岩崎復活後のオリアルが9年ぶりに再発！

　デビュー45周年を来年に控え、ますます精力的な活動を続ける岩崎宏美さん。
　今夏からは、コンサートツアー恒例の映像ソフト（ブルーレイ「 岩崎宏美/Hiromi Iwasaki Concert PRESENT for you*for me [Blu-ray] 」、DVD「 岩崎宏美/Hiromi Iwasaki Concert PRESENT for you*for me [DVD] 」）のリリースに加え、ロングセラーを続けているカバーアルバム「Dear Friends」シリーズの再発（ こちらで紹介）だけでなく、新作「Dear Friends VIII 筒美京平トリビュート」（ こちらで紹介）とアナログ盤の「 Dear FriendsVIII 筒美京平トリビュート [Analog] 」まで続々とリリース。
 
　オリコンではライブDVDが75位、トリビュートCDは65位と、しっかりTOP100にランクインを果たしていますので、さすがは親衛隊現役のヒロリンといったところでしょうか。
 
　ビクター時代の旧譜の方はすべて復刻済みですが、昨年からタワーレコード限定で再発（ こちらと こちらなどで紹介）がスタート。80年代までのオリアルとライブがコンプリートとなっておりますが、ついに90年代、すなわち95年に岩崎名義が復活した後のオリアルも対象となりました！
 
　それが「 MY GRATITUDE -感謝- (+8)＜タワーレコード限定/完全生産限定盤＞」「 FULL CIRCLE (+3)＜タワーレコード限定/完全生産限定盤＞」「 SHOWER OF LOVE (+5)＜タワーレコード限定/完全生産限定盤＞」「 Never Again 許さない (+7)＜タワーレコード限定/完全生産限定盤＞」という95年から99年までに発表された4タイトル。
　いずれも2010年にビクターの「RE-MASTER VOICE シリーズ」でボートラ付きでSHM-CD化されて以来、9年ぶりの再発となりますが、今回はそのシリーズに準じた再発となっております。
 
　せっかくの機会ですので、基本過去文のコピペではありますが、簡単にご紹介させていただきましょう。
　益田宏美から岩崎宏美へ。心機一転、シンガーとして再スタートを切ったヒロリンですが、思い返せば当時は本当にいろんな報道がなされましたし、ヒロリンが息子さんたちとの別離で重度の内面的葛藤に苦しんでいたであろうことは一ファンにとっても想像に難くありませんでした。
　にもかかわらず、軽やかでありながら毅然としたオーラをまとって、もはや歌しかないことを悟った聖母のように慈愛に満ちた面持ちで、みんなのところに帰ってきたのでした。
 
　それが95年8月リリース、好きなうたや歌いたかったうたを集めたというアコースティックな復帰第１弾「 MY GRATITUDE -感謝- (+8)＜タワーレコード限定/完全生産限定盤＞」。
　再録の「Waiting」や「そばに置いて」（「そばにおいて」に改題）を初めて聴いた時の感動は、今も忘れることができません。
　気負いなくうたに向かう姿は、余計な煩悩を削ぎ落としたような崇高ささえ感じましたし、その歌声は教会のステンドグラスから差し込むひとすじの光のように、飾らず慎ましやかでありながら福音の調べみたいに思えたりして。
 
　あの時のヒロリンって、いろんなものをひと思いに断ち切って求道的な境地に至りついた結果、うたの神様に愛されていることをハッキリと自覚し、自ら仕え、人のために歌うことが使命であるのを本能的に悟ったのではないかと邪推しています。
　だからこそ、このアルバムを聴き終わった後は、神社仏閣を訪れた後のような、清々しい気持ちを得られるのではないでしょうか。そういう意味では、もはや天賦の美声や抜群の歌唱力に頼ることなく、心ひとつで魂を揺さぶる歌を歌うようになった契機のアルバムと言えそうです。
　また、それは単に精神的なことだけではなく、シングライクトーキングのプロデュースをしていたCAT GRAYのボーカル指導によるところも大きかったのではないかと思います。
 
