ナツメロ喫茶店

 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#1094
アグネス・チャン SMS時代オリジナルアルバム復刻 2タイトル
MESSAGE +3(BRIDGE-343)・Love me little Love me long +10(BRIDGE-344)
*2022.4.13発売、各¥2,750<税込>  ※4.6→4.13に発売延期

SMS時代は80年代へと突入!

 アグネス・チャン日本デビュー50周年を記念した、ブリッジからの紙ジャケアルバム復刻。
 ワーナー・パイオニア時代( こちらなどで紹介)からSMS(サウンズ・マーケッティング・システム)時代( こちらなどで紹介)へと順調に進み、今回はいよいよ80年代へと突入。第3弾は2タイトル「 MESSAGE (+3)」「 Love me little Love me long (+10)」、BOXでは一部がCD化されてはいますが、アルバムとしてはもちろん初CD化となります!
 
 78年にカムバックしたアグネスですが、たった2年の間に日本の芸能界は様変わり。「ピンク・レディーにお株を取られちゃった」というような発言も聞かれたことがありましたが、ファンも本人も予想しなかった展開となり、苦戦していたことは確かです。
 ナベプロの威力が落ちていた上、新レコード会社ということも大きかったのではないかと思いますが、人気絶頂のゴダイゴとコラボ企画を展開するも、起死回生とまではいかなかったのでした。
 
 当時はニューミュージックの全盛期で、月刊「明星」や「平凡」を見ても分かるように、NMのシンガー・ソングライターがアイドル的役割を果たしていた時代。ということも意識してか、アグネスもシンガー・ソングライターのイメージへとシフトしていくわけですが、元々がフォーキー路線で、歌謡曲とフォークをつなぐ功績を残してきたアーティスト志向だっただけに本人も意欲満々。
 実際、SMSへの移籍は寝耳に水だったというアグネスですが、以前からの優秀なスタッフ陣はそのままで、逆に自分の意見が通ってやりたいことができるようになったと喜んでいた記憶があります
 
 ということで、80年代のスタートにアグネスが選んだのは、自分の思ったことを自分で歌にして自分で歌うというシンガー・ソングライターとしての活動。しかも、自らの原点である香港のフォーク少女に戻ったような社会問題をテーマに歌うというものだったのです。
 そうして4月にリリースされたシングルが自作としては初めてシングルA面となった「ぼくの海/Children of the Sea」で、モチーフはベトナムやカンボジアから難民として逃れてきたボートピープル。きっかけは香港での「カンボジア難民救済コンサート」がきっかけだったといいますが、テレビでこの曲を歌う時はギターを片手に、まさに歌で愛と平和を説くメッセージシンガーといった風情でありました。
 
 今回復刻される「MESSAGE」は、その翌月にリリースされたもので、コンセプトはタイトルそのもののメッセージアルバム。よってシングル「ぼくの海」のB面にも入っていたアグネス作詞の英語版を含め、合計3曲の自作曲が収録されております。
 とはいえ、他の作家陣には、はしだのりひこ、吉川忠英、田山雅充といったフォーク系各氏に加え、デビュー曲からの森田公一先生の名も見え、“アグネスがあなたに贈る愛のメッセージアルバム”というほどのメッセージ性は感じられず。ライナーに記された本人の解説と併せて受け止めるという感じでしょうか。
 なお、今回はボーナストラックとしてシングル「ぼくの海」A面の日本語バージョンとオリカラが追加収録されるそうです。
 
 当時のメディアでは「ぼくの海」の制作背景を語ったり、チャリティーを呼びかけたり、アグネスの社会派イメージといいますか、後に国際的な文化人として羽ばたく素地がここで形成されたような気がしますが、セールス的には成功せず…。
 秋に出した次のシングル「シャイン・オン・ミー」ではポップ路線に戻り、かつてバックバンドだったムーンライダーズの岡田徹さんがアレンジに加わり、以前のパブリックイメージのアグネスらしい表情を見せるなど試行錯誤の印象もありましたっけ。
 これはシングル曲のヒットが必須だった当時の音楽ビジネスにとってはやむを得ないもので、特にナベプロのタレントにとっては絶対条件。何より新レコード会社の看板アーティストなのにヒットが出ないことは、かなり厳しい状態ではなかったでしょうか。
 
 結局はまたまたのイメージチェンジを余儀なくされ、81年3月には、台湾のシンガー・ソングライターが作ったというスケールの大きなシングル「原野牧歌」をリリース。モンゴルの遊牧民を思わせる衣装と、巡礼の鈴を鳴らすインパクトの強いパフォーマンスで勝負をかけます。その意気込みは、久々となる東京音楽祭国内大会にも出場を果たしたことでも分かるでしょう。
 このシングルと同じ乗馬のジャケット写真を使用し、帯でも「原野牧歌」が大々的にフィーチャーされたのが、翌月発売のアルバム「Love me little Love me long」。といっても「原野牧歌」だけが継子なので、大陸的な世界観を期待してしまうとガッカリするかもしれません。
 
 実は「原野牧歌」以外は岡田徹サウンドプロデュースで、久々にムーンライダーズがバッキングを担当。“すこしだけ愛して、いつまでも愛して…”という大原麗子のウイスキーのCMを思わせる自作のタイトル曲に加え、かしぶち哲郎作品なども収録され、一つ前の「シャイン・オン・ミー」を基調にしたトータルアルバムとなっているのです。
 当時のムーンライダーズはトレンドのテクノやニューウェイブへとシフトする頃でしたが、ここではアグネスと築いたカントリーポップを継承した雰囲気です。
 ボートラとしては、シングル「原野牧歌」のB面の中国語バージョンと、アルバム曲のオリカラ合わせて10曲が追加されるとのことです。 
 
 という今回の2タイトル。お次はクリスマスソング入りのハーフベスト「HALF TIME」を挟み、女性の時代を味方にして迷宮を抜ける傑作2作で、いよいよSMS時代も完結となります。
 山崎ハコの表題曲に加え、森山良子、CYNTHIA(南沙織)、麻丘めぐみ、太田裕美ら異色の顔合わせによる新生アグネスの意欲作「小さな質問」と、女性だけの制作にこだわり森山良子、りりィ、太田裕美、久保田早紀らの書き下ろしに加え、ユーミンや矢野顕子からの昔の提供曲も再録したセルフプロデュースアルバム「Girl Friends」は、セットで必聴の名盤ですので、楽しみに待つことにいたしましょう。
 

(2022.3.7)

 
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