ナツメロ喫茶店

 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#977
ビクターアイドル 男気レアトラックス
(2020.1.29発売、VICL-65316、¥2,800+税)

怒濤のマニアックコンピ、今度は男性編!

 名前すら聞いたこともないようなマニアック女性アイドルの激レア音源を発掘し、初CD化音源ぞろいで巷のコレクターを狂喜乱舞させているビクターアイドル・レアトラックスシリーズ。 
 
 70年代編の「ビクターアイドル超絶レアトラックス<1970年代編>」( こちらで紹介)から始まり、80年代編「 ビクターアイドル 激烈レアトラックス<1980年代編>」( こちらで紹介)、70年代メインの「ビクターアイドル必殺レアトラックス<1970年代+α> 」&60年代メインの「ビクターアイドル情熱レアトラックス<1960年代+α>」( こちらで紹介)と発売が続いてきましたが、今度の蔵出しはなんと男性アイドル!
 
 70年代から80年代頭にかけての男性アイドルのレアトラックを集めた第5弾「 ビクターアイドル男気レアトラックス 」ということですが、いくらジャニー喜多川氏の逝去で男性アイドルに注目が集まり、かのユリイカでも男性アイドル特集「 ユリイカ 2019年11月臨時増刊号 総特集◎日本の男性アイドル 」が組まれる時代といえど、今回の大蔵ざらえはビクターの大英断という感じですよね。
 
 と言いますのも、マイナーな男性アイドルは単品にしろコンピにしろ、数字的に厳しいのが定石。かつてアイドルミラクル・バイブルシリーズの続編という形で先行したソニーミュージックのオーダーメイドファクトリーでも、男性アイドル編の「 ボーイズ・ミラクルバイブル フラッシュ・未都 由・水谷大輔 icon」や男優編の「 アクター・ミラクルバイブルシリーズ 渡辺裕之・新藤栄作・四方堂亘・黒田アーサー・保阪尚輝 icon 」が商品化されていますが、数字的にはさほどだったようで、どこまでも掘削した女性アイドルのようにはいきませんでしたから。
 
 むろん男性アイドルの復刻が厳しいのは、メインターゲットが女性だったという要因もありますし、トップの移り変わりが激しく多様性のあった女性アイドルに比べ、男性は70年代は新御三家、80年代はたのきんというようにガッチリ固定化されていたことも大きいのではないかと思います。
 男性アイドル自体デビューの数自体が少なく、ある程度のファンがつくとなるともっと少ないワケですし、70年代半ばから顕著になったフォーク&ニューミュージックのシンガー・ソングライターがアイドルの代わりを果たすという現象も、男性アーティストの方が目立っていましたからね。
 
 ということで、今回はビクター初の男性アイドル特化コンピとなりますが、他社に比べビクターには正統派男性アイドルが少なかったせいもあるのでしょう。子役出身者やグループを中心に、比較的知名度の高いメンツがそろっているような気がします。
 
 収録内容を見て行きますと、まずは71年、子役出身でジャニーズ事務所所属だった内田喜郎「ミスター・ロビンソン」。荒木一郎作詞作曲の歌手デビュー曲だそうですが、サイモン&ガーファンクルの「ミセス・ロビンソン」からの連想でしょうか。人気ドラマによく出ていた印象がありますし、アン・ルイスのファーストアルバムではデュエットしているので、オープニングにふさわしい人選ですよね。
 
 続く青山一也といえば「流星人間ゾーン」や「ゴジラ対メカゴジラ」などの東宝の特撮もので知られていますが、歌手としては伊東ゆかりやシンシアもカバーした筒美京平作品「幸福ですか」が有名。
 ただし「幸福~」はCD化済みのため、今回は71年のデビュー曲「夜明けの恋人」と、阿久悠+都倉俊一コンビでイメチェンした第3弾「真夏は燃えている」という前後のシングルA面の2曲収録となっています。
 特撮アクターといえばもう1人、「突撃! ヒューマン!!」で夏夕介とタッグを組み、「ウルトラマンタロウ」にも隊員役で出ていた西島明彦。74年の歌手デビュー曲にして三木たかし作品の「愛の首飾り」、75年のあかのたちお作品「雨の日の青春」という2枚のシングルA面が初CD化となっています。
 
 さて、70年代の男性アイドルには、60年代からのGSの系譜と言いますか、フォーリーブスをトップに、ずうとるび、チャコとヘルス・エンジェル、JJS、レモンパイといったグループも台頭しておりましたが、ここではまず「ぎんざNOW!」にも出ていた4人組のフレンズ。73年に出た安井かずみ+葵まさひこコンビによる「真赤なスポーツ・カー」です。
 後にデビューして追い越されたレモンパイの兄貴分であり、アルルのお兄さんがいたグループという一面もありますが、カルト的人気もあるようでビクターからワーナーへ移籍した後のシングルはベストCD「 フレンズ~ベスト・シングル・コレクション~ 」としてまとめられています。
 
