89～91年在籍のHB音源によるベスト！

　明るくって楽しいのに、どこか切なくってほろ苦い。青春のきらめきにも似た須藤薫さんの歌声とポップンロールはいつまで経っても色あせることはありませんが、早いもので7年が経つのですね。
 
　亡くなった2013年に追悼盤としてリリースされた２枚組のオールタイム・アンソロジー「 GOLDEN☆BEST 須藤薫 シングル・コレクション 」（ こちらで紹介、解説を担当させていただいております）をはじめ、名盤復刻シリーズで再発されたCBS・ソニー時代のコンセプトベスト「 SUMMER HOLIDAY 」「 Tear-Drops Calendar 」はロングセラーを続けているようですし、追悼再プレスされたソニー時代のオリジナルアルバムの紙ジャケ復刻盤（音楽のベストパートナーであった杉真理さん30周年に連なる企画でした）も、大滝さん効果によるファースト（ こちらで紹介）や復帰後の２枚（ こちらで紹介）、須藤薫＆杉真理のベスト（ こちらで紹介）はまだ入手可能なようです。
 
　また、コアなファンに向けて資料用に録音されていたライブ音源などの蔵出しも行われ、2016年には「 「パラダイス・ツアー」ライヴ 1981 」（ こちらで紹介）、2017年には「 ライブ at 中野サンプラザ 1988 」、2019年には杉真理さんとの「 須藤 薫 ＆ 杉 真理 LIVE Pop'n' Roll TANABATA July,2000 」として相次いでリリースされるなど、音盤だけでいうと生前よりずっと耳に触れる機会は多くなっている印象もありますね。
 
　とはいえ、没後のリイシューはソニー時代ばかりで、89年から91年にかけて在籍したハミングバード時代は2008年の杉真理さん30周年に連なる紙ジャケ企画としてリリースされただけで、後はシングル曲がオールタイムベストのG☆Bで聴けるにとどまっていました。
　それがここに来て、ワーナーのCITY POP BEST SELECTIONシリーズにラインアップされる形で、ハミングバード時代の音源15曲を収録した新ベスト「 ハミングバード イヤーズ セレクション 」（Amazon.co.jpではメガジャケ特典付きの「 【Amazon.co.jp限定】ハミングバード　イヤーズ　セレクション (メガジャケ付) 」も！）のリリースが決定しました！
 
　須藤薫第３期というべきハミングバード時代には、89年から91年にかけて作品を発表。アルバムはピチカート・ファイヴの小西康陽さん、杉真理のバックバンド・The Dreamersの京田誠一さん、ブレッド＆バターの岩沢二弓さんをサウンドプロデューサーに迎え制作した「TENDER LOVE」「CONTINUE」「WINTER MOON」の３枚。シングルで言えば「つのる想い」「Continue」「南の島からメリークリスマス」で、今回はこの３つの世界観からそれぞれ5曲をチョイスした全15曲となっています。
 
　シティポップスという括られ方をされていますが、各アルバムの毛色は異なり、それぞれウォール・オブ・サウンドのオールデイズ、アーバンメロウ、そしてリゾートミュージックという趣。作家陣にはTHE BREAKERSの篠原太郎、新井正人、林哲司、小林明子、フィフス・アヴェニュー・バンドのマレイ・ウェインストックらの各氏が参加。薫ちゃんのボーカリストとしての力量がいかんなく発揮されております。
 
　個人的なオススメは、シングル「Continue」のカップリングでアルバムには未収録だった「ミッドナイトにベイブリッジ 」。秋元康＋林哲司コンビによる作品で、杏里の「悲しみがとまらない」のバリエーションという感じのアーバンポップスに仕上がっております。
　ソニー時代に比べ、なかなかスポットが当たってこなかっただけに、貴重なリイシューと言えそう。CITY POP BEST SELECTIONシリーズ様さまですね。
 
　なお、今回、同シリーズ第２弾として同時発売されるのは、カルロス・トシキ「 CITY POP BEST SELECTION」、早瀬優香子「 SINGLES 」、ペドロ＆カプリシャスの「 グレイテスト ヒッツ アンド モア」。
　ちなみにPOP BEST SELECTIONシリーズ第１弾は今月リリースで、村田和人「 一本の音楽 ～MOON YEARS～」、松下誠「 COLLECTION」、亜蘭知子「 WARNER YEARS '81～'87」、八神純子「 MOON YEARS」の４タイトルとなっています。ワーナーはシティポップスだけでなく、いろんな音源が眠っていますので、このシリーズに限らずいろんな企画が今後も続いていってほしいと思います。