タワレコ限定、オリアル紙ジャケ単品第2弾！

　今年でデビュー40周年を迎えるカナリーガールこと河合奈保子さん。昨秋からは、奇しくも日本上陸40周年のタワーレコード限定で紙ジャケ復刻がスタート。
 
　ライブアルバム4タイトル（ こちらで紹介）に続き、80年から84年までのオリジナルアルバム9作（ こちらで紹介）がリリースされましたが、今回は後編として84年から93年までのオリジナルアルバム9作「 さよなら物語＜タワーレコード限定/初回生産限定盤＞」「 スターダスト・ガーデン-千・年・庭・園-＜タワーレコード限定/初回生産限定盤＞」「 9 1/2 NINE HALF＜タワーレコード限定/初回生産限定盤＞ 」「 Scarlet＜タワーレコード限定/初回生産限定盤＞ 」「 JAPAN as waterscapes＜タワーレコード限定/初回生産限定盤＞」「 Members Only＜タワーレコード限定/初回生産限定盤＞」「 Calling you・・・呼びよせられて・・・＜タワーレコード限定/初回生産限定盤＞」「 ブックエンド＜タワーレコード限定/初回生産限定盤＞」「 engagement＜タワーレコード限定/初回生産限定盤＞ 」が発売となります！
 
　今回も2007年に出たアルバムBOX「NAOKO PREMIUM」に準じた紙ジャケット仕様で復刻。音源も同一の2007年リマスター音源を使用しての単品発売ですので、BOXを買い逃していたファンには必携のアイテムといえるでしょう。 
 
　さて、後編となる今回のラインアップは、元気ハツラツなザ・アイドルだった時代に終わりを告げた頃からのスタート。アーバンアダルトなシティポップスも歌える実力派ボーカリストとして認められ、自作品を歌うシンガー・ソングライターへとシフトしていく過程を網羅していて、まさに、河合奈保子がアーティスト化していく様子が手に取るようにわかる作品群といえそうです。
 
　とはいえ個人的にオススメしたいのは、やはり全曲を筒美京平先生が手がけたコンセプチュアルなアルバム。イメチェンヒットとなった83年の記念碑的シングル「エスカレーション」以来、メイン作家となった売野雅勇＋筒美京平コンビ渾身の2作です。
 
　「エスカレーション」以降、一連のビートポップスを展開した奈保子さんですが、84年夏には事務所の先輩・岩崎宏美の轍を歩むようにLA録音盤をリリース。同期の松田聖子よりも早くアメリカでのレコーディングを行い、新境地を開拓しましたが、その直後にたどり着いたのはヨーロッパでした。
　それが84年12月リリースの「 さよなら物語＜タワーレコード限定/初回生産限定盤＞」。同時発売シングル「北駅のソリチュード」（イントロは余りにも「ケアレス・ウィスパー」ですがメロディーは本歌取りという感じですネ）は未収録ながら、世界観はその延長線上となっております。というか、出来の良かった「北駅のソリチュード」をシングル単独でリリースしたとみるべきでしょう。
　当時の筒美サウンドは打ち込みで進化したヨーロピアンディスコ、すなわち後に世界を席巻するユーロビートに連なる流れを展開していたように思いますが、ここでは矢島賢・マキ夫妻をアレンジを起用。アダルトなテクノ系ヨーロピアンポップスといった様相で、普段は装飾過剰気味の売野さんの歌詞も、ヨーロッパからソ連が舞台なら違和感なく聞ける上、カナリーボーカルの哀愁にぴったりマッチしております。
 
　続く「 スターダスト・ガーデン-千・年・庭・園-＜タワーレコード限定/初回生産限定盤＞」は売野＋筒美コンビの第2弾ですが、なんとわずか3カ月後の85年3月リリース。85年12月発売のLA録音第2弾「 9 1/2 NINE HALF＜タワーレコード限定/初回生産限定盤＞ 」を含め、84年から85年にかけての奈保子作品は、企画盤を含め実にハイペースなのですが、当時は岩崎宏美が独立した直後。後の芸映は稼ぎ頭の河合奈保子が背負って立つことの意思表示だったのか、もしかしたらヒロリンで進められていた企画を奈保子でフォローした…なんてことがあったのかもしれません。
　最高にグルーヴィーな同時発売のシングル「ジェラス・トレイン」はこれまた未収録ですが、ボーナストラックとして、同時発売のビデオのみに収録されていた売野＋筒美コンビによる英語曲「スターダスト・イン・ユア・アイズ」を収録。
　世界観がわかりやすかった前作に比べると茫洋な印象なのは、アレンジを萩田光雄、若草恵、鷺巣詩郎、新川博といった面々で分担したせいかもしれません。詞世界は壮大なスケールなのですが、それが実際の宇宙なのか、胸の中に広がる心象風景なのか、売野マジックの難解さが際立ったアルバムといえそうです。
 
　ともあれ、アダルト・コンテンポラリー期の奈保子は、ファルセットのスキャットが黒っぽいフィーリングを醸していてホントに素敵。そういう意味では、やはり岩崎宏美の正統な後継者だったように思います。
 
　結局86年7月のシングルにして売野＋筒美コンビの最終作「刹那の夏」を最後に、いわゆるアイドル的な職業作家陣による楽曲制作は終了。10月にはジャケットにも驚く初の全作曲オリジナルアルバム「 Scarlet＜タワーレコード限定/初回生産限定盤＞ 」を発表し、11月には「ハーフムーン・セレナーデ」をシングルカット。シンガー・ソングライターとして着実にキャリアアップしていくワケです。
 
　自分らしい音楽を追求し、努力を重ねて伸び伸びと自己解放していったのはとても素晴らしいことですし、松田聖子のセルフ時代にも大きな影響を与えたのではないかと思っていますが、個人的に残念だったのはその後もしばらく売野雅勇プロデュースが続いてしまったこと。
　毎度申しているように、歌手・河合奈保子と作詞家・売野雅勇との相性は良くなかったと思っておりますから、やはり「エスカレーション」が運命の分かれ目だったと言わざるを得ません。自身の思いを表現することが身上のシンガー・ソングライターであるならば、なおさらだという気がしますのでね。
　シングル曲でいえば「ストロー・タッチの恋」や「微風のメロディー」のような、インパクトは弱いけれども、河合奈保子のナチュラルな本質を生かしたナンバーを基本に貫いていれば、彼女の実績や楽曲、存在感などが実際より過小評価されることはなかったような気がしています。
 
　と、カナリーガールのこととなるといつも繰り言になってしまいますが、「NAOKO PREMIUM」を買い逃した方にとっては今回のタワレコ復刻は絶好のチャンス。オンデマンドCDで持っている人も買い替え、買い増しをご検討ください。
 　なお、今回の復刻は「NAOKO PREMIUM」に準拠しているため、オリアル未収録のシングル曲やシングルバージョンはボートラ対応していません。よって「 河合奈保子ゴールデン☆ベスト ~A面コレクション~ 」「 河合奈保子ゴールデン☆ベスト ~B面コレクション~ 」での補完をオススメします。