オススメ復刻盤「松田聖子 SACD(ハイブリッド盤) 第2期6タイトル 」


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 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#760

松田聖子 SACD(ハイブリッド盤) 第2期6タイトル <ステレオサウンド独占販売>

第4弾:North Wind(SSMS-007)・Silhouette(SSMS-008)、2015.8.28発売
第5弾:Canary(SSMS-009)・Tinker Bell(SSMS-010)、2015.9.30発売
第6弾:Windy Shadow(SSMS-011)・The 9th Wave(SSMS-012)、2015.10.30発売   *各¥3,500+税、SACD/CD ハイブリッド盤

大反響の第2弾!今回も完売必至の聖子SACD!

 昨秋、高級オーディオ専門誌としておなじみのステレオサウンドと、ソニー・ミュージックダイレクトによる独自企画として、話題を独占した松田聖子の初SACD(スーパーオーディオCD)ハイブリッド盤(こちらで紹介)。

 ステレオサウンド独占販売ということで取り扱い店も制限され、ステレオサウンドストアの通販や一部オーディオショップのみということでしたが、さすがは聖子のSACD。
 限定販売ということもあってか大反響を巻き起こし、人気タイトルはまたたく間に完売。それがさらにコレクター熱やせどり熱を高めたようで、当初の契約になかったであろう再プレスを重ねたりして。それでもなお完売するタイトルが出ましたが、やっぱりアナログマスターからダイレクトにDSD変換したというSACDでは、聖子の歌が驚くほど良く聴こえたということが最大の要因でしょう。

 一方、本丸のソニーミュージックでは、まるでタイミングを計ったようにハイレゾ配信をスタート。ベスト盤のほか、ソニー時代のオリジナルアルバム32作、全309曲を毎月5タイトルずつ配信するという企画を立ち上げたのです。
 ハイレゾブームの追い風を受け、こちらも驚異的なセールスを記録したといいますが、この一連のムーブメントは、まさに松田聖子が80年代を代表するアルバムアーティストであることを証明した出来事でした。

 ソニーの象徴であったウォークマンのキャラクターに、聖子が起用された頃。世界のソニー、ソニーの聖子というブランドの輝きは、オーディオファンさえ魅了していたものですが、なんだか往時を思わせるような雰囲気に、個人的にもハイレゾ対応の環境を整えてしまったりして。このへんも、CDやMDの普及に貢献したソニーの聖子健在、という気がします。

 さて、そのハイレゾ化の方は6月にめでたく完結しましたが、その終了を受けたかのように、ステレオサウンド・SACDハイブリッド盤第2弾のリリースが発表されました!

 「North Wind」「Silhouette~シルエット~」「Canary」「Tinker Bell」「Windy Shadow」「The 9th Wave」という6タイトル、今回も2枚ずつ3カ月にわたって、ステレオサウンドストアのホームページをはじめとする通販や一部オーディオショップのみでの限定販売となっております。

 初期の飛ばされた2枚をはじめ、タイトルによってなんとなく人気が分かれそうな気がしますけど、あらためてご紹介しましょうか。

 まずは80年12月発売、聖子がアルバムでは初めてオリコン1位を獲得したセカンド「North Wind」。
 初期聖子のイメージを確立した三浦徳子+小田裕一郎コンビが全面参加。初のオリコンNo.1シングル「風は秋色/Eighteen」をフィーチャーし、初期のコンサートではラストの定番曲だった「Only My Love」がアルバム代表曲となっていますが、特筆すべきはポップロック、ボッサ、AOR、フォルクローレなどを歌謡曲と巧みにクロスオーバーさせたり、流行の洋楽のフレーズを取り入れたり、サウンド的にも実験作が満載な点。
 前回飛ばされただけあって、あんまり話題に上ることがありませんが、上り調子のムードと合わせて、初期3枚の中では突出した出来ではないかと思います。

 81年、財津和夫さん作のシングル「チェリー・ブラッサム」をきっかけに、ニューミュージック的な色づけが始まる聖子ですが、続くサード「SILHOUETTE~シルエット~」は、確かにニューミュージックの萌芽は感じるものの、どっちつかずの境界線を行ったり来たりする過渡期的なアルバムといえるでしょう。当時の印象としては、三浦+小田コンビもデビューの頃の新鮮さが薄くなってきて、ちょっと野暮ったく聴こえてしまったのは事実です。
 しかし、このアルバムで最も重要な点は、何と言っても「白い貝のブローチ」が収録されていること。そう、松本隆さんとの邂逅という記念すべきアルバムになったことなのです。

 そして間は飛んで、松本さんがブレーンとなって最も脂が乗った時期、83年12月の「Canary」。
 夏に出たシングル「ガラスの林檎」が「SWEET MEMORIES」とのA面差し替えで1位に返り咲き、ユーミン作の新曲「瞳はダイアモンド/蒼いフォトグラフ」とともにランクイン。名実ともにピークを迎えた頃のリリースでしたが、かつてないほどの陰鬱さも孕み、聖子には珍しい陰影に富んだアルバムとなっています。
 シティポップな林哲司作品の光よりも来生たかお作品の影が勝っているような印象ですが、その代表作が「WING」「Silvery Moonlight」。松本さんの詩もですね、当時の女性意識を等身大で表現していて、打算的ではないけど利己的な自己主張が魅力的。大村雅朗さんのいかにも80年代半ば的な先進サウンドも秀逸だし、当時の聖子では希有な感情を込め過ぎた歌唱も相まって、個人的にはSACDで最も聴き応えのあるボーカルではないかと思っております。

