圧倒的歌唱力！4thシングルがアナログ化へ！

　昨年7月、ソニーミュージックのアナログレコード専門レーベル・GREAT TRACKSから誕生した「GREAT TRACKS Order Made Vinyl（グレイト・トラックス オーダーメイド・ヴァイナル）」。
　復刻盤に限らず、CDアルバムのアナログ化や独自のシングルカットなど、ジャケットや仕様を含めオリジナルなカスタマイズで数々の商品化を実現させてきたのはご存じのことでしょう。
 
　いわゆるシャレオツな和モノを中心に、レアなタイトルがラインアップされてきましたが、宍戸留美「 宍戸留美 ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド・シ・シ・ド・ル・ミ【アナログ盤(12inch)】 」やLip's「 リップス Splendid Love【アナログ盤(7inch)】 」、Qlair「 クレア Palette【アナログ盤(12inch)】 」といった90年代アイドルも初アナログ化されるなど、アイドルフリークからの注目も高まっておりますが、ここに来て商品化エントリー制を導入。
　まさにオーダーメイドファクトリーのアナログ版そのものという様相を呈してきましたが、今回、個人的に超オススメのタイトルが登場することになりました！
 
　それが、昨年デビュー40周年を迎えた大滝裕子さんの7インチアナログシングル盤「 大滝裕子 恋のウォーミング・アップ【アナログ盤(7inch)】 」！
　ユーミンのツアーのコーラスを経て、今もコーラスグループ・AMAZONＳで活躍する大滝さんがアイドル時代の1980年にリリースしたスマッシュヒットですが、金澤寿和さんのLight Mellow和モノ・コンピシリーズのソニー編「 Light Mellow Twilight 」でチョイスされたほか、和モノ音源リバイバル企画「和音」ではMUROプロデュースで大滝さん自身が歌い直した「 恋のウォーミングアップ 」などが発表されるなど、近年再評価が高まっているナンバー。シティポップ歌謡として、和モノDJの間で高い人気を博していることからのセレクトだそうです。
 
　さて、彼女のデビューのきっかけといえば、78年に行われたCBS・ソニーと集英社セブンティーンによる合同オーディション「ラブ・アイドルアタック！」（ミスター＆ミスセブンティーンコンテスト）。
　松田聖子が九州大会で優勝（本選出場は辞退）したことで知られているコンテストですが、大滝さんは15才で挑戦。見事グランプリとミスセブンティーンをW受賞したのですが、実はずぶの素人ではなく、渡辺プロの東京音楽学院の生徒として既に「ぎんざNOW！」の洋楽コーナーや明治ピコットのCMにも出演していたキャリアの持ち主。このオーディションにも音楽学院枠の1人として出場したのだとか。
　といっても決して出来レースではなかったようで、大橋純子や岩崎宏美の再来を思わせる折り紙付きの歌唱力を武器に、本選では久保田早紀や寺田新子、千葉まなみ、乗附勝也ら後にデビューするメンツたちを圧倒。文句なしの優勝だったといいます。
 
　そして1年後の79年。太田裕子という本名が事務所の先輩・太田裕美と一字違いでまぎらわしいという理由から芸名・大滝裕子に変更。渡辺プロのタレントとして、CBS・ソニーではなく設立されたばかりのEPIC・ソニーから高度な名曲「A BOY」でレコードデビューを飾ります。
 
　キャンディーズの解散騒動後はスタッフも含めゴタゴタしたイメージのあるナベプロですが、一介のタレント友の会会員から見てもその印象通りで、ことごとく目論みが外れていく感じでした。トップスターの勢いがなくなっていく一方、新人の売り出しもしかりで、松田聖子を蹴ったり、松原みきに去られたりというエピソードは有名ですよね。
　一方、EPIC・ソニーも創立当初は方向性が定まっておらず、ベスト10ヒットが1曲も出ていない頃。期待の大型新人として出た大滝裕子もアイドルなのか女性ボーカリストなのか、中途半端な売り出し方で、せっかくの歌唱力や洗練された楽曲が裏目に出た感があったのです。
　いくら歌謡曲のフィールドに浸食したニューミュージックが全盛を迎えた時代とはいえ、大衆的なアプローチで売り出すには、洋楽的AOR路線の曲はかなり早過ぎた感じでしたね。
 
