゃんが阿木+宇崎作品を歌うきっかけになったというダウン・タウン・ブギウギ・バンドの「涙のシークレット・ラブ」もカバーするなど、百恵ファンにもオススメしたい1作です。
正直、ジャケットがオバさんっぽくて好みではないのですが、ウチ的には、やっぱりコレをイチ押ししておきましょう。
という今回のラインアップ。どうか「1967」のオトナの歌謡曲カバーの流れで数字が動き、悲願の全アルバム復刻へとつながりますように。
そのためにも今回は速攻で予約しないと! そして、ジャケットのアートワークにも驚く、いずみたくオリジナルアルバム「23才/由紀さおり・愛のうた」や、吉田拓郎、加藤和彦、杉田二郎、小室等他、日本の誇るシンガー・ソングライターが一堂に結集したフォークアルバム「ルームライト オリジナル・ア・ラ・カルト」、好企画盤「銀座万葉集」、服部良一作品集「Love Again」などなど、由紀ファンに人気の高いオリジナル名盤がCD化される日を、皆さんと一緒に心待ちにしたいと思います。
なお、「1969」でピンク・マルティーニに惹かれた方にも朗報! 彼らのベストアルバム「 A RETOROSPECTIVE 」の日本版が発売延期になっていましたが、今回の由紀さんの復刻と同日発売になるのだとか。「1969」からは「マシュ・ケ・ナダ」が収録されているそうです。
(2012.3.10)