ナツメロ喫茶店

 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#980
南沙織/シングルコレクション <ステレオサウンド独占販売>
(2020.1.12発売、SSMS-034~5、¥5,400+税) *SACD/CD ハイブリッド盤

シンシア、16年ぶりのSACDハイブリッド!

 そろそろ暮れようとしている令和元年。旧譜の配信もダウンロードからストリーミングへ、大物アーティストのサブスク解禁が相次いだ年となった一方、アナログ回帰熱も高まる中、ハイレゾ音質への需要も伸びているように思います。
 パッケージの分野では、新たにハイレゾCDなるディスクも登場しておりますが、高音質CDの元祖といえばやっぱりSACD(スーパーオーディオCD)。
 
 近年では、高級オーディオ専門誌としておなじみのステレオサウンドから、「POPS/オーディオ名盤コレクション」シリーズとして、日本のポップスのSACDハイブリッド盤が相次いで発売されております。
 ソニーの松田聖子15タイトル( こちらこちらこちらで紹介)と太田裕美4タイトル( こちらこちらで紹介)、ポニーキャニオンの尾崎亜美4タイトル( こちらで紹介)などなど、好評を博したのは記憶に新しいところですし、先日はタワレコチャネルからステレオサウンド協力による岩崎宏美の5タイトル( こちらで紹介)も出ましたが、ここに来てステレオサウンド発の新企画として、我らがシンシア、南沙織さんの「 南沙織/シングルコレクション」のリリースも決定しました! 
 
 シンシアのSACDハイブリッド盤というと、2003年の「 THE BEST~Cynthia-ly 」以来16年ぶり。あの時は、わが家の普及版SACDプレーヤーでも音質の違いが実感できて驚いたことでしたが、あれが1枚モノ(新鮮な曲順と選曲でしたが)だったのに対し今回は2枚組。
 タイトル通り、71年のデビュー曲「17才」から78年のラストシングル「グッバイ ガール」まで、シングルA面全28曲(臨発の英語盤「カリフォルニアの青い空」を含む)に、B面人気ナンバー1の「魚たちはどこへ」とA面に差し替わった「気がむけば電話して」というカップリング曲、ボーナストラックのアルバム曲「私の出発(たびだち)」を加えた全31曲。70年代に南沙織としてリリースしたコンプリート・シングル・コレクションとなっており、まさにファンが待ちに待ったSACDといえるでしょう。
 
 収録曲とジャケットでピンと来る人も多いのではないかと思いますが、様相は2014年11月からハイレゾのみで配信されていた「 南沙織シングルコレクション<ハイレゾ>」(2016年3月からは通常配信「 南沙織シングルコレクション 」も登場、こちらで紹介)のパッケージ版そのもの。 
 といっても、今回はそれをそのままSACD化したというワケではなく、商品化のためにオリジナルのアナログマスターテープを保管庫からわざわざ取り寄せ、一連のシリーズでおなじみの鈴木浩二さん(ソニー・ミュージックスタジオ)によって新たなリマスタリングが施されているそうです。
 
 しかも歌詞ブックはオールカラーで、シングルのジャケ写をはじめシンシアのポートレートを散りばめた全52ページなのだとか! さらにライナーノーツは音楽評論家の湯浅学さんが担当。当時はビクターの社員エンジニアでシンシア作品にはバイトで担当していた内沼映二さん(今年ご自身の総括本「 内沼映二が語るレコーディング・エンジニア史 スタジオと録音技術の進化50年史 」を出されています!)へのインタビューも絡めているそうなので、これもファン必読ですよね。
 
 ちなみに、現場のレコーディングディレクターを務めていたのは日音の小栗俊雄さんで、小栗さんの回想は、2010年発売の懐刻盤CD「 GOLDEN☆BEST 南沙織 コンプリート・シングルコレクション 」(私が取材構成を担当させていただきました)のほか、濱口英樹さんがまとめられた「 ヒットソングを創った男たち~歌謡曲黄金時代の仕掛人 」でもお読みいただけますので、ぜひ併せてお楽しみください。
 
 今年は有馬三恵子先生がお亡くなりになったこともあって(先生は第61回「日本レコード大賞」で特別功労賞を受賞されました。シンシアは こちらで紹介した先生の作品集にコメントを寄せています)、2006年のオリアルBOX「シンシア・プレミアム」がアンコールプレスされたり( こちらで紹介)、「令和にも聴きたい、 あなたの南沙織の曲を大募集!」というテーマでリクエスト曲とメッセージを募る新企画「 Cynthia's Evergreen」が実施されたり、一連のシンシア作品が持つ永遠の輝きがまたクローズアップされた1年でした。
 
 思うに南沙織のシングル曲の軌跡は、有馬三恵子+筒美京平コンビの手を借り、沖縄育ちの英語ネイティブという特性を最大限に生かした目覚ましいポップスを展開しながら、日本語の機微を身につけるに連れ地味で内省的なフォークへと傾倒し、ニューミュージックの流れを経て、再び有馬+筒美コンビへと還ってゆく、奇跡のような変遷記。ある意味、80年代のアイドルポップスのプロローグともいえる記録であり、一人の少女が迷い傷つきながら、それでも懸命に自身と向かい合い、確かな足取りで大人の女性へと成長していく普遍的な物語です。
 
 このところまた南沙織の再評価が高まっているようで、デビュー同期に当たる天童よしみが「想い出通り」(「 歌魂 」に収録)を、いきものがかりの吉岡聖恵が「哀しい妖精」(「 うたいろ 」に収録)をカバーするなど、「17才」や「色づく街」以外の作品にも脚光が当たっていることですし、半世紀近く経ってもまったく色褪せることないあの名曲群が、またいい音で、また新たなパッケージで聴けることに感謝しつつ、令和2年早々の発売を待ちたいと思います。
 
 なお、今回のステレオサウンド発のSACDハイブリッド盤としては「 五輪真弓/恋人よ」も同時リリースされるとのことですが、いずれもステレオサウンドストアのホームページをはじめとする通販や、一部オーディオショップのみでの限定販売となっておりますのでご注意ください。
 
 
 

(2019.12.20)
 
*ディスクユニオンでは、オーダーメイドファクトリー商品と同様に取り扱いを行っており、オンラインショップ(5,000円以上の商品につき送料無料)でも購入できます。
Sony Music Shop

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