各700枚限定、ヒロリンの初期名盤がSACD化！

　アマゾンがサブスクによるハイレゾ音楽配信「 Amazon Music HD 」をスタートさせるなど、世はまさにハイレゾ普及に向けてまっしぐら。とはいえ、パッケージ世代の我々にとっては、ジャケットを愛しみ、歌詞やライナーノーツも楽しめる音盤こそ、絶対に手放せない存在であることは確かです。
 
　巷ではハイレゾCDなる盤も登場しておりますが、高音質ものといえばやっぱりSACD（スーパーオーディオCD）。近年では、高級オーディオ専門誌としておなじみのステレオサウンド発の企画として、日本のポップスのSACDハイブリッド盤が相次いで発売。ソニーの松田聖子15タイトル（ こちらと こちらと こちらで紹介）、太田裕美4タイトル（ こちらと こちらで紹介）、ポニーキャニオンの尾崎亜美4タイトル（ こちらで紹介）などなど、好評を博したのは記憶に新しいところですが、ここに来て別チャネルから新たなタイトルのリリースも決定しました！
 
　なんと、岩崎宏美の「 あおぞら (+1)＜タワーレコード限定/完全生産限定盤＞」「 ファンタジー＜タワーレコード限定/完全生産限定盤＞ 」「 パンドラの小箱 (+4)＜タワーレコード限定/完全生産限定盤＞ 」「 10カラット・ダイヤモンド (+4)＜タワーレコード限定/完全生産限定盤＞」「 Wish (+6)＜タワーレコード限定/完全生産限定盤＞」という5タイトル！
 
　今回はステレオサウンドは協力という形で、リリースは近年ヒロリンの復刻盤供給を一手に引き受けているタワーレコードから。日本上陸40周年の記念企画としてラインアップされたのだそうです。
　ステレオサウンド発のタイトルに比べ価格帯は上がっておりますが、タワレコなら販路が広く、店舗でも通販でも気軽に買えますし、ポイントも貯まりますので、ヒロリンファンやコレクター諸氏にはむしろ大歓迎されるような気がします。
 
　せっかくですので、アルバムの内容を簡単に紹介しますと、まず「 あおぞら (+1)＜タワーレコード限定/完全生産限定盤＞」は、75年9月のファーストアルバム（オリコン4位）。
　昔は必死で隠していたオデコが唯一のぞくジャケットの初々しさもさることながら、天まで響くと称された歌唱力と、それに触発されたであろう楽曲のハイレベルさに尽きます。 
　デビューシングル「二重唱／月見草」とオリコン１位に輝いた第２弾「ロマンス／私たち」を手がけた阿久悠＋筒美京平コンビを筆頭に、千家和也、馬飼野康二、穂口雄右といった第一線の職業作家の先生方が、驚異の新人に期待を込めて贈った名曲がテンコ盛り。ヒロリンのデビューにあたって阿久さんは黒木真由美陣営だったため作詞を担当しない予定だったそうですから、千家＋穂口コンビの「愛をこめて」や「美しいあなた」はデビュー曲候補だったかもしれません。
　また、PTAも大推薦のヒロリンならでは、「涙のペア・ルック」など詩だけではちょっと陳腐で笑ってしまうような学園ソングも、初々しい生気にあふれていて、清々しいのひとこと。まだ硬くぎこちない感じも逆に魅力的ですよね。
　ドゥ・ザ・ハッスル！がベースの「ロマンス」や、ボートラとして収録されたサードシングルのB面「そうなのよ」も含め、ディスコタッチの雰囲気が次作への予兆となっていますね。 
 
　続く「 ファンタジー＜タワーレコード限定/完全生産限定盤＞ 」は、76年2月リリースのセカンドアルバム（オリコン2位）。大半が筒美京平作品でハズレ、捨て曲一切なし、今は亡き糸居五郎さんの名DJがイカす、ライドオン！なヒロミ・イン・筒美ディスコの傑作です。
　筒美先生に指摘されコンプレックスを感じていたという重ためのリズム感を、若さという押しのパワーで乗り切った、和風ブラックお嬢さんのステップを聴け！
　今となってはチープなシンセがクセになる「パピヨン」でチョウチョみたいに踊り、2枚目のオリコンNo.1シングルにして春の選抜高校野球入場行進曲にもなった「センチメンタル」でステップを踏んだ後は、モチのロンのチークタイム。「おしゃれな感情」「グッド・ナイト」でキマリですよね。 
　紙ジャケ復刻では各曲のDJ抜きバージョンがボートラ収録されましたが、今回はアルバムの統一感ということでしょう。オリジナル盤と同一の内容となっています。
 
