ナツメロ喫茶店

 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#846
太田裕美/心が風邪をひいた日 <アナログ盤>
(2017.11.1発売、MHJL-20、¥4,500+税) *完全生産限定盤 9.27→11.1に発売延期
*SACD/CDハイブリッド盤:心が風邪をひいた日(SSMS-018)・12ページの詩集(SSMS-019)は2017.8.31発売、各¥3,500+税<ステレオサウンド独占販売>

アナログ盤とSACDで「名盤ドキュメント」を検証!

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 去る4月26日にNHK-BSプレミアム「 名盤ドキュメント」がオンエアされて以来、また急速に高まっている太田さんの再評価。
 番組で取り上げられた「心が風邪をひいた日」のCD( こちらでも紹介した名盤復刻シリーズ)は、終了直後からAmazonでバカ売れし、一時はランキング最高4位を記録。オリコンでもデイリーチャートでTOP50に入り、ウィークリーチャートでは最高127位をマーク(品切れさえなければ41年ぶりのTOP100入りを果たしていたはず)しました。※
 
 もちろん番組の作りがとても丁寧で、あのアルバムの魅力が増幅されて映ったような感じがあり、ぜひとも聴きたい、聴き直したいと思わせる内容になっていたからだと思いますが、いやはや反響のスゴさにBSとは言えどもNHKというマスメディアの底力を思い知らされた次第です。何せ、太田さんの他のアルバムやベスト盤も相乗効果で数字を上げたそうですからね。
 
 むろんパッケージだけではなく、オンエアと同日に始まったハイレゾを含む配信( こちらで紹介。 特設サイトでは特別寄稿を担当させていただいております)も絶好調。moraのハイレゾまとめ買いチャートでは「心が風邪をひいた日」よりも「70's~80's シングルA面コレクション」がダウンロードされ、なんと2位まで上昇したんだとか。
 
 IT黎明期からWEBを駆使したプロモーションに定評があり、ネットがあったおかげで復活に成功したといえる太田さんですから、パッケージ世代アーティストではダントツのダウンロード率というのもうなずけます。
 むろん新たなファンがどんどん増えているせいもありますけれど、日経トレンディの“ヒット商品”にも選ばれた実績もある太田さんならでは、ホント面目躍如という感じですよね。
 太田さんの場合、配信は今回が初めてではなく、これまでにも音楽配信草創期のbitmuiscからmora移行期までの間でも行われていますが、あれがふるわなかったのはソニーの戦略上の問題という感じでしたからね。
 
 そんな背景はさておき、太田さんの一ファンとしては、ランキングを見るのが楽しみだった77年頃までを彷彿とさせる現象で、とにかくウレシイのですけど、この追い風のタイミングにしっかり乗るように、なんと「 心が風邪をひいた日(完全生産限定盤) [Analog] 」として、LPレコードでの復刻が決定しました!
 
 名盤ドキュメントのオンエア後は、75年12月のLPオリジナル盤(SOLL)、78年3月の価格改定再発盤(25AH、キャンディーズの解散記念再発と同じタイミングでした)の中古盤も高騰しておりましたけれど、まさか太田さんのアナログ盤が再発されるなんて!とまたまた驚愕しております。
 しかも、一連のシリーズと同様、カッティング・エンジニアはバーニー・グランドマン御大、プレスはアメリカ・Quality Record Pressings社になるそうで、ファンとしては誇らしい限りですが、聞くところによるとパッケージも微に入り細に入りかなり凝った復刻になるようで期待は募るばかり。
 なんてったって、名盤ドキュメントで検証された魅力をたどるには、やっぱりLPレコードが一番でしょうからね。なお、完全生産限定盤ですから早めの予約をオススメしますぞ。
 
 一応、内容を簡単にご紹介しておきますと、「木綿のハンカチーフ」のオリジナルバージョンを収録したこのアルバムは、太田さんの人気を決定づけたサードアルバムです。
 デビュー当初のヨーロピアン乙女チック歌謡路線が残るものの、筒美京平先生は一歩退き、イニシアチブを取った松本隆さんが本領を発揮。
 聖子へと続く松本隆+ユーミンコンビのルーツナンバー「袋小路」&「ひぐらし」をはじめ、佐藤健さんとの「青春のしおり」や、名アレンジャー・萩田光雄さんとの「七つの願いごと」など、セカンドアルバムとは違った毛色の名曲が満載です。

 サウンド的にもシンセサイザーを多用した「銀河急行に乗って」と、この曲のフレーズをリミックスし曲間にインサートした「THE MILKY WAY EXPRESS」など、実験的要素も満載。ニューミュージックの流れに先鞭を付けた記念碑的な作品といえるのではないでしょうか。
 シングルのヒットと一緒にチャートを上昇。超ロングセラーを記録。オリコンのLPチャートこそ最高5位でしたが、カセットチャートではNo.1を獲得。中心の支持層が大学生や若い会社員で、ドライブミュージックとしてセレクトされていたアーティストだったことを象徴する出来事といえるでしょう。ちなみにカセットは天地真理やキャンディーズと同様、CBS・ソニーではなく、ナベプロのアポロン音工からのリリースのため、一部曲順が異なります。
 
