風街詩民のための豪華なカバー&朗読トリビュート!
今年は松本隆さんにとって、作詞家生活四十五周年にあたるアニバーサリーイヤー。
45という節目は、45回転のドーナツ盤があった時代に敬意を表してということだそうですが、先週には、これを記念したオフォシャルプロジェクト「 風街レジェンド2015
ちなみに、このプロジェクトは8月21、22の2日間、東京・国際フォーラムで開催されるコンサートなのですが、はっぴいえんどのメンバーだった細野晴臣&鈴木茂をはじめ、太田裕美、南佳孝、矢野顕子、吉田美奈子、小坂忠、原田真二、EPO、佐野元春、杉真理、斉藤由貴、稲垣潤一、C-C-B、イモ欽トリオ、大橋純子、早見優、安田成美ら超豪華なアーティストが参加することに巷の話題は集中しました。
そして、これに先駆けて発売されるのが45周年記念トリビュートアルバム「風街であひませう」(完全生産限定盤「 松本隆 作詞活動四十五周年トリビュート 「風街であひませう」(完全生産限定盤)
松本さんのアンソロジーといえば、1999年の30周年記念BOX「風街図鑑 1969-1999」(現在は廉価再発の分冊盤「 風街図鑑 風編
むろん復刻盤ではありませんが、松本さんのお祝いですし、ものすごい企画ですので、ぜひとも紹介させていただこうと思います。
松本隆トリビュートアルバムというと太田裕美による99年の「 Candy
松本さんの水彩画の街や日々を彷彿とさせるジャケット(「きょうの猫村さん」のほしよりこイラスト)からぐっときてしまいますが、総合サウンドプロデューサーに鈴木正人さんを迎えたトリビュート盤は、スピッツの草野マサムネを筆頭に、ハナレグミ、クラムボンなどなど、風街の匂いを持った現代のアーティストがずらり。
言わずと知れたはっぴいえんどの「はいからはくち」から、21世紀のリン・ミンメイとでも言うべきランカ・リー(中島愛)の「星間飛行」まで、1970年代から2000年代までの松本作品から厳選された10曲をカバーしていますが、聖子の「白いパラソル」を斉藤和義が歌うというサプライズのほか、チャッピーの「水中メガネ」を作者である草野マサムネがセルフカバーしたり、安田成美の「風の谷のナウシカ」をジブリ歌手のイメージも強い手嶌葵が歌ったり、なんとも興味深い内容です。
さらにスペシャルトラックとして、未発表曲だというホソノさんの「驟雨の街」もボーナス収録という充実ぶりですが、やっぱり目玉は限定盤のポエトリーリーディングアルバム「風街でよむ」の方でしょう。
一口に歌のための詩と言っても、例えば阿久悠さんの作品が「見る」ことで味わいが深まる「歌詞」だとすれば、松本さんのそれは「読む」ことで味わいが深まる「歌詩」。勝手にそんな持論を展開してきたワタシですので、今回の企画は願ったり叶ったりという感じで今からとっても楽しみにしておりますが、しかもディレクションがあの是枝裕和監督と聞いて、小躍りしそうになっております。
朗読陣もとにかく豪華で、斎藤工、東出昌大、有村架純ら今を時めく若手俳優や、宮崎あおい、山田孝之、井浦新、加瀬亮といった中堅実力派がずらり。
さらに、太田裕美、薬師丸ひろ子、斉藤由貴、小泉今日子、中川翔子といった風街ゆかりのアーティストが顔を並べるほか、松本さん自身も朗読するという、この上ない贅沢な内容となっているのです。
太田さんによる拓郎の「外は白い雪の夜」や、松本さんと聖子を“ネ申”と崇めるしょこたんの「レモネードの夏」といった順当な組み合わせはもとより、 斉藤さんの「卒業」や薬師丸さんの「あなたを・もっと・知りたくて」というご本人の朗読も楽しみですが、期待したいのは朝ドラ「あまちゃん」で小泉今日子演じる天野春子の若き日を演じた有村架純によるキョンキョンの「魔女」など、ヒネリの効いたコラボ。
