ナツメロ喫茶店

 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#954
桜田淳子 ライブアルバム全7タイトル <配信限定>
16才のリサイタルビバ!セブンティーン リサイタル2青春讃歌・桜田淳子リサイタル3 ライブリサイタル4 ~ラブ・トゥゲザー~*・LIVE! 淳子リサイタル5淳子スーパー・ライブ リサイタル6私小説<らいぶ!! 博品館劇場実況録音盤>
*2019.7.3配信開始、各¥1,800〜(*印は¥2,400〜)、単曲購入可能(各¥250)、Apple Musicなどストリーミング配信にも対応

天才エンターティナー、若き淳子の真骨頂!

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 令和になって初めての夏。今年いっぱいでの引退を発表したマコは記念の全集( こちらで紹介)をリリースし、百恵ちゃんは30数年間にわたって制作したキルトの作品集「 時間(とき)の花束 Bouquet du temps [幸せな出逢いに包まれて] 」を刊行。はてさて花のトリオのもう1人、淳子は何もなしなのか…とため息をついていましたら、なんとライブアルバム全7タイトルの配信がスタート! 三者三様の魅力を競い合った、あの昭和の夏に戻ったかのようなうれしさを感じております。
 
 淳子にとって(百恵ちゃんも)昨年はデビュー45周年でしたが、それを記念し、まさかの新録音ニューアルバム「 マイ・アイドロジー 」を自主制作で発表したのは記憶に新しいところ。
 「さよならのかわりに」と言って去った百惠ちゃんに対し、「ありがとうのかわりに」と言って復活した淳子。もうこの事実だけでひどくコーフンしたものですが、アルバムには自ら作詞作曲した新曲「ありがとうのかわりに」やかつてのヒット曲のセルフカバーに加え、涙なしには聴けない朗読「手紙~親愛なる子供たちへ~」(秋田弁バージョンは必聴!)も収録。ブランクなど淳子の辞書にはない!といわんばかりの輝きに加え、年輪を刻んだ分味わいを増した表現力に舌を巻いたことでした。
 
 さらに東京・銀座博品館劇場で記念のライブイベント「“マイ・アイドロジー”スペシャル~ありがとうのかわりに」は、短いながらも歌謡曲黄金時代のスターとしての格を見せつける圧巻のステージだったそうで、往年のファンを感動の渦に巻き込みました。
 昔から「淳子は板の上でこそ本領を発揮する」と言われていたものですが、その才能が衰えていないことを証明した出来事(淳子の場合、才能だけでなく努力に努力を重ねた結果なのはファンならご存じですよネ)ではなかったかと思います。
 
 また、ビクターからは、ライブ音源を中心に初商品化のラジオ音源や歌唱映像をまとめたCD&DVDセット「Thanks45 ~しあわせの青い鳥 [THE LIVE ANTHOLOGY] 」( こちらで紹介)がリリースされ、板の上の淳子の再評価は久々に高まったようですが、あれは淳子のステージングのごくごく一部をつまんだダイジェスト。であるからして、フルで聴きたいと思う人もきっと多かったと思うんですよね。
 
 ライブBOXの再発は難しくとも、ヒロリンのようにMEG-CD(CDもタワーレコード限定で再発されました)でも出ないかなと思っていましたら、ここに来ての配信開始。未聴の方は、ぜひこの機会にダウンロードしていただきたいと思っております。

 なぜなら、淳子のライブアルバムは、美貌と演劇的素養に恵まれた少女が、トップアイドルという座に溺れることなく努力に努力を重ね、一流のエンターティナーへと成長を遂げる軌跡を綴った貴重な資料。
 ステージの上でこそ最も光り輝いた桜田淳子というシンガーの歩みをつぶさに記録したというだけでなく、その才能と実力が疑う余地のないものであったことの証拠だと思うのです。
 誤解を恐れずに言えば、淳子の芸はどんな理由があろうと閉ざされるべきものではなかったと、今ならば証明できそうな気がします。70年代いや今日に至るまで、アイドルと呼ばれた人が、自身のアイドル時代には誰一人到達することができなかった世界なのですから。