 アナログ万歳とはいうものの、今やレコードを聴ける環境にないという人も少なくないでしょう。しかしですね、今回はそんな方にもウレシイニュースが用意されています。
 そう、ステレオサウンド発のSACDプロジェクトの第2弾も発表されたのです! ご存じ、かの高級オーディオ専門誌・ステレオサウンドと、ソニー・ミュージックダイレクトによる独自企画で、松田聖子に続くシリーズとして昨夏スタートしたSACDハイブリッド盤化プロジェクト。
 第1弾は「こけてぃっしゅ」「ELEGANCE」( こちらで紹介)の2タイトルでしたが、今回は「心が風邪をひいた日」と「12ページの詩集」の2タイトルがピックアップされております。
 いずれもハイレゾでも配信されておりますので、今回はパッケージが後を追いかける形になってしまいましたが、太田さんや松本さん、筒美先生を愛するファンとしてはやっぱりSACDも欲しいもの。あのデジパックジャケット仕様に、SACDの音についての解説もありますのでね(マスタリングエンジニアは鈴木浩二さんから内藤哲也さんに交代したそうです)。
 
 しかもですね、今回「心が風邪をひいた日」にはシングルバーションの「木綿のハンカチーフ」もボーナストラックで収録されるとか!
 シングルが売れすぎたせいで昔からアルバムバージョンのほうがオリジナルなのに違和感を持つ人が多かったのですし、名盤ドキュメントでも語られたような変化を検証するためにも、アルバムバージョンの後にシングルバージョンも聞きたくなるのが人情というもの。今回そういう意味では、初めての完全版といえそうな気がします。
 
 ボーナストラックが付くとはいえ、基本の内容は今回バカ売れしている名盤復刻シリーズと丸被りしていますので、太田さんのファンの中でもさらにコアなファン向けとはなりますが、完全限定生産につき完売して悔しがるより早めの入手がイチバン。
 なお、発売日はまだ確定しておりませんが*、これはステレオサウンド独占販売品。一部オーディオショップでも取り扱うようですが、予約して確実に入手されたい方は ステレオサウンドストアのオンライン通販をこまめにチェックしてください。
 
 念のため「12ページの詩集」も簡単に紹介しておきましょう。
 76年12月リリース、太田さんにとっては5枚目のアルバム。ジャケ写にフォーク系アーティスト御用達カメラマンのTAMJINこと田村仁さんを起用したことでも分かりますが、当時全盛期を迎えていたフォーク・ニューミュージックのカラーを全面的に打ち出した企画盤です。
 松本+筒美コンビによる楽曲はシングル曲の文芸フォーク「最後の一葉」だけで、あとはDTBBや百恵ちゃんで一躍ヒットメーカーとなった阿木+宇崎コンビや、ユーミン、正やん、チンペイ、イルカ、山田パンダ、田山雅充らシンガー・ソングライター勢が提供。アクの強い作家陣にひるむことなく、自分の歌として消化しきった点には脱帽。太田裕美が希有なボーカリストであることを証明した1枚となっています。
 当時としては画期的な夢のアルバムでしたが、当初は吉田拓郎、南こうせつ、さだまさしらの参加も予定されておりました。
 
 近年ユーミンのネットライブでセルフカバーされ再評価が高まった「青い傘」や、後年イルカの妹分であった沢田聖子もカバーした「ミモザの下で」、太田さんの舌足らずな歌声を強調させた阿木+宇崎作品「あさき夢みし」、後にデビューする筒美先生の秘蔵っ子・ケン田村の小品「カーテン」(ケンは こちらで紹介のデビューアルバムで自作詩による「思い出を春に」としてセルフカバー)、太田さん自身「こんなにいい曲が書けた」と大喜びしていた「恋の予感」などなど、聴きどころ満載。
 名曲、名唱ぞろいのアルバムですが、当時から人気ナンバー1だったのが、風のバージョンがリリースされる前にプレゼントしてくれたという「君と歩いた青春」。5年後の81年にはシングルカットされたこともありますし、近年はなごみーずとして正やんと活動を共にしているので今もよく歌われております。
 
 SACDに関しては、今回は漏れましたが、松本+筒美のオーラスを飾ったロサンジェルス録音盤のAOR「海が泣いている」や、太田さん唯一のマスターサウンドLPも発売されたクラシカルな「思い出を置く 君を置く」など、SACDで聴きたい太田さんのアルバムはたくさんありますのでこの企画が続いていくことを願っています。
 
 ちなみに、SACDではありませんが、パッケージとして太田さんのオリジナルアルバムをコレクションしたい人には、アルバム未収録曲やレア曲満載のボーナスディスクも付いた紙ジャケBOX「オール・ソングス・コレクション」( こちらで紹介)がオススメ。先ごろ達成したオーダーメイドファクトリーの再々々々アンコールプレス分が6月8日から出荷されております。こちらも限定で、今後の再プレスの可能性は限りなく低いと思いますので、迷っている方はどうぞご英断ください。
 
 なお、この4度目のアンコールプレスを記念して、かつて太田さんも登場した名作漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の作者・秋本治先生との スペシャル対談が実現しておりますので、併せてご一読ください。
 
 

(2017.6.25)
 
 
*SACD/CD ハイブリッド盤「心が風邪をひいた日」「12ページの詩集」のステレオサウンドストアでの予約受付は8月1日開始。発売日は8月31日に決定しました。(2017.6.27)
 
※2017年8月20日に再放送された「名盤ドキュメント」の効果により、名盤復刻シリーズの「心が風邪をひいた日」が9月4日付のオリコン週刊CDアルバムランキングで86位をマーク。41年ぶりにTOP100入りを果たしました!
 

※アメリカでのアナログ盤のプレス生産が大幅に遅れているとのことで、発売日が延期されました。新しい発売予定日は 11月1日となっていますのでご注意ください。(2017.9.8)

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