世界を席巻するシティポップのエッセンス！

　世界をも席巻する日本のシティポップブームの中でも、昨年からワールドワイドな大ヒットを記録しているのが、ご存じ松原みきさんのデビュー曲「真夜中のドア～stay with me」。
　世界のサブスクで大人気となり、インドネシアのYouTuber・Rainych（レイニッチ）によるカバーに後押しされ、Apple MusicにおけるJ-Popチャートでは12カ国で１位を獲得。47カ国でトップ10入りを果たすなど、リアルタイムを知っている世代には驚くべき状況となっております。
 
　この曲を作曲したのはご存じの林哲司さん。ヤマハ出身でキャリア50年。シンガー・ソングライターから作・編曲家に転身して才能を開花された方ですが、今夏には、ポニーキャニオン、ソニー、バップの3社から作品集（ こちらで紹介）もリリース。何度目かの再評価は大きなムーブメントとなっていますが、このタイミングで、みきさんの作品集も登場することになりました！
　その名もズバリ「 松原みき meets 林哲司」！
 
　1979年のデビューから88年発売のラストアルバムまで、デビューシングルのB面「そうして私が」、セカンドシングル「愛はエネルギー」や「Jazzy Night」、ビクター移籍後のラストシングル「IN THE ROOM」など、みきさんの楽曲の中で林さんが作曲や編曲を務めた全楽曲13曲をシングルバージョン優先で収録。
　これに、「真夜中のドア～stay with me」のUKジャズ＆ソウルの第一人者・Incognitoによるリミックスと、昭和ポップスブームの立役者である韓国のNight Tempoによるリエディットをプラス。
　ブックレットには、ライトメロウの金澤寿和さんのライナーノーツも掲載と、充実のコンピ盤になるようです。
 
　なお、みきさんのアナログ盤は、シングルアルバムとも今春、ポニーキャニオン版の POP（パッケージ・オーダー・プロジェクト）で実現（ こちらで紹介）したばかりですが、11月にはカラーレコードとなるシングル「 真夜中のドア～stay with me＜レコードの日対象商品/クリアブルー・ヴァイナル/初回限定盤＞」、ファーストアルバム「 POCKET PARK＜レコードの日対象商品/カラー・ヴァイナル/初回限定盤＞」に加え、ビクター音源の「 In The Room / ハートの鍵貸します＜レコードの日対象商品/初回生産限定盤＞」もアナログ発売されるとのことです。
 
　さて、「真夜中のドア～stay with me」アレンジはキャロル・ ベイヤ―・セイガーの「恋をしましょう」にヒントを得たといわれていますが、洋楽の真似をすることから始まった日本のシティポップが、巡り巡って世界的に評価されるなんて、当時の洋楽ファンからバカにされたことを覚えている世代にとっては隔世の感がありますよね。
　毎度申しておりますが、当時は邦楽を格下に見ていた音楽雑誌さえ、諸手を挙げて特集する時代になったことを思うといろいろ感慨深いモノがあります。
　換骨奪胎はいにしえから続く日本人のお家芸といいますか、まさに和魂洋才の面目躍如という気もしますし、思えば林さんは、その第一人者である筒美京平先生に目をかけられていた人物ですので、筒美先生もこの状況をお喜びではないでしょうか。
 
　余談ですが、これを機に林さんが初期（75年）に筒美作品のアレンジを手がけた南沙織の「 ひとねむり 」や天地真理の「 レイン・ステイション 」なども聴く人が増えることを願っておりますし、松本隆＋ユーミンコンビの処女作である太田裕美「 袋小路 」「 ひぐらし 」や、作曲も手がけた南沙織の「愛はめぐり逢いから」なども含め、林さんの作品集がもっともっと編まれることを願っております！