OMFの女王、初のコンプリートBOX！

　今も聴き継がれ、歌い継がれる名曲「異邦人」といえば、ご存じ伝説のシンガー・ソングライター、久保田早紀さんのデビュー曲。
　あの曲があまりにも偉大すぎたせいか、商業ベースの音楽活動にはわずか5年でピリオドを打ち、その後はキリスト教の音楽伝道者・久米小百合さんとして活躍されていますが、今年は1979年のデビューからちょうど40年。奇しくも“久保田早紀”が久々にクローズアップされる年となっております。
 
　そのきっかけとなったのが、今春出版された著書「 ふたりの異邦人 久保田早紀*久米小百合 自伝 」。真面目で正直な性格そのままに、いろんなエピソードが赤裸々に語られておりますが、この本のパブリシティーで記念のトーク＆ライブイベントが開かれたり、久米さん自身もさまざまなメディアの取材に応じたり、引退以来ここまで言及されるのは初めてではないかと思うほど、久保田早紀時代にもスポットライトが当てられたのですね。
 
　そして10月1日のデビュー記念日を過ぎたタイミングで、真打ちとも言える企画が発表となりました！
　久保田早紀時代が網羅された初のBOX「 久保田早紀／Saki Kubota PREMIUM 」が、ソニーミュージックのオーダーメイドファクトリーの新商品化候補に挙がったのです！
 
　内容は、まず79年から84年までの間にリリースしたオリジナルアルバム、すなわち底知れぬ埋蔵量を感じさせる衝撃のデビューアルバム「夢がたり」、ＳF＆オカルトで突き抜けた世界観の「天界」、本場のファドで初期路線を完結させた「サウダーデ」、久保田早紀にはイメチェンとなった久保田小百合的ポップ「エアメール・スペシャル」、模索の末シンガー・ソングライターの私小説を展開したシティポップ「見知らぬ人でなく」、ブルガリア旅行の末に自己解放した飛躍作「ネフェルティティ」、最終作にして“不思議の国の早紀”路線を確立した最高傑作「夜の底は柔らかな幻」という7タイトル。
　これに、さよなら公演となった「フェアウェル・コンサート」のライブ盤CD2枚と、ブルーレイを加えた計10枚組となっております。
 
　もちろん、「レンズ・アイ」「地球はコンサート・ホール」「ルシアン」「お友達／エルドラド」といったアルバム未収録のシングル曲をはじめ、別ミックスやバージョン違い、さらには未商品化だったNHK-FMのラジオドラマ主題歌「ドゥ・ユ・ラブ・ミー」という音源などのボーナストラックも収録。
　すべて紙ジャケで豪華ブックレットも付くという、まさにコンプリートBOXといいますか、OMFにとっても久々の大型企画となっております。
 
　これまでの久保田早紀作品の復刻状況を振り返ると、本当に感慨深いものがありますよね。
　一般には現役当時から一発屋的なとらえ方をされたせいで、復刻ブームが訪れても後期のアルバムが長らくCD化されなかったり、OMFが本格稼働する2004年まではホントに飢餓状態が続いてましたから。
　その分、OMFでは長年の鬱憤を晴らすかのように怒濤のごとく復刻が進み、後期のオリジナルアルバム３枚（「 見知らぬ人でなく 」「 ネフェルティティ 」「 夜の底は柔らかな幻 」）の初CD化や、「 フェアウェル・コンサート 」のDVD化もあっさり成功し、幾度となくアンコールプレスを繰り返しました。
　さらにはCD版「 フェアウエルコンサート 1984.11.26 （CD2枚組） 」 の初商品化も実現したり、常にリクエストがトップクラスで、ちゃんと数字が出るアーティストになっていたんですよね。
 
　この実績を受け、2007年には市販で全オリジナルアルバム7作が紙ジャケ復刻されましたけど、即完売。その後もOMFへの再発リクエストが数多く寄せられていたといいます。
　型番変更盤も蒐集するコレクターが多かったのか、ネットに触れていない隠れファンが多かったのか、はたまた再評価が再評価を呼んだのか、まさにオーダーメイドファクトリーの女王と呼べるほどで、現役時代より売れている感じです。
 
　後期の3タイトルとDVDはケイゾク販売されているので今も買えますし、90年から91年にかけてCD選書化されていた初期の4枚も、2013年に名盤復刻シリーズにラインアップ（「 夢がたり 」「 天界 」「 サウダーデ 」「 エアメール・スペシャル 」）され再復刻。
　ほかにも、アルバム未収録のシングル曲や久米小百合唯一のシングル「百万本のバラ」も聴ける「 CD&DVD THE BEST 久保田早紀シングルズ(DVD付) 」や、それを単品化した「 GOLDEN☆BEST/久保田早紀 シングルズ 」（シングルジャケットも復刻されていてオススメ！）を含め、久保田早紀の既発音源はCDパッケージ、配信（「 夢がたり」はハイレゾ配信も！）とも、すべて入手可能な状態が続いております。
 
　よって今さらBOXなんて…という人が多いかもしれませんが、侮るなかれ！
　今回、CDはすべてブルースペック2に、DVDはブルーレイにグレードアップ。すべて紙ジャケ仕様で復刻される上、ご本人といいますか、“元久保田早紀”の久米小百合さんも大々的に協力。フォトジェニックな写真も多数入るというブックレットには、今だから明かせる秘話が満載で、各アルバムについての語り下ろしセルフライナー、ディスコグラフィーなども掲載されるのです。
　久米さんは一時期、久保田早紀時代を完全に封印していた頃もあっただけに、まさに待てば海路のサプライズ。昨年、還暦を迎え、半世紀も著したタイミングだから実現できた40周年記念BOXといえそうです。
 
　いずれにしても単なるアンソロジーではなく、ファンであればあるほど堪能できるBOXといえそう。ブックレットを読みながら聴けば、いわば“久米小百合と聴く久保田早紀”という夢のような楽しみ方もできるんじゃないでしょうか。
 
　なお、先着特典として、デビュー当時の宣材の復刻（「異邦人」と「天界」の販促用パンフレット復刻版）も付くそうですので、やっぱり早めのご予約を！