延期未定となっていたアナログ盤がやっと発売！

　唯一無二のアーティストといえば、やっぱりアッコちゃんこと矢野顕子さん。ピアノさえあればどんな音楽でも自分のものにしてしまう、まさに“ピアノが愛した女”です。
 
　であるからして、ピアノ弾き語りはアッコちゃんのお家芸というか真骨頂。代表作と言えば、92年にオリコン最高10位をマークした弾き語りカバー一発録りアルバム「SUPER FOLK SONG」が挙げられますが、デビュー40周年の流れもあり、2017年にはそのドキュメンタリー映像作品「SUPER FOLK SONG～ピアノが愛した女。～」がデジタルリマスターされて劇場公開。再復活上映を含め、話題を呼んだのは記憶に新しいところです。
　その際には、ビデオソフトも新たなパッケージ（Blu-ray「 SUPER FOLK SONG~ピアノが愛した女。~(2017デジタル・リマスター版) [Blu-ray] 」、DVD「 SUPER FOLK SONG~ピアノが愛した女。~(2017デジタル・リマスター版) [DVD] 」）としてリリースされましたが、同じタイミングでアルバムのアナログ盤も発売予定だったことを覚えておいでのファンも多いのではないでしょうか。
 
　製造上の都合があったらしく、長らく発売延期、発売未定という状態が続いておりましたが、立川シネマシティで再上映されたタイミングで、ようやくのリリースが発表されました。それが「 矢野顕子／SUPER FOLK SONG＜アナログ盤＞ 」です。
 
　盟友・糸井重里のタイトル作をはじめ、あがた森魚の「大寒町」、佐野元春の「SOMEDAY」、大貫妙子の「横顔」、山下達郎の「スプリンクラー」、THE BOOM「中央線」、イッセー尾形「おお、パリ」など、まさに交友録といえる選曲が秀逸。
　むろんジャズのスピリットをルーツとするアッコちゃんですから、即興的で原曲をとどめてないものもありますが、いずれも卓越したタッチと洗練された構築力による有無を言わせぬ仕上がり。映像にも残されているように、東京と長野のホールという場所にもこだわり、レコーディングはアッコちゃんの気の済むまで行われております。
 
　ホント、研ぎ澄まされた感性と、張り詰めた演奏空間の空気まで録音（エンジニアはもちろん吉野金次さん）されていますから、緊張と緩和のバランスといいますか、スリリングな味わいがクセになってしまう出来なのです。
 
　当初の発売予定時期に間に合わなかったのは、当時はまだソニーが国内での一貫生産に踏み切る前で、アメリカでのカッティング＆プレスの予定だったところ、ピアノ弾き語りのデリケートな音だけに、テストプレスを重ねてもアナログレコード特有の静電気起因によるノイズがどうしても解消できなかったそうなんですね。
　最終的には国内でのカッティング＆プレスに切り替えたものの、原料の開発に時間がかかったそうで、2年半の歳月を要することになったとのこと。そこまで手間暇かけて丁寧に作られたアナログ盤だけに、アッコちゃんのあのピアノの音がいったいどんな風に聴こえるのか。ここはやっぱり張りを落としてみたいものです。
 
　同日には、2017年発表の弾き語りシリーズ最新作「 Soft Landing 」と、2018年発表の最新アルバム「 ふたりぼっちで行こう 」もアナログ発売されるとのこと。
　さらにソニーでは、徳間ジャパン時代の「オーエスオーエス」とMIDI時代の「峠のわが家」のアナログ化も決定。この2作はおなじみのバーニー・グランドマン御大によるカッティング、ソニーミュージック静岡工場でのプレスになるそうで、2019年冬の発売を予定しているとか。
 
　なお、ソニーミュージック・ダイレクトの GREAT TRACKSでは、かのオーダーメイドファクトリーのアナログ版ともいえる「GREAT TRACKS Order Made Vinyl（グレイト・トラックス オーダーメイド・ヴァイナル）」企画をスタート。
　「 笠井　紀美子 バイブレイション (LOVE CELEBRATION） 」「 ソニア・ローザ 東京イン・ザ・ブルー 」「 小池　玉緒 鏡の中の十月 」など、既に数枚のタイトルが復刻されていますが、 商品化リクエストも受け付けているそうなので、アナログフリークの皆さん、ぜひチェックしてみてください！