　これをリハビリのようにして本格的なアルバム制作が始まり、95年にはもう１枚、ロス録音の「 FULL CIRCLE (+3)＜タワーレコード限定/完全生産限定盤＞」を11月にリリース。
　これもCAT GRAY率いる13CATSが全面的にバックアップし、SLTからもヒロリンの大ファンだったという佐藤竹善＆藤田千章が参加。復活後初のシングルでタイアップもついた「朝が来るまで」（アルバムは別バージョン）をフィーチャーし、前作からの流れを受けて「ロマンス」や「想い出の樹の下で」のフレーズが効果的にインサートされております。
 
　連想するイメージは、肩の凝るハイソなディナーショーから、大人も楽しめるクラブのフロアへとステージを移した歌姫。挿入されたかつてのヒット曲もカッコよくって、ホントAORを飛び越えて、コンテンポラリーなR&Bやソウルのフィーリングが前面に出ています。
　個人的には久々に黒っぽいヒロリンが聴けたと思って大喜びしたものですが、当時のファンにはさほど評判がよくなかったようでとてもショックでしたけど、四半世紀近くが経った今、皆さんの評価はいかがでしょうか。
 
　なお、このアルバムを引っさげて20周年コンサートツアーを行い、同名のライブCDやDVD（ビクター初の音楽DVD！）も出ましたが、今回はライブ盤のためかスルーされるようです。
 
　お次は、あの吉田美奈子や角松敏生も参加した97年10月の「 SHOWER OF LOVE (+5)＜タワーレコード限定/完全生産限定盤＞」。
　先行シングル「愛がいっぱい」や、「BELIEVIN' 」（アルバムは別バージョン）をはじめ、美奈子直伝の黒っぽい雰囲気がますます高まり、R＆B、ソウルからより深くゴスペルへという趣も。広瀬香美作でノスタルジックな「PAIN」にしても、黒っぽいスピリットが漂っていますよね。後にMISIAとかが出てきた時、彼女たちってヒロリンの系譜に位置するなとひとりごちたものです。
　このアルバムはジャケット写真にも注目。個人的にシャープなアゴのラインとトンがった鼻がきれいで大好きでした。
 
　さて、太田裕美さんもそうですけど、ヒロリンにとっても大きな影響を与えたと思われるのが97年12月の筒美京平先生作曲家生活30周年記念。豪華なアンソロジーをきっかけに、旧作の再評価はウナギのぼりとなり、筒美系ディーバとしてのヒロリンも大きくクローズアップされたのです。
　そうしてできたアルバムが99年3月リリースの筒美作品集。ビクターでは最後のオリジナルアルバム（ほとんどがセルフカバーですけど）となった「 Never Again 許さない (+7)＜タワーレコード限定/完全生産限定盤＞」。確かプロモーションの時期待ちのためとかで、発売が数ヶ月延期されたように思います。
 
　新曲は先行シングル「許さない」と「あなたへ」の2曲で、ドリアン助川とのタッグマッチですが、さすがはヒロリンの魅力を知り尽くした筒美メロディー。ファルセットも多用していて、はちきれんばかりの若さでグイグイ押していた頃とはまた別の素晴らしさを感じてしまいます。セルフカバーについてはトップ10ヒットは「想い出の樹の下で」だけで、「素敵な気持ち」「わたしの1095日」「月見草」…と名曲を吟味した印象で地味めの選曲ですが、これがなおさらに心に響くんですよね。
 
　というビクター最後期のアルバム。レアトラックや、紙ジャケコレクションからのカラオケ続編など、ボーナストラックも充実していますので、前回買い逃した方はこの機会に買い替え、買い増しもご検討ください。
　ただし、オリジナルを持っている人は、ジャケットなどの精度は落ちていますので要注意。個人的にオリジナルは下取りに出したのですが、後悔しておりますので…。