 84年ともなると、聖子のキャンディボイスは完成。怖いものなしのはずですが、ユーミンが「Rock'n Rouge」を作る際、松本さんに指摘したように、行き詰まり感があるのは確かです。
 結局、それが松本さんをフェアリーテール「Tinker Bell」の世界へと逃避させたのかもしれませんが、奇しくも世には新しいファンタジーが次々に生まれていた頃。東京ディズニーランドしかり、ファミコンしかり、世相を映したアルバムとなったのでした。
 ここでのポイントは、松本さんが描いたのは単なる童話絵本の挿絵ではなく、ディズニーの上質なアニメーションだったように思うこと。世界中で愛されるディズニーブランドが日本で展開したのは、東京ディズニーランドと松田聖子。そんな錯覚を覚える程ですが、のちのコンサートでミニーマウスに扮しただけでなく、ディズニービデオのCMに出たり、イメージソングを歌ったりと神田沙也加ともども本家と実際にタイアップしていくワケですからね。
 しかも、このコンセプトはセルフ聖子にも脈々と受け継がれ、2015年の新作「 Bibbidi-Bobbidi-Boo 」にもつながっているのですから、何とも感慨深いものがあります。
 楽曲では昔からの人気バラード「Sleeping Beauty」が抜きんでていますが、予告編のように起用された尾崎亜美作品「いそしぎの島」も佳曲です。余談ですが「不思議な少年」を書いた南佳孝が同時期出したアルバム「 冒険王 」は、松本さん渾身、コンセプトを一にする兄妹作です。

 さて、この頃から嶋田ちあきメイクによるビジュアル的な変化も含め、年齢不詳の美魔女というか、“本当は怖い童話”みたいな雰囲気を身にまとい始めた聖子。
 コンサバからアバンギャルドへ、女性がお手本として崇めるファッションリーダー的な要素も一段とアップしていきましたが、そういうアグレッシブさが極まったのが、84年12月発表の「Windy Shadow」でしょう。
 他のアイドルの誰も歌えなかったワンナイトスタンドソング「マンハッタンでブレックファスト」を筆頭に、衣装とヘアメイク同様、歌の世界でも奔放さは増し自由化がさらに進みました。
 注目すべきはラストの「Star」。ノンフィクション的で感動的なバラードとも言えますが、言い換えるとスター歌手の涙と栄光、哀しい宿命を歌うような、ザ・芸能界、ショウビズソングとなっております。

 そして、怒濤の85年。正味2カ月半ほどの間に、衝撃の別離会見から恋人宣言、婚約発表までを繰り広げ、世間をあっと驚かせた聖子。歌の方ではいったん松本さんから離れ、尾崎亜美作品「天使のウインク」を大ヒットさせますが、6月、聖輝の結婚直前にリリースされたのが独身最後のレギュラー・オリアル「 The 9th Wave 」。
 男女雇用機会均等時代の到来で、新しい女性の生き方が叫ばれ始めたとはいっても、女性としての幸せはやっぱり結婚という概念が主流だったのですから。事実、聖子自身も結婚して、最初は百恵ちゃんのように引退するつもりだったといいます。

 このアルバムでは、そんな背景や心情を反映させたのか、女性が中心となった楽曲制作。尾崎亜美を中心に矢野顕子、大貫妙子、吉田美奈子ら超個性的な女性シンガー・ソングライターが参加。作曲には原田真二、甲斐よしひろ、杉真理といった聖子作品にはおなじみの男性たちが名を連ねているものの、作詞は銀色夏生や来生えつこという職業作詞家を含め女性陣のみで固められています。
 個人的には、今も昔も「Vacancy」「星空のストーリー」という各面1曲目がお気に入りですが、特筆すべきは最高潮に達し、虚無的なわびさびさえ感じさせる聖子ボイス。
 ダイアモンドの4Cをすべて兼ね備えたようなあの声で、いずれも本当の女性だから書き得た感覚的な歌詞をなぞっていくものですから、マリッジ・ブルーのゆらぎみたいな実体のない感情ですら形象化して聴こえてしまうのですね。

 松本さん不参加であり、楽曲の個性にバラツキがあるせいか、聖子ヒストリーにおいてこのアルバムはすき間に埋もれてしまったような扱いを受けていますが、継子は継子であっても、宇宙の神秘といいますか奇跡的な真理がパッケージされているような気がします。

 という今回の聖子のSACD。今回も完売必至だと思いますので、入手を迷う方も、とりいそぎ予約を入れとくのが賢明ですぞ。
 なお、これから聖子コレクションを始めようという方で、いきなりハイブリッド盤に手が出ない場合は、お求めやすい廉価盤のブルスペ2(こちらで紹介)をどうぞ。

 とにもかくにも、今年は松本さんの45周年で聖子との関係があらためて見直されましたし、なんと秋には松本さん、ユーミン&マンタ、聖子のコラボ復活*が実現するそうですからね。
 原点であるこの時代の聖子を聴き直して、新たな展開を待ちたいと思います!


(2015.7.10)


*デビュー35周年特別企画として、作詞・松本隆、作曲・呉田軽穂(松任谷由実)、編曲・松任谷正隆による奇跡の再コラボレーションシングル「永遠のもっと果てまで」は2015年10月28日発売決定!
 ● 初回限定盤A :CD+DVD (※DVD内容:「永遠のもっと果てまで」ミュージックビデオ収録予定)
 ● 初回限定盤B :CD+35th Anniversary特製ジャケット仕様(シングルレコードサイズジャケット)+封入ポスター+封入ブロマイド(1種)
 ● 初回限定盤C :カセットテープのみ (※35th Anniversary 完全限定 カセットテープ)
 ● 通常盤 :CDのみ

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