 クーフィーを前身とする75年デビューのレオナルドも4人組で、これまた「ぎんざNOW!」のレギュラー。とはいえコーラスグループという風情で、千家和也+森田公一コンビのポップなデビュー曲「渚のあしあと」と、橋本淳+穂口雄右コンビでスタイリスティックスばりのソウルフルなファルセットがイカす第2弾「木曜日の片想い」の2曲が収録されています。
 なお、グループとしてはもう一組、77年にデビューした5人組のエンタテインメント集団、ギャートルズも。橋本淳+小林亜星の「ロマンス・シート」はポップな名曲ですが、彼らはハンダースの向こうを張ったようなコミカルなイメージでした。
 
 また、70年代半ばはフォーク全盛期。75年には「ハレンチ学園」でおなじみの千葉裕が、フォーク歌手さながらに加藤和彦作品「西伊豆海岸」で歌手デビューを果たしていますが、今回はこちらも収録されております。
 
 ところで新御三家に続く正統派男性アイドルと言えば、74年組の新新御三家、75年組の新新新御三家がありましたが、その新新新御三家としてクローズアップされていたのが山本明。
 月刊平凡の「淳子ちゃんと一緒に歌う新人歌手大募集!」で優勝し、桜田淳子の弟分としてサンミュージック入りを果たした男の子ですが、今回選ばれたのは橋本淳+都倉俊一による75年のデビュー曲「君を奪いたい」。ちなみに淳子とのデュエット曲「春の恋人たち」はB面で、淳子BOXでCD化されています。森田健作の次は桜田淳子、桜田淳子の次は山本明という感じでサンミュージックのプッシュも強く、期待されていたのにすぐ引退してしまって残念でした。
 
 78年から79年にかけては、ロック御三家がアイドル的役割を果たした頃。あのチャーにしても自作自演ではないナンバーでブレイクしたワケですから、シンガー・ソングライター志望だったという田中正吾もその轍でしょうか。今回収録となる78年のデビュー曲「トラブル」は、青い三角定規の岩久茂作曲です。
 
 翌79年に、荒木とよひさ+佐藤準の「君よ走れ 光のしぶきけちらして」でデビューした乗附勝也もその路線でしょう。同期でホリプロ・タレントスカウトキャラバン出身の東寿明と同じく、ギターを抱えていたイメージがありますが、個人的にはドラマ「ちょっとマイウェイ」で研ナオコがバイトするレコード店でのサイン会シーンに登場したことが鮮烈でしたね。
 デビューのきっかけは「君こそスターだ!」だったそうですが、前年の集英社セブンティーンとCBS・ソニーによる合同オーディション「ラブ・アイドルアタック!」決戦大会にも出場。大滝裕子、久保田早紀とともに東京地区予選を勝ち抜いた人物でもあります。ちなみにこの大会はミスター&ミスセブンティーンコンテストを決めるもので、松田聖子が出場辞退したことで知られていますが、寺田新子や千葉まなみも出ていたようです。
 
 また、78年は空前のディスコブームに沸いた年でもありますが、それを背景にディスコ協会第一号タレント、和製トラボルタとして筒美作品「ムーチョ・マッチョ・マン」でデビューしたのが原たかし。知名度が高いのは第3弾「ジンギスカン」だと思いますが、ともにCD化済みのため、今回はデビューシングルのB面「ジブラルタル・ベイビー」が収録されています。
 
 そしていよいよ80年代。子役出身で「1年B組新八先生」で人気者になった斉藤康彦は、我々世代ですと学校で上映された教育映画「ガキ大将行進曲」で注目を集めた存在。81年のデビュー曲「もどかしさもSOMETIME」と第2弾「U」はCD化済みのため、馬飼野康二作曲の「イニシャルS」「かがやきハイ・ヌーン」というB面曲が収録されています。
 CMで話題が沸騰した宮田恭男も、81年のデビュー曲「ガール」と、第2弾「バースデイ事件」がCD化済みのため、財津和夫作曲の「眩しいSchool Days」と松井五郎作詞の「青春の一番熱い日 」というB面曲となっております。
 
 今回も選曲・監修は鈴木啓之さん、解説はチェリーさんだそうですが、駆け足で紹介しただけでもかなり幅広く濃ゆい内容。ゆえに好みが大きく分かれそうな気もしますが、どれもCD化されること自体が奇跡のようで、最初で最後のチャンスではないかと思いますので、やっぱり予約必至。すぐ入手困難になるかもしれませんから、お早めにご入手ください。
 
 
 
 

(2019.12.10)

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