ナツメロ喫茶店

 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#817
松田聖子 SACD(ハイブリッド盤)3タイトル <ステレオサウンド独占販売>
金色のリボン(2016.11.30発売、SSMS-015、¥4,500+税)・Snow Garden(2016.11.30発売、SSMS-016、¥3,500+税)
Touch Me, Seiko(2017.1.20発売、SSMS-017、¥3,500+税)     *SACD/CD ハイブリッド盤

聖子のSACD第3弾は、企画ベスト3タイトル!

 この9月には、X JAPANのYOSHIKIが書き下ろしたドラマ主題歌シングル「 薔薇のように咲いて 桜のように散って 」がオリコンデイリーチャート1位を記録。週間チャートでも初登場6位と、ソロシングルとしては97年の「私だけの天使~Angel~」以来19年5カ月ぶりのトップ10入りを果たした松田聖子。
 昨年、鳴り物入りで発表した松本隆+ユーミン復活作「永遠のもっと果てまで 」でさえ11位止まりでしたので、YOSHIKIのファン層がこぞって買ってくれたおかげという気もいたしますが、紅白での2年連続トリも含め、今もって現役の第一線で活躍している事実は喜ばしい限り。なんたってセルフじゃないシングルがベスト10ヒットになったという事実がウレシイですよね。
 
 新譜でここまでのヒットとなったからには、旧譜の新企画にも期待したいところですが、近年の聖子のリイシューで大ヒットしたものといえば、昨年末にユニバーサルから出てオリコン3位をマークした35周年記念オールタイムベスト「We Love SEIKO-35thAnniversary松田聖子究極オールタイムベスト50Songs- 」ですが、コアなファン向けのアイテムが大健闘したことも忘れてはなりません。
 
 そう、2014年から15年にかけ、ステレオサウンド&ソニー・ミュージックダイレクトによる独自企画として、話題を独占したSACD(スーパーオーディオCD)ハイブリッド盤(こちらこちらで紹介)。
 聖子黄金期80年代の傑作アルバム群と言いましょうか、80年のデビューアルバム「SQUALL」から86年の産後復帰作「SUPREME」まで、85年のフィル・ラモーンのプロデュースによる英語盤「SOUND OF MY HEART」以外の12タイトルがランダムにリリースされたんですよね。
 
 ステレオサウンド独占販売にもかかわらず大反響を巻き起こし、人気タイトルはまたたく間に完売。それがさらにコレクター熱やせどり熱を高めたようで、再プレスを重ねてもなおほとんどのタイトルが完売しましたが、高品質CDを含め幾度となく再発を繰り返してきたアルバムにもかかわらず、そこまでの結果を出した原因はやっぱり聖子の歌が驚くほど良く聴こえるという点に尽きるようです。
 
 SACDによってこれまで聴き取れなかった息づかいや余韻など、マスターテープそのままのみずみずしい聖子の声の魅力がハッキリわかるとあって、それ以後のアルバムや、アルバム未収録のシングル曲などのSACD化リクエストは多かったそうで、続編のリリースが決定。第一報は夏の終わりにありましたが、このほどようやく正式にアナウンスされました!
 
 今回はリクエストに応えるということで、オリジナルアルバム続編ではなく、企画物ベストアルバム3タイトル。
 まず10月14日から予約受付開始予定なのが、82年の「金色のリボン」と、87年の「Snow Garden」というクリスマス企画盤。
 そして12月2日から予約受付開始予定なのが、84年のB面セレクション「Touch Me, Seiko」です。
 今回もステレオサウンドストアのホームページをはじめとする通販や、一部オーディオショップのみでの限定販売となっておりますので、確実に入手したいという人は必ず予約しておくことをオススメします。
 
 新録音の新曲やカバー、別バージョンを含むものもありますが、基本ベストですので既発のSACDとの重複曲も結構あります。しかし、漏れていたシングルAB面も網羅されていますし、いずれもあの10万円ボックス以来、10年ぶりのCD化。単品としては初復刻、オリジナル以来の再発となるタイトルもありますので、とっても妥当なセレクトではないかと思います。
 