 と淳子のこととなるといちいちオーバーになってしまいますが、それもまた淳子的とご容赦いただくことにして、コピペではありますが内容の詳細をば。

 まずは、74年12月リリースの「 16才のリサイタル(Live at 渋谷公会堂 1974/10/19) 」。これは10月に渋谷公会堂で行われた第1回リサイタルの実況録音盤です。
 日テレ出身らしく司会が徳光さんというのも一興。初めて聴いたら陳腐かもしれないけど、当時の歌手興業って司会とセットは当たり前。ワンマンショーが珍しいからそういう名詞があったのですしね。で、バックを務めるのは、おなじみダン池田とニューブリードの面々。アレンジはほぼ全曲が服部克久さんと、淳子のリサイタルは一流ミュージシャンのサポートのもと華やかにスタートしたのでありました。ライブなのにドリーミーなミックスにも注目です。
 ヒット曲をつないだ演奏「オーバーチュア」を経て、“逢える、逢えない…”と「花占い」の台詞から始まる凄さ。もちろんこれは当時の最新ヒットだからなのですが、今となっては驚くほど象徴的ですよね。常に昨日の自分を超えることを目標にしていた淳子は、「太陽のとびら」「トップ・オブ・ザ・ワールド」「天使のささやき」などのソウルやスタンダードを含む洋楽にもチャレンジ。国際的な活躍やものまねも披露するなど、MCを含め生真面目で楽しいリサイタルの模様がしっかり収録されています。注目すべきは、初期のステージでは定番だったアルバム曲「涙はたいせつに」の涙でしょう。
 なお、CDには収録されていたボートラ(淳子がお兄さんと慕いサンミュージック入りを決めるきっかけとなったモリケンこと森田健作とのショーのサントラから)は今回入っておりません。
 
 続く75年12月発売の「 ビバ!セブンティーン リサイタル2(Live at 文京公会堂 1975/10/26) 」は、10月に東京文京公会堂で開かれた「17才のリサイタル」を収録したもの。
 デッドヒートの末百恵ちゃんを抜いた年ですが、その勢いを映すようにぐんとダイナミックになったステージ。“淳子、17才の愛と歌と青春!そのすべてをひたむきに歌いこむライブ!! ”というオビのコピー通り、荒削りだけど体当たりの、まさしく淳子的なライブです。第1回と同じバックを従え、60年代の洋楽曲や「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」といったヒット曲にも挑戦。何を歌っても、すべて淳子節なのが素晴らしいですね。
 優れた合唱曲として知られる「遙かな友に」や、リサイタル用に書かれたと思われる「心のページに」の感動的なこと。確かに今聴くと大仰で芝居がかってはいますし、心ない人たちは既にこの頃から「わざとらしい」と非難していましたが、「そんなことない!淳子は一生懸命なだけ!」とかばいたくなってしまいますね。
 
 76年9月の「 青春讃歌・桜田淳子リサイタル3 ライブ (Live at 中野サンプラザ 1976/7/26) 」は、名実ともにトップアイドルの座に上り詰めた時期の自信に満ちた淳子の世界。7月に東京・中野サンプラザからスタートした全国縦断リサイタル初日を収録したもので、レコードは2枚組でしたがCDは1枚でしたので、配信でもお得となっています。
 “青春…って、悲しかったり、うれしかったりするバカ正直な季節……きいて下さい!のってる淳子を”というコピーの素晴らしいこと。ワタシ、淳子のLPの帯コピーって、ホントにお見事だと思っていますが、コレは特に好きなフレーズでした。
 バカラックやビートルズなどの洋楽カバーから、「夏にご用心」「ねえ!気がついてよ」といった最新ヒット曲やフォークヒットなどでまとめられています。自作詩の「かあさん」も披露。お客さんを楽しませることに徹し、サプライズたっぷりのショーにしようという意気込みが感じられます。バックは今城嘉信とザ・コンソレーション。
 
