ナツメロ喫茶店

 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#998
ピンク・レディー/阿久悠 作品集 <ステレオサウンド独占販売>
(2020.5.24発売、SSMS-043~044、¥4,500+税) *SACD+CD・2枚組

2008年の阿久悠追悼作品集がSACD化!

 昨年12月、15年ぶりの新曲として「妖怪ウォッチ」シリーズ最新作のテーマ曲「メテオ」を発表。残念ながらCDや配信でのリリースはありませんでしたが、完成披露試写会には久々に2人そろって元気な姿を見せ、健在ぶりを知らしめたピンク・レディー。
 
 タイミングを同じくして70年代にリリースしたアルバム12作も配信解禁( こちらで紹介)となり、サブスクのみならずハイレゾ配信も実現したのは記憶に新しいところです。
 
 そんな中、今度はPL史上初となるSACDのリリースも決定しました! ステレオサウンド発の「 阿久悠作品集 [SACD+CD]」、なんとハイブリッド盤ではなく、SACDとCDの2枚組での登場です。
 
 元となったタイトルは、PLの生みの親・阿久悠さんの逝去半年後の2008年3月、追悼盤として編まれた作品集。シリーズとしては森進一編に続いてのリリースで、桜田淳子編、岩崎宏美編との同時発売。同じスタ誕出身でビクター所属、阿久さんの愛弟子といえる3組が一斉に発売されたもので、2013年にはPL初のハイレゾ「 ピンク・レディー 「阿久 悠 作品集」 【K2HD】」として配信がスタートしています。

 収録曲は、まず阿久さんが手がけたPLのシングル全曲。すなわち76年のデビュー曲「ペッパー警部」を皮切りに、第2弾「S・O・S」から「カメレオン・アーミー」まで9曲連続でオリコン1位を獲得した怒濤のメガヒット。直前でAB面ひっくり返るという混乱が象徴的な「ミラクル伝説 ジパング」を経て、最後のトップ10ヒットとなった「波乗りパイレーツ」、PLの人気衰退に重なるように79年8月に休筆を宣言した阿久さんがはなむけとして書いた大人ピンク第1弾「マンデー・モナリザ・クラブ」、そして81年のラストシングル「OH!」という14曲に、79年の休筆前に書かれたPL唯一の全曲書き下ろし完全オリジナルアルバム「ピンク・レディーの不思議な旅」から「カルメン・シャワー」「恋愛印象派」を加えた全16曲となっています。

 ピンク・レディーの場合、78年の年間LPランキング1位を記録した77年版「ベスト・ヒット・アルバム」を筆頭に、アナログ盤ベストも多数編まれてきましたし、アナログのオリジナル・マスターテープを元にSACD化を図ってきたステレオサウンドだけに、今回なぜCDが初出のタイトルが選ばれたのか不思議でしたが、空前絶後のレコードセールスを記録したこともあってか、PLのオリジナルマスターはかなり劣化していたとのこと。
 今回は20数本のマスターテープを聴いた結果、音質を最優先する上で「阿久悠作品集」のカッティング用マスターテープの採用がベストであるという判断が下されたのだそうです。2013年にこのタイトルだけがハイレゾ化されたのも、そういう理由からだったと思われます。
 
 とはいえ、ピンク・レディーというモンスターデュオは阿久さんなしには成立しなかったでしょうし、一連のメガヒットも生み出されることはなかったのですから、このセレクトは何とも運命的な気もしますよね。
 思えば都倉俊一さんとのコンビで阿久さんが目指した歌のアニメーション化は、山本リンダ、フィンガー5とアップデートを繰り返して続いていきましたが、その完成形となったのがピンク・レディー。まさにカラーテレビ時代の人間パビリオンといえるような、奇想天外なエンタテインメントが繰り広げられたのでした。
 
 時代でさえ子どものようにあやしながら、同じ振り付けで踊らせたこのモンスターアイドルは、都市化も情報化も、教育問題さえも飲み込み昇華させた、まさに不世出の“現代の天使”ですが、その存在を支えたのは、根本美鶴代と増田啓子という生身の人間でありました。
 一見、メディアに組み込まれたパビリオンであり、アトラクション、超娯楽大作というおよそ非人間的な総合プロジェクトでありながら、あの頃の彼女たちの根底にあったのは、想像を絶する忍耐力や、努力、根性、勤勉さといった、かつての日本人なら当たり前のように持っていた日本の美徳のようなものだったように思います。
 
 今となってはもはや忘れられ、失われてしまった遺物のように見えますが、あの頃のピンク・レディーが残した楽曲が高音質でよみがえることは、コロナ禍に沈む現在の日本に、生きる上で本当に大切なことをしっかり思い出させてくれて、もう一度取り戻させてくれるような気がします。
 
 と、またまた毎度毎度のオーバーな自説を展開してしまいましたが、今回、PLのテレビ的な要素は封印して、楽曲とサウンドの音質を純粋に追求すれば、これまで40年以上も聴き逃がしていた新たな魅力さえ浮き彫りになってきそう。あの時代のシングル曲はどれもAMラジオでのオンエアを意識したマスタリングでしたから、何千回となく聴いたPLのメガヒットですら、聴き取れなかったいろんな音の粒が耳の中に入ってきそうです。何でも「まるで違う高品位な音の仕上がり」となっているそうですのでね。
 
 なお、ライナーにはピンク・レディーのオリジナル・ミキサーだった山口照雄さんのインタビューに加え、制作プロセスのリポートも掲載されるそうなので、オリジナルCDをお持ちの方も、ぜひ。なお、ステレオサウンドの商品は原則、直営ショップをはじめとする通販や一部オーディオショップのみとなっておりますのでご注意ください。 
 
 
 

(2020.4.24)

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