一般的には松本作品の再評価は「あまちゃん」の大ブームをきっかけに進んだ印象がありますから、この点は風街フリークのみならず、より多くの人にアピールできそうな気もしますね。
個人的には、そのキョンキョンが松本さんと聖子の再会モニュメント作「哀しみのボート」を読むのに期待大。何せここ20年では太田さんの「魂のピリオド/水彩画の日々」と並ぶ最高傑作と思っている松本作品ですから。
なお完全生産限定盤は、ポエトリーリーディングアルバム「風街でよむ」のほか、松本さんとクドカンの対談、注目の詩人・最果タヒによる解説、山内マリコによるショートストーリーが収録された書籍にしおりも付いた、ハードカバー書籍仕様。まさに松本さんのお祝いにふさわしい仕様だと思いますので、入手するなら完全生産限定盤をどうぞ。
ところで、松本さんと言えば、ニューミュージック系のアーティストに深みと陰影を与えたり、アイドルに知性と感受性を授けたり、歌謡界に大いなる遺産を残してきたのはご存じの通り。
個人的には、生まれて初めて松本さんの詩に触れたのはアグネス・チャンの「アグネスの小さな日記」で、最も影響を受けたのは太田裕美の一連の作品群。であるからして、年端もゆかぬ頃から口ずさみ、時には暗誦してきたものですから、日本語の語彙や表現については、松本さんに育まれたと言っても過言ではありません。
松本さん独自の美しく鋭い語感とリズム、そしてそれにふさわしい言葉の選び方はあの時代、とても個性的で、幼子であってもそれまでの職業作詞家の方々とまったく違うように感じましたけど、それは松本さんの詩が、インパクトの強い言葉はあえて選ばず、それぞれの言葉を立たせすぎることもなく緻密に紡がれていたためだと思っています。
それだからこそ、流して聴いている者にもストーリーがしっかり把握でき、まるで読み聞かせのように、理解を伴って胸にしみこんでいったのだと…。ホント、日本のうたの歌詩を物語へと昇華させたパイオニアですよね。
地方出身者としては、松本さんのお家芸と言える都会と田舎の対比にえらく感銘を受けたものですが、それもロック出身の東京っ子ならではの感性ではなかったでしょうか。ヤングな大衆文化を軸に大衆よりは一歩先ゆくトレンディーさというか、センスの光る小物づかいや情景描写にも憧れたものですけど、時にはさらさらと流れ、時にはビートを刻むような独特のリズム感は、やはりドラマーだったことが大きいのでしょうね。
メロディーに引きずられることのないポエトリーリーディングアルバムなら、そんなことも今一度確認できそうな気がします。
もちろん歌詩は曲があって初めて成立するものなので、この機会にあらためて松本作品をじっくりと味わってみたいもの。
手っ取り早いのは前述の風街図鑑シリーズですが、タイミング的にはちょうどミッチョンの復刻(こちらとこちら)もありますし、風街レジェンドに参加するアーティストの皆さんへの提供作などお好みでどうぞ。
松本さんって、太田裕美を手始めにアルバム構成もお手のものですが、現在CDで入手可能な松本隆アルバムのオススメは、女性では筒美先生もお好きだと言われた太田さんのコンセプチュアルな青春アルバムの名盤復刻「 手作りの画集
男性陣なら大滝御大が圧倒的だとは思いますが、みなぎる才能と少女漫画的ルックスに誰もが衝撃を受けた原田真二の「 Feel Happy
今回を機に再評価がますます高まり、一向に復刻されない近藤真彦の初期(7月には全曲伊達歩=伊集院静作品でまとめたセルフカバーアルバム「 三十五周年 近藤真彦×伊集院静=二十四曲 (完全生産限定盤)(DVD付)
(2015.5.22)
*99年のBOXを分冊にした「風街図鑑」2種と2009年の「新・風街図鑑」をパッケージングした通販限定商品「
風街図鑑 COMPLETE 1969-2009
」も2015年7月にアンコールプレスされます。