　そしてちょっとブランクが空きますが、78年の「 パンドラの小箱 (+4)＜タワーレコード限定/完全生産限定盤＞ 」（オリコン11位）は、世界中がサタデー・ナイト・フィーバーする空前のディスコブームの中、全曲が筒美京平作品。久々の筒美がえりとなった、ヒロミ・イン筒美ディスコの集大成です。 
　インクルーディング・シングル「シンデレラ・ハネムーン／南南西の風の中で」がかすんでしまうほど、Dr.ドラゴンが大暴れ。阿木燿子、島武実といった新しい作詞家陣との相性もバッチリで、これまたハズレ、捨て曲一切なし、名曲のオンパレードです。
　大人の女声となった艶やかなヒロリンボイスも絶好調。いろんな意味で最高傑作と呼んでしまいましょうかね。確かCD-4盤が出ていたと思うんですけど、SACD層はその復刻だったらよかったのに と思ってしまいます。
　ボートラは、その後の筒美シングル「さよならの挽歌／夕暮れメヌエット」「春おぼろ／吐息ばかり」の4曲です。   
 
　お次は79年10月リリースの「 10カラット・ダイヤモンド (+4)＜タワーレコード限定/完全生産限定盤＞」（オリコン11位）。「万華鏡」が久々のオリコンTOP10入りを果たしたにもかかわらず、シングル曲を一切含まず、全曲をオリジナルで構成した意欲作です。
　デビュー以来ずっと作詞を手がけてきた阿久悠さんが休筆していた頃でもあり、阿木燿子、三浦徳子という女流作詞家を起用。ぐっとアダルトな世界を繰り広げております。 阿木燿子＋筒美京平コンビの「めぐり逢い伝説」「小夜曲(セレナーデ)」も濃ゆいです。
　ボートラは「夏に抱かれて／ラブ・アラベスク」「万華鏡／泣きながら目覚めて」という未収録シングルを補完しています。
 
　そして今回のラストは80年8月リリース、ロサンゼルス録音による筒美京平作品集の「 Wish (+6)＜タワーレコード限定/完全生産限定盤＞」（オリコン14位）。 
　バッキングは現地のミュージシャンで、楽器の響きとヒロリンの歌声の響きが国内録音にはない音でなんともゴージャス。初期のビクターの音も本当に素晴らしいのですが、今回最も音質の違いが確認できるのではないでしょうか。
　当時の最新シングル「女優」も新たにレコーディングし、作詞を担当した橋本淳、なかにし礼、山川啓介ら諸先生の艶っぽい世界観がオトナのヒロリンを演出していますが、ヒロリン自身も海外で解放された感じですよね。ジャケットに映った真っ赤なマニキュアがそれを象徴しているよう。 
　ボートラはアルバム未収録の「スローな愛がいいわ／白夜」「女優／レンガ通りの恋人たち」「銀河伝説／愛の生命」というシングル3枚です。 
 
　なお、今回の監修は音楽評論家の湯浅学さん、サウンド・スーパーバイザーとして、オリジナル盤のレコーディングエンジニアだった梅津達男さんも参加し、新マスタリングはビクタースタジオFLAIRの袴田剛史さんが担当。オリジナル・アナログ・マスターテープからの2019年最新リマスタリングで、時のサウンドをよりリアルに再現するSACD層はもとより、CD層でもこれまでのCDとは比較にならない高音質を実現しているそうです。
　仕様はステレオサウンド発のタイトルとは異なり、通常パッケージになるとのことですが、特別解説書付きですので、“定盤コレクション 2in1 YOUNG POPS FOR YOUNG ADULTS”シリーズや、Q盤の“定番COLLECTION”、紙ジャケ復刻盤やMEG-CD盤を持っていても、やっぱり買い増し決定ですよね。
 
　ということで、まだ硬さが残っていたデビュー当時の初々しい歌声が、のどが開いて天まで響くようになって、やがて濃密な艶と潤いが広がっていくというヒロリンの過程がつぶさに確認できそうなSACDハイブリッド盤。
　各タイトルたった700枚の生産限定ということで、即完売しそうな気がしますので、お早めにどうぞ！
 
　ちなみに来年はデビュー45周年で、最新作「Dear Friends VIII 筒美京平トリビュート」（ こちらで紹介）で頑張っているヒロリン。来月4日には、新宿二丁目のAiSOTOPE LOUNGEで開かれる岩崎宏美楽曲に限定したイベント、keiZiro presents「新宿おとあそび No.5どこを切っても宏美ちゃん♡ ～もうすぐ45 周年～」にもゲスト出演と、相変わらず精力的なので、旧譜だけでなく新たな活動にもますます期待です！