 さて、ベスト盤であっても、切り口や選曲、ビジュアルに定評のあった聖子ですが、それはやっぱりCBS・ソニーの所属だったことが大きいでしょう。
 アイドルポップスでもLPのセールスが伸びトータルアルバムとしての制作が主流となる80年代初めまでは、各レコード会社とも多くのベスト盤を出していたものでしたが、中でもCBS・ソニーはその頻度は高いというか、当時ベストの需要が非常に高かったミュージックテープ並みのハイペース。年末商戦はもちろん75年から80年までは夏のボーナス期にも企画され、毎年6月と11月の年2回リリースされていた時期もあったほどです。しかも、ジャケット写真やインナーなど、モノによってはオリジナルアルバムを凌駕するほどのクオリティだったこともCBS・ソニーのベストの大きな強みでした。
 当時を知る人なら、古くは「ギフト・パック」「ヒット全曲集」、そして「THE BEST」(カセットは「全曲集」)と名前が変わっていったのも覚えておられることでしょう。
 
 であるからして聖子の場合も、初ベストとなった81年11月の「聖子・fragrance」と82年6月リリースの第2弾「Seiko・index」は「THE BEST」シリーズの1枚として、ソニーの他のアーティストたちと同時発売されておりました。
 このへん、なぜかほとんど語られませんし、シリーズではないと誤解している人も多いようですが、「聖子・fragrance」の帯にはTHE BESTのエンブレムがバッチリ付いていますし、「Seiko・index」も他のアーティストも単なるヒット曲集ではないコンセプト・ベスト(「郷ひろみ/マイ・コレクション」「山口百恵/Again百恵 あなたへの子守歌」「中原理恵/DREAMING LOVE -理恵ベスト・セレクション-」「五輪真弓/COLLECTION '82」など)のため分かりにくいものの、カセット版には「THE BEST」の冠がちゃんと付いています。
 
 なので、今回10万円BOX以来2度目のCD化、単体としては初復刻となる「金色のリボン」(82年12月)は初の聖子独自企画によるベストだったというワケですが、オリジナルはLP2枚組で、1枚目は“Blue Christmas”と名付けられたクリスマスソング集。
 45回転LPのミニアルバムという感じで、おなじみの「クリスマスソング・メドレー」や、ユーミンのカバー「恋人がサンタクロース」、このアルバムのための新曲「Blue Christmas」「ジングルベルも聞こえない」「星のファンタジー」というすべて新録曲で構成されています。
 2枚目は“Seiko・ensemble”というベスト集ですが、ラジオのテーマ曲「HAPPY SUNDAY」と「野ばらのエチュード」の別バージョンという未商品化だった音源のほか、映画サントラにのみ収録されていた「野の花にそよ風 ~サブテーマ『雲』」というレア曲がたっぷり。アルバムの人気曲や、「小麦色のマーメイド」「Romance」といったアルバム未収録のシングル曲も入っております。
 なお、当時は聖子初の完全限定生産、写真集付きの豪華なBOX仕様でまさに聖子からのクリスマスギフトという感じでしたから、あのパッケージがどこまで再現されるか楽しみなところですね。
 
