各700枚限定、ヒロリンのSACD復刻第3弾！

　タワーレコード日本上陸40周年の記念企画として、昨年11月から続々リリースされている岩崎宏美さんのSACDハイブリッド盤。
　ご存じステレオサウンドとのコラボ企画につき、ステレオサウンド直販ものに比べ価格帯は上がっておりますが、タワレコの店舗でも通販でも気軽に買える上、ポイントも貯まりますし、通販でもセブンイレブン受け取りにすれば送料ゼロと、ヒロリンファンやコレクター諸氏には歓迎されているようです。
 
　2カ月ごとに小出しにリリースされるのも懐に優しい感じがしておりますが、第１弾5タイトル（ こちらで紹介）、第２弾３タイトル（ こちらで紹介）に続き、この3月には第3弾3タイトル「 すみれ色の涙から…＜タワーレコード限定/完全限定盤＞」「 夕暮れから…ひとり＜タワーレコード限定/完全限定盤＞」「 I Won't Break Your Heart＜タワーレコード限定/完全限定盤＞」の発売が決定しました！ 
 
　音源的にはオリジナルアルバム・紙ジャケットコレクション、MEG-CD、そしてタワレコ限定の紙ジャケ再発などで復刻を重ねてきたタイトルではありますが、やはりSACDハイブリッド盤で聴くヒロリンの美声とビクターのサウンドは格別。
 
　シリーズを通して、音楽評論家の湯浅学さんが監修。サウンド・スーパーバイザーとして、オリジナル盤のレコーディングエンジニアだった梅津達男さんも参加し、新マスタリングはビクタースタジオFLAIRの袴田剛史さんが担当。オリジナル・アナログ・マスターテープからの2019年最新リマスタリングで、時のサウンドをよりリアルに再現するSACD層はもとより、CD層でもこれまでのCDとは比較にならない高音質を実現しています。  
　仕様はステレオサウンド発のタイトルとは異なり通常パッケージですが、特別解説書付き。 今回も各タイトルたった700枚の生産限定ということなので、 買い替え、買い増しを検討している人は、お早めに。
 
　ということで、今回の発売タイトルもカンタンにご紹介しましょう。 
 
　まずは1981年11月発売の「 すみれ色の涙から…＜タワーレコード限定/完全限定盤＞」（オリコン最高16位）。
　80年前後からニューミュージック全盛やアイドル世代交代などの影響を受け、初期のような大ヒットを連発することが難しくなってきたヒロリン。高度な歌唱テクニックを駆使して1作ごとに作風を変えていきましたが、久々のトップ10ヒットとなったのは、ブルーコメッツのシンプルな隠れ名曲をカバーした「すみれ色の涙」でした。
　同時期にチャートをにぎわせた石川ひとみ「まちぶせ」などとともに歌謡界にリバイバルブームを巻き起こし、廃盤ブームに火を付けることに貢献しましたが、その流れを受けてリリースされたカバーアルバムがコレ。
 
　「すみれ色の涙」のイメージの延長線上といいますか、フォーク系バラードが中心で、全曲萩田光雄アレンジによってトータル的なバランスもバッチリ。
　ビクターの大先輩である荒木一郎「空に星があるように」から、ビリーバンバンの「さよならをするために」、ブレッド＆バター「ともしび」といった日本テレビ系ドラマ主題歌や、もとまろ「サルビアの花」、小椋佳「少しは私に愛を下さい」、シグナルの「20歳のめぐり逢い」など全般的にシブめのチョイス。ユーミンの「卒業写真」（オリジナル歌手はハイ・ファイ・セット）や大滝詠一の「夢で逢えたら」（吉田美奈子）といった今ではスタンダードナンバーとなった名曲もありますが、レオ・セイヤーをカバーした甲斐バンドの「吟遊詩人の唄 (One Man Band)」など、ヒロリンの好みも反映された選曲の妙が楽しめます。
 
 　なお、ボートラとしては、当初オリアルの予定がベスト盤になってしまったという「EXCEL ONE 岩崎宏美のすべて」から、アルバム未収録曲4曲と「万華鏡」のニュー・バージョンを収録。 
　ちなみにこのアルバムは“YOUNG POPS FOR YOUNG ADULT”２ in One定番コレクションやＱ盤・定盤COLLECTIONにはラインアップされませんでしたが、92年に通販限定で発売された5枚組BOX「岩崎宏美全集」の1枚として初CD化。紙ジャケ復刻されるまでは貴重なBOXとして随時追加プレスされていました。
 
　次は82年7月リリースの「 夕暮れから…ひとり＜タワーレコード限定/完全限定盤＞」（オリコン4位）。
　松本隆作詞のスマッシュヒット「檸檬」をオープニングにした歌謡ポップスの世界が広がっていますが、目玉は何と言っても火曜サスペンス劇場のテーマ曲としてメガヒットを記録し、日本歌謡大賞に輝いた「聖母たちのララバイ」のオリジナル（TVバージョン）。
　火サスのラストを思い出しながら聴くのも一興ですが、当時、多くの人がシングルバージョンのアレンジにガッカリしていたような印象がありますから、違いを再確認してみるのもこのアルバムの醍醐味でしょう。
 
　康珍化、鈴木キサブロー、亀井登志夫、林哲司といった新しい作家陣、アレンジに起用した大村雅朗、清水信之、大村憲司らのニューサウンドにも注目。ノリに乗って脂ものった歌唱が堪能できる1枚です。 大ヒットアルバムなのに、初CD化は2007年の紙ジャケでした。
　ボートラはアルバム未収録のシングル「れんげ草の恋／悲しみのほとり」「影絵(シルエット)」「聖母たちのララバイ／赤い糸」を収録。
  
　最後は84年4月発売、デビッド・フォスターら錚々たる一流ミュージシャンが参加したロサンジェルス録音盤「 I Won't Break Your Heart＜タワーレコード限定/完全限定盤＞」（オリコン39位）。
　本場のAORサウンドにも引けを取らないボーカルは、さすが日本が誇る若手実力派シンガー、ヒロミ・イワサキ。デビュー時から声の艶そのものに黒っぽさのあったヒロリンですから、あちらのモノホンのサウンドをバックにすると余計に引き立つような気がします。 
　なんとシカゴのビル・チャンプリンを相手に堂々としたデュエットも披露。幾分優等生すぎるきらいはありますが、「日本にだってこういう歌手がいるんですよ！」と世界に胸を張って言いたくなるようなアルバムです。 
 
　90年代のビクターのQ盤シリーズ・定番コレクションのラインアップから漏れていたこともあり、当初のオリジナルCDにはビックリするようなプレミア価格がついていましたので、こうしていい音で気軽に聴ける時代になってホントよかったと思います。
　ボートラは「20の恋／眠りの船」「未完の肖像／二時に泣かせて」「橋／逃亡者」という３枚のシングルが収録されていますが、必聴なのがデビュー10周年目突入の記念曲「未完の肖像」。
　デビュー曲「二重唱（デュエット）」と同じ阿久悠＋筒美京平＋萩田光雄トリオが手がけたもので、独立へのはなむけを思わせる歌詞に泣けますが、EVEのコーラスも相まって、よりアダルトになったヒロミ・イン・ディスコ“ヨーロッパ編”とでもいうべき傑作に仕上がっています。 
 
　というワケで、ここまで11タイトルとなったヒロリンのSACDハイブリッド盤。発売順ではなかったため、77年の「ウィズ・ベスト・フレンズ」、81年の「緋衣草（サルビア）」、82年の「Love Letter」83年の「私・的・空・間」が漏れていますので、また次回に期待ですね。