 そして77年11月に出た「 リサイタル4 ~ラブ・トゥゲザー~(Live at 東京郵便貯金ホール 1977/9/14) 」。9月に東京・芝の郵便貯金ホールで開いた同名リサイタルを収録の2枚組。このタイトルのみ配信でも2枚組のお値段となっています。
 帯には “「淳子の19年間」をあなたに洗いざらいおしえまショー!心で歌い、心で応援されて!心のふれあいをつくった、素晴らしいステージになれたと信じています。”と記されていますが、まさにその通り! アイドルとして駆け抜けた4年半を総括しているような充実ぶりなのです。
 「しあわせ芝居」で歌手開眼する淳子ですが、その予告編というか感じが如実に表れていて、ここがターニングポイントのよう。洋邦のカバーにリサイタル用のオリジナル、自身の新旧ヒット曲をうまく織り込んでショーアップされたステージは、若きエンターティナー・淳子のすべて。スタジオ録音では徐々に聴きづらくなってきたあの声も、一切気にならないほど魅力的。その後の成長を予感させる仕上がりとなっていますね。
 等身大、素顔の淳子ストーリーも散りばめられ、「悲しきサルッコちゃん」「30年後のゆれてる私」などコミカルな要素もふんだん。ステージ進行とか、本格ミュージカルっぽい流れとか、映像で見たくなってしまうライブですね。
 
 ところで、こういう華のあるステージを見せるため、淳子が努力に努力を重ねてきたことは今さら言うまでもありませんが、エンターティナーの素質として忘れてはならない大きな要素がファッションセンスだと思います。
 スレンダーでスタイル抜群だったこともありますが、淳子の洋服ってミドルティーンの頃から多くの女の子に注目されていました(74年の紅白の3ショットを見よ)。「田舎出のコだから必死に頑張ってるんだよ」なんていうイヤな陰口があったのも知ってはいますが、この頃の淳子は私服も常にカッコよかったですし、雑誌とかのベスト・ドレッサー特集では必ず名前が挙がっていたように記憶してます。
 天性の美貌はさておき、こういう自己演出とか、人前での変身の面白さを自覚し、それを積極的に見せていた女の子だからこそ、そこに努力で身につけた実力が加われば鬼に金棒。同世代の歌手が束になってもかなわなかったのは当たり前だと思います。
 事実、百恵ちゃんをはじめ同世代の女の子たちはみな、淳子にはかなわないと思っていたワケですしね。
 
 78年11月発売の「 LIVE! 淳子リサイタル5(Live at 東京郵便貯金ホール 1978/9/17) 」。コレも東京・芝の郵便貯金ホールで、収録は9月。前年暮れから「しあわせ芝居」のヒットで新境地を切り開いた淳子の脂は乗り切って、ある意味最高潮を迎えたことをひしひしと感じます。
 セールス的にも全盛期を過ぎたため1枚ものとなっていて、オリジナルは中島みゆき提供の2曲だけなのが残念ではありますが、コンサートの幕開けの定番となる「序曲」から始まるリサイタルはショーガール淳子の独壇場。最新ディスコの要素も散りばめ、フィーバーする淳子の汗が輝いて見えるようにエネルギッシュです。
 淳子のステージには欠かせなくなった今城嘉信とザ・コンソレーションとの息もぴったり。プロ同士の心を合わせたステージングこそライブの醍醐味ですね。
 