 次にチョイスされたのは、本来ならSACD化に最も近かった「Strawberry Time」を飛ばして選ばれた、87年11月の「Snow Garden」。
 松本隆プロデュースのクリスマス企画アルバムにしてハーフベストという構成で、アナログ盤ではA面が“Today's Avenue Side”という新録集。南佳孝作曲のサウンドドラマ「Please Don't Go」、元オフコースの鈴木康博作曲の「妖精たちのTea Party」、ピカソの辻畑鉄也作曲の「恋したら…」の新曲3曲に加え、大江千里作曲による当時の最新シングル「Pearl-White Eve」も豪華なコーラスの入った別バージョンで収録されています。
 B面の“Yesterday's Street Side”は既発曲ばかりで構成されていますが、SEが加えられたり、バージョン違いも含めた6曲。中でもラストを飾る「雪のファンタジー」は「金色のリボン」収録の「星のファンタジー」の別歌詞バージョンで、元々は同年の松本さんの映画「微熱少年」のサントラ用に制作された音源に英語の台詞を加えたものとなっています。
 デビュー2年目に喉の調子を悪くして以来、ザラメからグラニュー糖、そしてパウダーシュガーへと精製された奇跡のキャンディボイスが最高到達点を迎えた頃ですので、今回のSACDであの美声がどうリアルに聴こえるのか、そこも楽しみですね。
 
 と、クリスマス企画がシーズンに間に合うように優先されたためか、2タイトルずつリリースのローテーションをきっちり守ったせいか、少し遅れるようですが、第3期最後を飾るのは84年3月発売の「Touch Me, Seiko」。シングルB面曲に特化したコンセプトベストです。
 企画の発端は、やはりシングル「ガラスの林檎」のB面曲だったのにCMソングとして話題沸騰、前年暮れに両A面曲へと昇格し、見事オリコン1位に返り咲いた「SWEET MEMORIES」だったと思いますが、82年の卒業シーズンに有線で火がつきジャケット表記が大きくなった「制服」や、ドラマ主題歌で同様の経緯をたどった83年の「蒼いフォトグラフ」の例もあるように、聖子では珍しくないこと。
 B面も一切手を抜かない聖子クオリティの集大成アルバムという感じで曲順も練られており、声質の変化さえ気にしなければトータルアルバムとしても一流の出来。ファン人気の最も高いベストアルバムと言っても過言ではないでしょう。その証拠に、CDカタログでも87年の再発盤がずっと生き続けていますし、2010年にはその他のB面を補完した続編(こちらで紹介)もリリースされたほど。
 既発のSACD未収録曲としては、「金色のリボン」にも収録された「Romance」を除くと「SWEET MEMORIES」「TRUE LOVE~そっとくちづけて」「わがままな片想い」「ボン・ボヤージュ」「レンガの小径」「制服」「マドラス・チェックの恋人」「愛されたいの」の8曲となりますかね。
 純然たるベストアルバムのため、ハイレゾ化もされていなかった1枚ですが、今回のラインアップではコレが最もヘビロテされそうな気がします。
 
 個人的にはどうせSACDにするんだったら、最初のソニー時代のシングルAB面を完全網羅した「Complete Bible~Seiko Matsuda All Singles Collection~」を先にしてほしかった…というのが正直な感想ですが、今回の3タイトルが出ても「ガラスの林檎」は未SACD化ですし、B面曲だけでも「夏服のイヴ」「硝子のプリズム」「スピード・ボート」「七色のパドル」「Caribbean Wind」が残っていますので、次回にも期待です! リイシューにこだわらず、新編集・新装丁のシングルコンプベストなんかが出れば、最高なんですけどね。
 
 また、ソニー純正品としては、最初のソニーからの移籍以降、さまざまなベストが濫発されてきましたが、ユニバーサルへ2度目の移籍をした後の2011年には聖子の音源が旧譜カタログ専門の部門に移管しておりますので、今後の企画にも期待したいところ。
 80年代のシングルコンプや各種コンセプトベストから、80年代オリアルのでかジャケやブルスペ2、そしてついにはホームセンターや高速のSAなどのワゴンで売られる別チャネル廉価版までが出ていますが、今回のSACD化された作品のような、往年のCBS・ソニー時代のクオリティが感じられるベストが出ないものかと思っています。やっぱり我々にとっての聖子は、抱きしめたいッ…!ミス・ソニー。ユニバーサルにいたって、ソニーの聖子のままなんですからね。
 
 
 

(2016.10.10)
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