　そしてデビュー2年目の秋。巻き返しを図って、事務所の大先輩、小柳ルミ子が長年務めてきたヤクルト・ジョアのCMキャラクターを譲り受けることになりますが、そのCMソングとして鳴り物入りでリリースされたのが、通算4枚目となるこのシングルだったというわけなのです。
 
　作詞は彼女のデビュー曲を手がけ、当時は松田聖子の「青い珊瑚礁」や八神純子の「パープルタウン」などで大ヒットを連発していた三浦徳子。作曲・編曲は、アグネス・チャンやキャンディーズらナベプロのタレントとは古くからつながりのあるムーンライダーズの椎名和夫を初起用。
　CMは“恋のウォーミング・アップ、健康のウォーミング・アップ”というテーマで、シェイプアップの健康ブームを背景に、ジョアを全国津々浦々へと再浸透させる大型キャンペーン。商品と楽曲だけでなく、大滝裕子自身のキャラクターも大プッシュするため、それまでの玄人好みのヒネリやグルーブさは抑えめに、大衆受けするキャッチーなサビで突き抜けるようなボーカルを生かした勝負曲としてリリースされたのでした。
 
　よって、難易度の高い彼女のレパートリーでは王道系といいますか、分かりやすいポップなナンバーなのですが、スケールの大きな曲構成やダイナミックなサウンドは確かにアナログで聴くのにぴったり。実際、本人出演の大量スポットのおかげもあって、大滝裕子の作品の中では最も知名度の高い曲ですしね。
 
　なお、カップリングはオリジナル盤の「黄色いかぶと虫」ではなく、ファーストアルバムの収録曲にして、フレンチポップスの歌姫、ヴェロニク・サンソンの「ベルナールズ・ソング」のカバー「ミスター・スモウク」。
　こちらは、大滝裕子ファンのクリス松村さんが自身のコンピ盤「Chris Music Promide～あのドライヴのカセット～」（ こちらで紹介）でチョイスし、自身の番組にも呼んで歌わせたナンバーというのがリカットの理由でしょうか。
 
　ちなみに、名曲、名唱ぞろいのファーストアルバム「ミリオン・キッス」は、92年に初CD化された後、2008年に「 大滝裕子 ミリオン・キス+8 」（ こちらで紹介）としてオーダーメイドファクトリーで復刻済み。
　この「恋のウォーミング・アップ」や、ジョアCMソング第2弾の筒美京平作品「異性」をはじめとするアルバム未収録のシングル曲や、ソロ時代の未発表曲もボーナストラックとして網羅されていますし、現在も入手可能。今聴いてもうなるほどの傑作ですのでので、未聴の方はアナログ盤実現を待つ間にぜひお聴きください。
　さらに、この時代の大滝裕子音源を蒐集したい人は、80年夏の伊勢丹キャンペーンソング「 真あたらしいか、君の夏。」収録の「ISETAN Songs Collection 1972-1986」（ こちらで紹介）もコレクションを。
 
　というオーダーメイド・ヴァイナル。今回の商品化エントリー制の初ラインアップとしてはこのほか、太田裕美の夫君・福岡智彦プロデュースによる小川美潮のアナログ化「 小川美潮 おかしな午後／窓【アナログ盤(7inch)】 」や、亀渕友香や前野曜子らが在籍したリッキー＆960ポンドの「 リッキー ＆ 960 ポンド ワッハッハ【アナログ盤(7inch)】 」も候補に挙がっております。
　また、商品化リクエストも受け付けているそうなので、どんどんリクエストしてみては。