 続く79年12月発売の「 淳子スーパー・ライブ リサイタル6(Live at 渋谷公会堂 1979/9/8) 」は、恒例のリサイタルのライブ盤としてはラストにして集大成。
 “ようこそ淳子の舞台(ステージ)へ これからのひとときが、あなたにとって楽しい時でありますよう、 舞台から祈りを込めて歌います。”とあるように、このアルバムの淳子はとってもエレガントです。エンターティナーとして洗練の極みに到達したと言っていいほどの流れです。
 EW&Fの「セプテンバー」を皮切りに、ディスコあり、バラードあり、ヒット曲ありの構成ですが、歌がとか、声がとか、そんなことはもうどうでもよくなるほど美しい。ステージでの所作というか、美しい立ち居振る舞いが見えずとも手に取るように分かるんですよね。淳子の真実と善行、そして美しさを感じるまことに正統なリサイタルと言えるでしょう。スキャットの「デイ・ドン」を含め後半のディスコヒッツ&淳子ヒットメドレーは圧巻のひとことです。ホント1枚ものだったのが惜しい限りです…。
 
 そして、大きなリサイタルから小さなライブへ。これまでとは一変したラストのライブ盤が80年7月リリースの「 私小説 <らいぶ!!博品館劇場実況録音盤> 」。今も淳子が愛してやまない銀座・博品館劇場で5月に行われた“桜田淳子らいぶ”の実況録音盤です。
 小劇場ならではの雰囲気と相まって、観客は淳子の部屋に訪れたゲスト。タイトルや“素顔の淳子の心を語り、そして歌います!!”というコピーの通り、淳子自身が背伸びせず、リラックスして楽しんでいる雰囲気。レコードを聴いている人でさえ、彼女と会話しているような錯覚を覚えてしまうことでしょう。幕が下りた後は、震えるような余韻と、静かな感動に包まれる、淳子の最高傑作といえる名盤です。
 大舞台もいいけれど、小さなハコならは神々しいまでの魅力となりますよね。目を閉じて聴いていると、照明なんかいらないほど光り輝く淳子が見えるよう…。選曲も、ジャニス・イアンのしっとりしたバラードをメインに、洋邦のスタンダード、ユーミンや大滝詠一作のお気に入りソングまで、どれもが淳子の心を映し出したものばかり。いいえ、歌というよりも、絶妙の間をもって繰り広げられる一人芝居なのかもしれません。
 さて、当時の最新シングル「美しい夏」は百恵ちゃんらしき人が出てくると話題になった歌ですが、それを歌った後、「秋桜」を披露する心憎さ。若き日に“悩みを打ち明け合った涼しい目をしたあの人”の歌が、淳子ならではの解釈で味わえるのも、このライブの醍醐味でしょう。
 余談ですが、百恵ちゃんのライブBOX「MOMOE LIVE PREMIUM」も昨年末にリニューアル再発( こちらで紹介)されたばかり。今回2人のライブ盤を年代を重ねて聴き比べると、パブリックイメージとは異なる資質と才能の差が分かって面白いかもしれません。
 
 という淳子のライブ。毎度申し上げていますが、忘れてはならないのが、最年長時の音源でも弱冠22才だったということ。初期の真面目でひたむきで、肩に力が入って鼻を膨らませて頑張る淳子も目が離せませんが、20才あたりからの若き円熟と申しますか、ベテランの域に達するほど貫禄たっぷりなのに、可憐で初々しくいじらしかった淳子も素敵です。
 ペーソスとユーモアにあふれたミュージカルスターか、ナチュラルなのに手が届かない高嶺のアクトレス・シンガーか。そんな風に思わせる上品で華麗な淳子を堪能できること請け合い。 天才が努力を重ねればどうなるか、その実証と言ってもいいほどの仕上がりだと心から思っております。
 
 ホント繰り返しになりますが、未聴の方がいらっしゃいましたら後半、「淳子スーパー・ライブ リサイタル6」と「私小説」だけでもいいですので、ぜひお聴きください。
 ということで最後はいつものように、高校卒業記念で出たLP-BOXの帯コピーで締めくくりましょう。やっぱり淳子って素晴らしい!!
 
 
 

(2019.7.5)

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