新企画スタートで紙ジャケBOXが再販売！

　今日まで続く“アイドル歌手”第１号といえば、やっぱり南沙織さん。
 
　昭和46年のデビューから48年、最初の引退から41年、平成になって復帰の記者会見を行ってから28年、最後の新曲を出してから22年。令和元年を起点にさかのぼると、ずいぶんと長い歳月が横たわっていますが、新時代になってもその高い評価は衰えていないように思います。
 
　改元直前の４月には、デビュー曲をはじめたくさんの詩を書き、南沙織という歌手の血肉を育んだといいますか、シンシアにとって最大の理解者といえる作詞家・有馬三恵子さんがご逝去。いろんなメディアで「17才」をはじめとするヒット曲が流れ、今も通用するエバーグリーンなビジュアルを含め再び注目を集めましたが、ここに来てソニーミュージックから新たなキャンペーン企画「 Cynthia's Evergreen」がお目見えしました！
 
　本日から8月31日まで「令和にも聴きたい、 あなたの南沙織の曲を大募集！」というテーマでリクエスト曲とメッセージを募り、今後の商品企画の参考にする…というもので、何だか同じ三人娘として活躍した天地真理さんのBOX企画「私は歌手」（ こちらで紹介）を彷彿とさせますが、まずはそのリクエスト元として紙ジャケBOX「 Cynthia Premium 」が再販売されることになったのです！
 
　このBOXはそもそも、南沙織デビュー35周年を迎えた2006年に、ご本人監修のもと完全生産限定でリリースされたもの。完売後も再プレスを求める声は多く、多くのリクエストに応える形で9年後の2015年7月にアンコールプレスされています。
　オリジナル発売時には、高額商品にもかかわらずオリコンデイリーチャートで初登場26位を記録。ウイークリーでは84位をマークするなど、シンシアクラスのアーティストとしては異例のヒットだったといえるでしょう。
 
　筒美京平のディーバの１人として、各方面から楽曲のクオリティを称える声の大きかいシンシアですが、昭和歌謡ブームなどの影響もあって、再評価は続いているのはご存じの通り。当時を知らない若いファンも増えているようで、復刻のリクエストはアンコールプレス後も多かったと聞きます。
 
　今回の新企画のリクエストはこのBOXの中から…ということで、基本、過去のコピペ中心ではありますが、あらためて紹介させていただきましょう。
 
　BOXの構成としては、まずはオリジナルアルバム。71年のファーストアルバム「17才」から78年の引退作「SIMPLICITY」まで、南沙織としてリリースした19枚です。
　有馬三恵子＋筒美京平コンビによる初期の世代感と私小説を重視した「ヤングのテーマ」シリーズは弾けるようなみずみずしさがあふれていますし、日本人アーティストの海外録音のスタイルを形作ったLA録音盤「Cynthua Street」のグルーヴは和モノの域を超えDJにも愛される傑作。
　ご本人の内面ともマッチした「人恋しくて」以降のフォーク路線も味がありますし、ジャニス・イアンとのゆたかなめぐり逢い「ジャニスへの手紙」も出色です。
　さらに筒美がえりの「午後のシンシア」を経てアメリカンポップスの申し子・シンシアの原点に立ち返った「ハロー！シンシア」、アイドルのシティポップ盤として最近レココレでも再評価された「 I've been mellow/Saori」、オリジナル＋カバーといういかにも南沙織のアルバムというスタイルでお別れした「Simplicity」などなど、アイドル歌手からシンガーへと大成する様子が刻まれています。
  
　続いてはカムバック後、シンシアという名義で出した92年の「MATURITY」と93年の「Art of Loving」。「歌が好き」というだけで辛い芸能界を耐えた南沙織が、シンシアとして「歌いたい」という純粋な気持ちだけで取り組んだ２作は、円熟のアダルトポップス。
　この時代を知らない人は、あの生きる歓びと悩みに満ちていた10代の少女が、晴れ晴れとした30代の女性として豊かな母性を感じさせるまでに成長していることにきっと驚くことでしょう。
 
　CDは、これら全21作をＷ紙ジャケットで復刻。音質はジャズ復刻でよく採用されていたマスターサウンドです。
　ボーナストラックも充実しておりまして、アルバム未収録のシングル曲が入るのはもちろん、収録済みのシングル曲であっても、アルバム収録と完全に同一でない場合は、全曲収録するというこだわりよう。
　リマスタリングの際にはスタジオでシングルとアルバムのマスターを聞き合わせたといいますから、アルバム曲のみならず、33枚のシングル両面が完全なシングルバージョンで聴けるという、シンシア史上最大の企画となっております。
  
　そして、当時内容は買った人だけの秘密とされたスペシャルDVD。シンシア自身が最も残しておきたかったというNHK「紅白歌合戦」出場時の歌唱映像8曲（「17才」「純潔」「色づく街」「夏の感情」「人恋しくて」「哀しい妖精」「街角のラブソング」「色づく街」）を収録。曲前にはシンシア自身の思い出コメントがテロップで入っています。
 
　という内容によるビッグスケールの商品ですが、特筆すべきは、やっぱりご本人の監修ということ。名ばかりの監修ではなく、収録アルバムの構成はもとより、タイトルの書体、パッケージデザイン、ブックレット、特典のDVDに至るまで、ご本人の意向とアイデアが反映されているのですね。
　中でもオススメなのが、156ページのブックレット。ご本人からのメッセージや、各アルバムに関する秘話満載のエッセイを掲載。シングルのジャケ写や写真も入ったディスコグラフィーも充実していますし、手前ミソではありますが、ご本人の許諾を得て私が書かせていただいたアルバム解説も掲載されております。
 
　当時、企画担当された加納糾プロデューサーにお聞きしたところによると、シンシアがここまで協力的だったのは、2000年のBOX「CYNTHIA ANTHOLOGY」を作った後お亡くなりになった山下鉄男プロデューサーが道をつけてくれたおかげとのこと。
　なんてったって山下さんは90年代にシンシアが復帰した時の元々の仕掛け人とでも言うべき方。絶対復帰しないと固く決めていたシンシアをその気にさせた張本人が道をつけてくれたからこそ、シンシアの全面協力を得られたのだそうです。
 
　ちなみに、単品でのオリジナルアルバムのCD化は、91年と97年のCD選書シリーズに加え、受注生産のオーダーメードファクトリーで2005年に完結しましたが、すべて廃盤。
　2013年の名盤復刻シリーズで、「 17才 」「 純潔・ともだち 」「 傷つく世代 」（ こちらで紹介）の3枚のみがブルスペ２で再度復刻されておりますが、やっぱり細かく丁寧なつくりの紙ジャケで一堂にそろえた方がいいですよね。
 
　いろんな事情で過去に買い逃したという方や、新たにファンになった方は、ぜひこの機会にどうぞ。ハイレゾも含め、シンシアの音源は配信（ こちらで紹介）もされている今、パッケージとして手に入るのは最後のチャンスかもしれませんのでね。
　ちなみにシンシアの場合、ほかにライブ盤が３タイトル出ていますが（いずれもCD復刻済み）、BOXにはご本人の意向で見送りになっております。ファンも高齢化していることですし、今回の新企画とともに、新たな動きに期待したいものです。
 
 
＊市販品のため一般のCDショップでも購入できます。2019年7月現在、WEBショップでは楽天市場・ハピネット（「 【送料無料】南沙織／シンシア・プレミアム (初回限定) 【CD+DVD】 」）が最安値のようです。