80年代のアナログ盤2タイトルも復刻！

　今年も年末恒例のさとがえるコンサートが予定されているアッコちゃんこと矢野顕子さん。
　長らく発売延期になっていたアナログ盤「SUPER FOLK SONG」（こちらで紹介）のリリース決定のタイミングで、80年代のアルバム2枚「オーエスオーエス【完全生産限定盤】 」「峠のわが家【完全生産限定盤】 」のアナログ盤発売もアナウンスされていましたが、発売日が「SUPER FOLK SONG」の1週間後に決まったとのこと。
　個人的にもオリジナルリリース時からずっと愛聴しているタイトルですので、やっぱしプッシュさせていただきましょう。
 
　まずは84年6月リリース、徳間ジャパン時代のオーラスとなった「 オーエスオーエス【完全生産限定盤】 」。
　運動会的なタイトルから導き出された“アッコちゃん、ばんがってぇ。 うん、ばんがるからね。”という糸井重里作のキャッチコピーでもおなじみですが、キョージュはもちろんYMOのメンバーや山下達郎、大貫妙子といった旧知の仲間たちがバックアップ。東京とLAでレコーディング。
　お家芸でもある童謡の新解釈「おもちゃのチャチャチャ」、アッコちゃんがファンであるオフコースの「YES-YES-YES」に対抗して作ったという「HI,HI,HI」、リカットシングルであり今では代表作の一つとなった「ラーメンたべたい」など聴きどころは満載ですが、出色は達郎のコーラスとともに涙なしには聴けない「GREENFIELDS」でしょう。
　ジャパンレコード時代、すなわち「ごはんができたよ」以降のほんわかアッコちゃん路線はこれにてピリオド。そういう意味では、遺影用に篠山紀信さんに撮ってもらったというポートレートジャケットにも意味があったように思います。
　なお、オリジナルLP盤の本体ではなくボーナスシングルとして付いていた細野晴臣カバー「終りの季節」は未収録となっています。
 
　続く「 峠のわが家【完全生産限定盤】 」は、NY録音によるミディ移籍第1弾。
　大貫妙子の「海と少年」、オフコースの「夏の終わり」とポップチューンのカバーも入っていますが、コーラスに井上陽水をフィーチャーした「The Girl of Integrity」、アッコちゃん流ジャズの代表作「ちいさい秋みつけた」、詩人・藤富保男さんの詩に曲をつけた「一分間」などなど、本来の志向であったジャズへと移行するアッコちゃんの意思が前面に出ております。
　最も有名な曲といえば、後に「やっぱり猫が好き」のテーマ曲に起用され、シングルカットもされた「David」でしょう。ちなみにデイヴィッドとは、アッコちゃんと親交のあったJAPANのデイヴィッド・シルヴィアンのこと。
　当時、タイトルには、アメリカ民謡の幸せな峠のわが家のイメージと、幸せが峠を越えてしまったわが家というダブルミーニングがあると言っていましたが、そう思って聴くと「Home Sweet Home」も意味深です。
　ジャケット写真はグレース・ケリー（のニットアンサンブル）を意識したということですが、今見るとおっかさん風の太眉にオドロキ。お抱えデザイナーとなった立花ハジメデザインのアイコンというかピクトグラムというか、ミニマルなイラストが秀逸ですよね。
 
　なお、今回この2作はおなじみのバーニー・グランドマン御大によるカッティング、ソニーミュージック静岡工場でのプレスになるそうです。大貫妙子さんの項（ こちらで紹介）でも書きましたが、ますます目が離せないソニーミュージックのアナログレコード専門レーベル、GREAT TRACKS。 今後にも期待ですね。